「カズオ、おめぇ少し太ったか?」
「それ今言う?」
ベッドで言う言葉じゃないでしょ、絶対。しかもこのタイミングで。まだ呼吸も整っていないっていうのにっていうのに。
「いや、なんか、ケツの感触とか、胸とか」
「……」
そりゃあ確かに、少し体重は増えた。でも、ほんの少しだよ? 気付く?
「ほら」
「ひゃ!」
まだ敏感になっている胸を揉まれて、俺は声を上げた。
「あのさぁ、こういう時って、好きだよとか愛してるとか甘い言葉をくれるものでしょ?」
「あー?」
「まったく、ピロートークも出来ないなんて、おこちゃまなんだから!」
タイガが食いつきそうな言葉を選んで、挑発して体重増加から話を反らそうとするも、タイガは俺の身体を揉むのを辞めない。お腹まで揉みだした。
「もぉ、ちょっと! そんなに揉む程太ってないんだけど!」
「んー? じゃあ筋肉落ちたんだよ。ほら、筋トレしろ。俺もする」
タイガは身体を起こすとそのままベッドから降りて、脱ぎ捨ててあった洋服をさっさと着た。
「え、まさか今からやろうって言うの?」
「おう、ほら、起きろ!」
「いやいや、無理だって!」
「あ? なんで?」
「なんでって……ついさっきまで……してたんだよ? 身体、少し休ませて。タイガ、激しいんだもん」
「……っ、そう、か」
タイガはポッと顔を赤くして、ベッドの端に腰かけた。
「悪ぃ」
「ううん。もう少し休んだら、一緒にトレーニングしようね」
「おう」
タイガは頷いて、いたわるように俺を撫でてくれた。
「……やっぱ」
「ん?」
「やっば、おめぇ太ったよ」
「蒸し返す?! ほんっとデリカシー無いんだっから! タイガきゅんのおばか!」
俺は頭から布団を被って、ダイエットとトレーニングを誓うのだった。