転売ヤーにご用心「なんで…私まで、やることになってるんですか、ミスキス関係ないですよね?」
山本冬樹はすっかり馴染みになってしまったヤクザの青年……関口東吾に一応問うた。拒否権がないのはわかってはいたが。
「ごちゃごちゃうるせえよ、こういうのは人手が多い方がいいんだよ。こんなちゃっちいシノギなんかヤノさんにさせたくねえけど、今は仕方ねえんだ。ヤノさん、操作は大丈夫っスか」
何かしらのリズムをいつものようにとっているヤノに関口は声をかける。
「♪オーケーオーケー アクセスはbot 仕組みはドント touchなのヤノ 数うちゃ買える戦法 Amazonで偽る店舗 バレる前に逃げりゃノーカンよ♪」
いつも思うんだが、このヤノという男は韻を踏まないと話ができないのか。わかりづらくて仕方がないが、山本は口を出せる身分ではない。
「だいたい今時転売で利益出すのなんて、競合が多すぎて厳しいですよ。ミスキスも多少転売されましたが、こっちに打撃きただけで、する側はパイの取り合いで全然だったみたいですよ。」
-ここからAI-
ヤノから目を逸らしてそう言った。何しろまだ何も教えてもらっていないのだ。仕事とはいえ不安だらけだ。
「あ?そんなもん俺達ならなんとかなるさ!お前にはもっと重要な役目があるぜ!」
ニヤリと笑う関口を見て山本はこの男が本当にやりそうだと思った。確かに頭目であるヤノがいない方が動く人間は多いだろう。しかしここまで自分を巻き込まなくてもいいじゃないかと思いながらヤノを見ると相変わらず鼻歌まじりにスマホを操作している。
「ほいっ、終了。こんだけありゃ十分かな」
一分も経たずにゲームアプリを終了したらしいヤノの声とともに画面が表示される。どうやらデータの移動が終わったようだ。
『ちょっと待った』
「あんだよ。早くコピー終わらせよーじゃん」
関口の言葉を無視してヤノが続ける。
『まずこのアカウントの情報削除すんぞ、あと他の店との取引履歴全部消せっつっとけ』
「了解です。お嬢ちゃん悪いんだけど、これからうちのお偉いさんが来るからその人に会ってくれないかい?それで指示に従ってくれるといいけど」
こちらの顔色を見るようにしながら山本の前にしゃがみこむ関口を見上げ、とりあえずコクリとうなずいた。
「じゃあまた後でな」
関口が出ていくと同時に再びドアが開いた。慌てて立ち上がり入ってきた人物に挨拶をする。
「初めましてこんにちわ。関口さんの姪っ子の山本と言います」
「ああ……君が…………うん、わかった。僕の名前は花村豪太。今日はよろしく頼むよ」
スーツ姿の花村は年上で、かなり若い顔立ちをしていた。営業マンだろうか。人の良さそうな笑顔を浮かべたまま、自分の席に座っている。
「それでは