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    ガリカジのタイカケ

    「タイガ~。どこ行っちゃったの~?」
     ざっ、ざっ、と茂みをかきわけて、カケルは森の中を進む。
    「はぁ……。やっぱり箒を取りに戻って空から探したほうが早いかな?」
     後ろを振り返り、自分の進んできた道を振り返ったカケルは大きく溜息を吐いた。タイガを探してもう三十分は歩いている。最初の段階で引き返すべきだったと後悔した。
    「それにしても、ホント、タイガきゅんてば野生児なんだなぁ」
     軽い散歩のつもりで、タイガと森に入った。が、森に入って早々、タイガは目に留まった魔獣を追いかけて森の中へと駆け出してしまった。木の影で魔法の煌めきが見えたと思ったら、ちらりと尻尾だけを覗かせて、タイガは森の奥へと消えてしまった。
     どうもここ最近、タイガの野生化が気になって、カケルはタイガの状態を確認するために森に連れ出したのだが、想像以上だった。まさか、様子を観察する間もなく森の中に消えてしまうとは思っていなかった。
    「も~。どうしよう」
     寮長として、寮生の監督は必須。こんな森の中にタイガを一人残しておくわけにはいかない。虎に化けたタイガは生身の人間の状態より幾分丈夫だが、この森には危険な魔獣もいる。
    「おれっちが、ちゃんとタイガきゅんを守らなきゃ……ってうわぁ!」
     カケルは思いきり前方に倒れ込んだ。
    「いったぁ~」
     身体を起こして足元を確認すると、蔦に靴が引っかかっていた。
    「あーあ」
     手をついた拍子に軽く擦りむいたらしく、掌にはうっすり血が滲んでいた。カケルは水魔法で傷口を洗った。タイガを守らなきゃと意気込んだとたん、自分が転ぶとは情けない。カケルは自嘲的な笑いを浮かべ、また溜息を吐いた。と、その時。
    「がぅ……!」
     がさ、と音を立てて虎の姿のタイガが現れた。口には魔獣を咥えている。
    「あ! タイガきゅん! やっと見つけた!」
    「……あ」
     タイガは咥えていた魔獣をぼとりと落として、カケルにすり寄った。
    「も~、どこ行ってたの?」
     そう尋ねるカケルを無視して、タイガはカケルの掌を舐めた。
    「わ」
     二、三度舐めてから、タイガは変身魔法を解除して人間の姿に戻った。
    「カケル、怪我している……」
     今にも泣き出しそうな様子で、タイガはカケルの手を取った。
    「ちょっと転んで軽く擦りむいただけだから大丈夫よん」
    「でも……」
     タイガは今度は人間の舌で、べろりとカケルの掌を舐めた。
    「んっ」
    「カケル、帰りは俺が守ってやるからな!」
     キリッと眉を上げて言うタイガは格好つけているつもりのようだが、鼻の頭に泥をつけて、頭にははっぱやクモの巣をつけているタイガはまるでわんぱく小僧で、カケルは思わず笑ってしまった。
     そんなカケルの反応に臍を曲げてしまったタイガをなだめるのに、カケルは一晩中タイガにかまってやったのだとか。
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    TRAINING成人タイカケ。
    おじさん組と無自覚両片想い。
    「それでさぁ~、タイガきゅんがさぁ」
     顔を真っ赤にしたカケルが、日本酒をちびちび飲みながら声を上げる。
    「うんうん、それで?」
    「こんどね、おれっちの出張の前に、どこか遊びに行こ~って、いってくれたのぉ!」
     締まりのない顔で言うカケルに、ミナトが「良かったなぁ」と声を掛けると、カケルは「いいでしょ~」と言って笑った。その隙に、ユキノジョウはカケルの手元から徳利を遠ざけ、自分の手元のものと入れ替えた。
    「だからねぇ、おれっちもう楽しみで楽しみで……」
     カケルはそのまま徳利からおちょこに中身を注ぎ、またちびちび飲み始めた。カケルは気付いていない。徳利が入れ替わったことも、その中身が水であることも。今日はいつもに比べて格段に飲むペースが速く、先程からユキノジョウもミナトもカケルの様子に気を配っている。だいぶ酔っているようで、タイガに遊びに行こうと誘われた話を何度もしている。話を聞かされている二人は、その度に初めて聞いたように反応していた。
    「これ、デートって思ってももいいのかにゃぁ?」
    「あぁ、デートだろう」
    「そうそう、香賀美は照れ屋だから、そう言わないだろうけどね」
    「えへへえぇ。 1563