「うわぁ、どうしよぉ……」
「び、ビビんなよ!」
僕にそう言うタイガくんの声は、僅かに震えている。緞帳の隙間から客席を見ている僕らの緊張は、それはもう凄くって、本当に口から心臓が飛び出してしまうのではないかと思う程だった。
高校の文化祭。講堂で開催される催し物の司会進行を任命されてしまったのは、ちょうど一か月前の事。文化祭実行委員が僕らのところにやって来て、芸人みたいな感じでよろしく! とすべてを丸投げしていった。講堂では朝から夕方まで、文化祭をしている間は、途中少しの休憩を挟んでずっと何か催しをすることになっている。吹奏楽部の演奏に始まり、演劇部の舞台、コーラス部の合唱、軽音部のライブ、ダンス部のダンス、そして有志の出し物。それらを盛り上げる為に、僕らは招集された。
「ねぇ、僕たち上手くやれるかな……?」
「いけるって。別にネタを披露するワケじゃねぇんだ。時々おめぇがボケてくれれば、俺が突っ込む」
「えぇぇ?! 無理だよそんな……」
そんな無茶な。ネタ合わせもしていないし、お客さんにサクラもいないのに、一体どうボケろって言うんだよ……。
じとりとタイガくんを見ると、タイガくんは不思議そうに首を傾げた。
「大丈夫だろ。おめぇ割と普段からぬけてるところあるし」
「は、はぁっ?!」
失礼な! 僕は素でボケてたりしないもん。
「頬膨らませんなって。ほら、このアフロもあるし大丈夫だろ」
タイガくんがニカッと笑う。この笑顔を見ると、なんだか大丈夫なような気がしてくる。
そうだ。タイガくんと一緒に買いに行った、この衣装とアフロがあるじゃないか。
「そうだね、頑張ろ!」
そう言って拳を合わせたその時、ちょうどブザーが鳴った。