Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    オルト

    どうしようもないものを投下

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 178

    オルト

    ☆quiet follow

    1288文字
    ちゃいなのタイカケ
    恒例のガチキョンシー。ヒロ様視点の話です。

    「うー……」
    「ご、ゴメンナサイ……」
     唸るカケルを前に、タイガは深々と頭を下げた。ギリギリと歯ぎしりをして、生気のない目でタイガを見つめるカケルは、普段の愛らしい姿とは異なり「キョンシー本来の姿をしているな」と他人事のように思った。自分が一声かければ大人しくなるのをわかって入るけど、ここはカケルの気持ちを尊重して俺は黙って見ていることにする。
    「あぅ! た! やっ!」
     カケルは吠えるように大きな声を出し、一生懸命に言葉を紡ごうとする姿は可愛らしく見えるけど、タイガは顔を青くしている。
     カケルが怒ったのは、ほんの些細な出来事が発端だった。俺とカヅキがゲームをしていて、それをタイガとカケルが見ていた。珍しくカヅキが勝ったところで、タイガがカヅキをべた褒めした。所までは良かった。それでタイガがカヅキにゲームを一緒にやりたいと言い暫くプレイし、それに飽きると今度は特訓して欲しいとせがんで庭で特訓に励んだ。その間、カケルはタイガに構って欲しくて何度も声を掛けたし、タイガの服の裾を引いてアピールしていたのに、カヅキに夢中だったタイガは少しばかりカケルを邪険に扱ってしまった。普段はそんなことは絶対にないのに、だ。それでショックを受けたカケルが駄々を捏ねていたら、タイガが「静かにしてろ」と怒って……。
     そこからはもう大変だった。いつも我慢をしているカケルが、爆発してしまった。感情のコントロールができなくなって、それをみんなで止めようとして、そうしたらタイガが滑って転んでカケルの大事にしていた本にお茶をひっかけてしまったのだ。
     どっちもどっちな状況だけど、そもそも少しでもタイガがカケルに構ってやっていたら、とカケルの主人である俺は思ってしまう。だから、黙って様子を見ているんだけど……。
    「カケル、マジで、ごめん。カケル、何度も俺に声掛けてくれてたのに……無視するみたいになっちまって」
    「う、うぅ……」
     ポロポロと涙を流し始めたカケルを見て、タイガはぎょっとした表情を見せる。流石に可哀そうになってきたから、俺がカケルの頭を撫でてやるとカケルは俺にしがみついてわんわん泣き出した。
     あちゃー、余計泣かせちゃった。さて、どうやって慰めよう? と思ったその時、タイガがカケルの腕を掴んで引っ張り、俺から引きはがした。おっ? これは……。
    「ごめん、カケル。だから、なくんなら俺にくっついて泣けよ」
     そう言ってタイガはカケルを力強く抱きしめた。カケルは暫くタイガの腕の中でじたばたしていたけれど、次第に大人しくなった。感情が高ぶって暴れているカケルを抑えるのはかなり大変な筈なのに、タイガは優しい顔をしてカケルを抱いている。
     これは、愛の力かな?
    「たぁ、たぁ……」
    「うん、ごめん。今日はここに泊まるから、出来るだけ寝ないようにするから、いっぱい一緒にいような」
     夜行性であるキョンシーのカケルの為に、タイガはそう約束した。
    「あぅ!」
     カケルはパッと笑顔になって、タイガに抱き着く。凄く幸せそうな顔だ。
     まだまだうまくいかないことやすれ違いもあるだろうけど、俺はこれからもこの二人の不器用な恋を見守っていこうと思う。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🙏🙏👏👏👏👍👍👍☺🍼☺👏👏👏👏☺❤❤❤😍😍😍☺☺☺☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    オルト

    TRAINING成人タイカケ。
    おじさん組と無自覚両片想い。
    「それでさぁ~、タイガきゅんがさぁ」
     顔を真っ赤にしたカケルが、日本酒をちびちび飲みながら声を上げる。
    「うんうん、それで?」
    「こんどね、おれっちの出張の前に、どこか遊びに行こ~って、いってくれたのぉ!」
     締まりのない顔で言うカケルに、ミナトが「良かったなぁ」と声を掛けると、カケルは「いいでしょ~」と言って笑った。その隙に、ユキノジョウはカケルの手元から徳利を遠ざけ、自分の手元のものと入れ替えた。
    「だからねぇ、おれっちもう楽しみで楽しみで……」
     カケルはそのまま徳利からおちょこに中身を注ぎ、またちびちび飲み始めた。カケルは気付いていない。徳利が入れ替わったことも、その中身が水であることも。今日はいつもに比べて格段に飲むペースが速く、先程からユキノジョウもミナトもカケルの様子に気を配っている。だいぶ酔っているようで、タイガに遊びに行こうと誘われた話を何度もしている。話を聞かされている二人は、その度に初めて聞いたように反応していた。
    「これ、デートって思ってももいいのかにゃぁ?」
    「あぁ、デートだろう」
    「そうそう、香賀美は照れ屋だから、そう言わないだろうけどね」
    「えへへえぇ。 1563