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    オルト

    どうしようもないものを投下

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    オルト

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    1055文字
    もしもタイカケが小学生の時に出会っていたら(3話時間軸)

     僕はいつも、車で送り迎えしてもらっている。だから、こうして街中を一人で歩くことはめったにない。でも、今日は一人で街中を歩いている。時々、社会勉強としてこうして自分で移動をする。学校から家まで、家から会社まで、会社から学校まで。いろんなパターンがある中でも今日は特別。そのどこからも離れて電車に乗って、着いた先の町を歩いて家に戻る。夏休みの、ちょっとした冒険みたい。
     でも、ただ無意味に歩くわけじゃない。町の風景を観察して、住民がどんな人が多いか観察して、ここで何か商売を展開するとしたら何をどうしたらいいのか考えるのが、今日のお勉強。
    「それにしても、あっついなぁ……」
     ハンカチで汗を拭いながら歩く。電車が上の方を通っていく。このまま線路沿いを歩いていても仕方ないか。そう思ったとき、ふと、僕と同い年くらいの子が目に入った。
    「……」
     高架下の広くなっているところで、一生懸命に踊っている。日差しの加減なのか何なのか、彼がキラキラして見えた。
     どうしても気になって、僕は近寄って物陰から彼をじっと見る。
     すごい。
     彼は身軽なのか、高くジャンプしたり回ったりしている。なんだか凄く、楽しそうだ。そう思って見ていたその時。
     彼はピタリと止まってこっちを見た。あ、バレた。
     僕は慌ててその場を離れようとしたが、彼はすーっと滑ってこっちにやって来た。
    「なぁ、おめぇも踊りに来たの?」
    「え、いや……僕は通りがかっただけで……」
    「なんだ。でも、暇なら踊ってけよ。もうすぐカヅキさんも来るし」
    「え、カヅキ、さん?」
    「おう! 俺よりちょっと年上なんだけど、すっげープリズムショーするんだ!」
    「へぇ……」
     プリズムショー? 聞いたことがあるけど、あまりよく知らないんだよなぁ。
     彼は聞いてもいないのに、そのカヅキさんという人のことや、プリズムショーの事を一生懸命話してくれた。でも、そろそろ行かなきゃいけない。
    「ごめんね、せっかくだけど僕、行かなきゃ……」
    「そっか……」
     彼はしゅんと眉を下げた。一人で踊っていて寂しかったんだろうけど、きっともうすぐそのカヅキさんも来るだろう。
    「もしさ、プリズムショーに興味湧いたら、またここに来いよ! 俺、夏休みの間はここに居るから!」
    「……うん」
     僕は彼に別れを告げて、駅に向かう。
     凄く、楽しそうでキラキラしていた。とってもいい笑顔だった。きっと、本当にプリズムショーが大好きなんだろう。
    「僕も、いつかあんなに夢中になれるもの、見つけられるかな……」

     結局、夏休み中にそこに行けなかったけれど、またいつか会えそうな気がした。
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