「なぁカケル、ここ、ピアス開けね?」
「えぇ、やだよ」
俺がカケルの臍を撫でながら言うと、身を攀じて俺に背を向けた。
「なんで?」
「なんでじゃないよ。嫌なものは嫌なの。痛いし」
「優しくやるから」
「穴開けるのに優しくやるってなに?!」
カケルは少し噴き出しながら言った。
カケルのピアスは、全部俺が開けた。最初、何もなかったカケルの耳にピアスを通したとき、「これでカケルは俺のものだ」と直感的に思った。そん時はまだ付き合ってなかったけど、とにかくそう思った。それ以来、俺はカケルにピアスを開けたくて仕方なくなった。付き合いはじめてからも、その気持ちは変わっていない。
二個目、三個目はカケルも喜んでいたけど、五個目くらいから少し抗議するようになった。まぁ、結局開けさせてくれるんだけど。
「また、俺の色のピアスやるから、それして」
「でも、おへそじゃ人に見えないし、開ける意味なくない? 『俺のものだ』って印につけたいんでしょ?」
そう。カケルの言う通りだ。だからこそ、こういうところに開けたい。
「いいじゃん。俺が、俺のカケルだって実感してぇし」
「うわ、自分の為かよ」
「おめぇも嬉しいだろ?」
「えー、何それ。えぇ……」
口ではそう言いつつも、カケルの顔はどこか嬉しそうだ。
「それに、夏だし海とかプール行ったら腹出すじゃん」
「そりゃそうだけど、おへそ開けたら暫くプールはダメでしょ」
「まじかよ」
「まじまじ」
「……まぁいいや。入れるようになったら行こうぜ」
俺は言いながらカケルを抱きしめて臍を撫でる。今度は抵抗されなかった。
「そのころには冬だよ」
「じゃあ温泉。バイト代溜めるから、旅行行こう」
「二人で?」
「うん」
「……ふふっ、いいよ。行こうか」
「ん」
ちゅ、と音を立てて軽いキスをする。
ピアスは鞄の中に既に準備してある。シャワーを浴びて、この汗とか諸々でベタベタの身体を綺麗にしてから、また、俺の印をつけよう。