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    オルト

    どうしようもないものを投下

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    オルト

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    902文字
    タが嫉妬してるだけのタイカケ

    たった今まで俺の隣にいたのは「カケル」だったのに、今、俺の隣にいるのは「一男」だ。
    「はい、……はい、勿論です。えぇ…………、はい、はい」
     俺のわからないことを話して、俺の知らないオッサンと笑顔で話している。俺たちといるときに見せる笑顔とは何か違う。俺の知らない顔を、知らないオッサンに向けている。面白くない。でも、だからと言って俺も話に加われるかと言ったらそうでもないから、俺は「一男」の影に隠れていることしかできない。
    「それではまた!」
     どうやら話は終わったようで、オッサンは去っていった。
    「ごめんタイガきゅん、お待たせ……って、どうしたにょ~?」
     振り返って俺を見た「カケル」は、眉を下げて俺の頭を撫でた。いつものコイツだ。
    「別に。なんでもねぇし」
    「なんでもあるって顔してる」
    「……行こうぜ」
     さっきのオッサンの姿が見えなくなったのを確認して、俺はカズオの手を引いて路地裏へと入った。カズオは大人しく俺に着いてくる。
    「……さっきの、取引先の人だよ。お仕事の関係者」
    「別になんも聞いてねーし」
    「うん、そうだね」
    「…………」
    「少しお仕事のお話ししただけだよ。プリズムシステムのプロジェクトに関わっていて、今度俺たちのショー見に来てくれるって」
    「うん」
     カズオは聞いてもいない、でも、俺が気になったことを全部話してくれた。わかってる、あんなオッサンが「カケル」にとっては「一男の知り合い」でしかないという事を。でも、それでも、「一男」が目の前で他の男と楽しそうに話してたら嫉妬位する。
    「ね、タイガきゅんっ」
     カズオが俺の腕に絡みつく。あったかい。気分がいい。
    「今度のショーでさ、おれっちたちのラブラブっぷり見せちゃお?」
    「……おう」
     俺の機嫌を直そうとしてくれている。でもきっと、それだけじゃない。本心だ。そういう顔してる。「カケル」であり、俺の一番知ってる「カズオ」の顔だ。大好きな顔だ。
    「その顔、見せるの俺にだけにしとけよ」
     俺がそう言うと、カズオは少し不思議そうな顔していたけど、機嫌よさそうに頷いた。
     うん、これでいい。俺の知らない「一男」がいても、俺の知ってる「カズオ」がここに居れば、なんでも許してしまいそうだ。
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