Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    オルト

    どうしようもないものを投下

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 178

    オルト

    ☆quiet follow

    成人タイカケとオバレ

    ざわざわとざわつく店内。そこで俺は、素直すぎる恋人(少し酔っている)に困っていた。
    「カズオ、もっとこっち来いよ」
    「い、いやいや、そんなにくっついたら暑いでしょ?」
    「暑くねーよ、別に」
     額にじんわりと汗を掻いたタイガが、ムッとした顔で言った。それから俺の肩に腕を回すと、ぐいっとタイガの方に引き寄せた。ジョッキの中で溶け始めた氷が、音を立てずに動いた。
    「ほら、暑くねーだろ?」
    「う、うん……」
     いや、暑いけど? こんなに身体が密着して……まぁ、それはいつものことだからいいんだけど、問題は「今」それがされているという事。俺は、恥ずかしくてたまらない。
    「ねぇ、タイガ。恥ずかしいから、今はやめてよ……」
    「あ? 何が恥ずかしいんだよ?」
    「だって、ほら……その」
    「好きな奴とくっつくこと、別に恥ずかしいことじゃねーだろ?」
    「いや、その、そうだけど、そうじゃなくて……!」
     俺が恥ずかしいと感じているのは、好きな人とくっついているからじゃない。
    「そうだぞ、カケル。恥ずかしがることじゃないよ」
    「そうそう。僕たちのことは気にしないで」
    「そ、そうだぞ! いいじゃないか! こ、こここ恋人同士なんだから」
     俺の目の前に、ニコニコと爽やかな笑顔(一人真っ赤になっている)の先輩、オバレがいるからだ。偶然駅で会って、久しぶりに一緒に食事でも、ということで五人でこの居酒屋に来た。
    「うっす! やっぱカヅキさんもそう思うっすよね!」
     タイガはニコニコ笑顔で言った。ここ最近、タイガはカヅキさんの前でも恥ずかしがらないどころか、平気で俺にベタベタする。寮にいた頃のタイガからは想像もつかない。いつの頃からか、「カズオのことが好き」という事を隠さなくなった。それは俺にとっては嬉しいことであると同時に、少しだけ困ってしまう事でもあった。俺たちの関係は、公表はしていない。勿論、今目の前にいるオバレやセプテントリオンなどなど親しい仲間には(あとなぜかアレクサンダーにも)知らせている。が、いくら知っている人の前でも、周りで誰が見ているかわからないし、ていうかそもそも先輩達の前でいちゃいちゃするなんて恥ずかしい!
    「昔はカケルの方からシンやタイガにくっついて行ってたじゃないか。どうして今頃になって恥ずかしがってるんだ?」
     ヒロさんは、心底不思議そうな顔をして俺を見る。あぁ、見ないでください! 恥ずかしいから!
    「あの頃とは事情が違うっすよ~」
    「まぁ、カケルは真面目だし結構純情だもんね。見てればわかるよ」
     にっこりと笑うコウジさんの笑顔が、なんだか怖い。見ていれば、か。コウジさんって、なんだかすべてを見抜いていそうだよね。
    「そうだね。カケルって、結構可愛い所あるし」
     ヒロさんがそう言うと、タイガは俺のことをぎゅうと抱きしめた。
    「わ」
    「ヒロさん、あの、コイツ俺のなんで……」
    「わかってるって!」
    「まぁ、コイツがめんこいのは俺が一番知ってるし、俺にしか見せないとこのがもっとめんこいんで」
     何を言っているんだタイガは! ぶすっとして「警戒」の体勢を取るタイガ。それを見て笑うヒロさん。真っ赤なカヅキさん。相変わらずすべてを見抜いていそうな笑顔をしている。
     もう、なにもかもが俺を恥ずかしくさせる。タイガが素直になるのは嬉しいけど、この先ずっとこの調子だと、俺はそのうち恥ずかしさでどうにかなってしまうかもしれない。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖☺☺☺💖❤☺👏☺☺☺💞💞💞🙏👏🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works