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    オルト

    どうしようもないものを投下

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    オルト

    TRAINING987文字
    盗賊商人のタイカケ
    「カケル、これ……」
     気配なく突然現れたタイガに驚いて、俺は一瞬息を止めた。声のした方を向いてタイガの姿を確認してから、ふぅと息を吐いて呼吸を元に戻す。盗賊として生きてきた彼は、どうにも気配を消す癖がついているらしい。
    「どうしたの、タイガくん」
    「これ、字……読めるか?」
     そう言ってタイガは一冊の本を俺の方に差し出した。分厚い本だ。手に取って開いてみると、可愛らしい挿絵が目に飛び込んできた。本の厚さから学術書の類かと思ったが、表紙や本文の紙が厚いだけで、ページ数はさほどなかった。
    「読めるけど……」
    「内容、難しい?」
    「ううん。簡単だよ」
    「じゃあ、それ使って俺に、文字教えて欲しい」
    「え!」
     真剣な表情だ。物心ついたころから盗賊をしているタイガは、字の読み書きが満足に出来ない。換金表とか、お金の単位とか、盗賊として必要な文字だけは理解しているようだけど、他の文字は全然ダメらしい。以前から俺は盗賊から足を洗おうとしているタイガに、生きていく為に必要だからと文字を教えようとしてきたけど、全然興味を示さなかったタイガが自分から……! なんだか感動して本を手にしたまま思わずタイガを抱きしめた。
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