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    987文字
    盗賊商人のタイカケ

    「カケル、これ……」
     気配なく突然現れたタイガに驚いて、俺は一瞬息を止めた。声のした方を向いてタイガの姿を確認してから、ふぅと息を吐いて呼吸を元に戻す。盗賊として生きてきた彼は、どうにも気配を消す癖がついているらしい。
    「どうしたの、タイガくん」
    「これ、字……読めるか?」
     そう言ってタイガは一冊の本を俺の方に差し出した。分厚い本だ。手に取って開いてみると、可愛らしい挿絵が目に飛び込んできた。本の厚さから学術書の類かと思ったが、表紙や本文の紙が厚いだけで、ページ数はさほどなかった。
    「読めるけど……」
    「内容、難しい?」
    「ううん。簡単だよ」
    「じゃあ、それ使って俺に、文字教えて欲しい」
    「え!」
     真剣な表情だ。物心ついたころから盗賊をしているタイガは、字の読み書きが満足に出来ない。換金表とか、お金の単位とか、盗賊として必要な文字だけは理解しているようだけど、他の文字は全然ダメらしい。以前から俺は盗賊から足を洗おうとしているタイガに、生きていく為に必要だからと文字を教えようとしてきたけど、全然興味を示さなかったタイガが自分から……! なんだか感動して本を手にしたまま思わずタイガを抱きしめた。
    「うわぁ! な、なんだよ!」
    「いやぁ~、急にタイガくんがやる気出してくれたから嬉しくって! ペンと書くものも上げるからね」
    「う、うん」
     頭を撫でてみると、いつもは俺の手を祓うタイガは大人しく撫でられる。ホント、どうしちゃったの?
    「目標出来たから、頑張る」
    「おぉ、さてはカヅキさん関係?」
    「……ちげーよ。けど、本気だから、頼む」
     俺の茶化しも受け流し、タイガは真剣な表情で俺を見る。これは、本当に本気だ。何がタイガを本気にさせたのかわからないし、気になるけど、あまりつっこんで聞いてやる気をなくされては大変だ。何も聞かずに、教えてあげよう。
    「ところでこの本、どうしたの?」
    「魔法使い……ユウにもらった。なんか、文字を描けるようになりたい話をしたら、これを教材にしろって」
    「ふぅん」
     いったいどんなお話しだろう?
     ペラペラ本を捲り確認してみる。動物が沢山出てくるとっても可愛らしい話だ。虎の子が狐の子と仲良くなりたくてお手紙を書いたり、喧嘩し仲直りのお手紙を書く話。虎の子は、どこかタイガに似ていて可愛らしい。最後まで内容を確認しようかと思ったけど、タイガと一緒に読みながら楽しむことにして俺は本を閉じた。
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    TRAINING成人タイカケ。
    おじさん組と無自覚両片想い。
    「それでさぁ~、タイガきゅんがさぁ」
     顔を真っ赤にしたカケルが、日本酒をちびちび飲みながら声を上げる。
    「うんうん、それで?」
    「こんどね、おれっちの出張の前に、どこか遊びに行こ~って、いってくれたのぉ!」
     締まりのない顔で言うカケルに、ミナトが「良かったなぁ」と声を掛けると、カケルは「いいでしょ~」と言って笑った。その隙に、ユキノジョウはカケルの手元から徳利を遠ざけ、自分の手元のものと入れ替えた。
    「だからねぇ、おれっちもう楽しみで楽しみで……」
     カケルはそのまま徳利からおちょこに中身を注ぎ、またちびちび飲み始めた。カケルは気付いていない。徳利が入れ替わったことも、その中身が水であることも。今日はいつもに比べて格段に飲むペースが速く、先程からユキノジョウもミナトもカケルの様子に気を配っている。だいぶ酔っているようで、タイガに遊びに行こうと誘われた話を何度もしている。話を聞かされている二人は、その度に初めて聞いたように反応していた。
    「これ、デートって思ってももいいのかにゃぁ?」
    「あぁ、デートだろう」
    「そうそう、香賀美は照れ屋だから、そう言わないだろうけどね」
    「えへへえぇ。 1563

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    TRAININGタとシンちゅわとモブしか出てこないけど、タイカケです。華京祭が終わってすぐのこと。クラスはミス華京院の話題で持ち切りだった。みんな誰が可愛かったとか、来年は自分も出てみようか、なんて話している。
    「なぁ、お前も意外と可愛かったぞ!」
    「…………」
     クラスメイトに声を掛けられたタイガくんは、両耳を塞いで机に突っ伏している。僕もクラスメイトに褒めてもらえたり色々聞かれてちょっと照れ臭かったけど……。
    「いや~優勝した西園寺、可愛かったな。俺、ファンクラブはいろうかなぁ?」
    「俺は太刀花先輩だなぁ~。美人のお姉さま、って感じですげぇイイ」
     みんなそれぞれに感想を述べている。みんなで頑張ったから、こうして褒めてもらえるのは嬉しいな……。
    「俺はやっぱり十王院先輩だなぁ~。あの衣装も髪形もクオリティ高かったし!」
     カケルさんの名前が出たその時、タイガくんの肩が揺れた。タイガくんはゆっくり身体を起こしてカケルさんを褒めたクラスメイトを睨んだ。睨まれた本人はそのことに気付いていないみたいだけど。
    「あれってアニメかなんかのコスプレだろ? おめぇそういう趣味なの?」
    「いいだろ、別に。ていうかソレ関係なくイイと思ったんだよ。校内でたまに見るけど、め 1002