「げ! おめぇ何喰ってんだ!」
「んぐぅ、ま、ま」
口の周りを袖をドロドロにしたカズオが、キョトンとした顔で俺を見る。
今日は俺が、ミナトさんに教えてもらった料理をカヅキさんたちに振舞おうと材料を沢山抱えてここに来た。調理器具を出して野菜を洗っていたら、変な音がして振り返った。そしたら、カズオが材料や調味料をそのまま口に入れていた。豆板醤の瓶は空になり、甜麺醤も半分減っている。野菜もところどころ齧られているが、見事に鶏肉だけは手を付けられていない。やっぱキョンシーなんだな。って、そうじゃねぇ!
「口、開けろ!」
「あー……」
カケルの口の中を覗くと、真っ赤になっていた。腫れているようにも見える。自我が戻り切っていないカケルは、時々こうして赤ん坊のように何でも口に入れてしまう。今日は一応食べ物だったから良いが、この間は雑草をくわえていたし、その前は泥を食ってた。
「あー、カケル、おめぇ水飲め……! 口の中とか腹、痛くないか?!」
「おー?」
なんでもなさそうだ。俺が焦っているのを不思議そうに見ている。やっぱり、肉体的には何ともないんだろうか? キョンシーって。
カケルの口元を拭いながら、なんだか俺とは全然違う生き物(死んでるが)だと思い知らされる。でも、今のうちから対処に慣れておかねぇと。いつか俺がコイビトになって、コイツの面倒見詰んだからな。