体育祭
熱心に画面を見つめている。何か考えるように、顎のあたりにに添えられた指が、滑らかな肌をなぞるように動いた。綺麗に整えられた爪をもつそれは、男にしてはほっそりしているが筋張っていて誰かを助ける形をしていた。
横から見ると長く豊かなまつ毛が強調される。髪と同じ金色のそれは、頬に影を落とすほどに存在感がある。
観察するような視線に気づいたのか、無視できなくなったのかようやく俺に声をかけた。
「…どうした、爆豪」
「だれか指名すんのか」
今年の体育祭の録画だろう。よく知った雄英の学舎が画面に映る。見慣れた運動着を纏った、初々しい存在がちまちまと動いている。
「そうだな……」
いつかの自分のように、この事務所に呼んで世話を焼くのだろうか。そうなればインターンで来ている俺に割く時間は、やはり減るのだろう。そう思うとつまらない気分にもなる。多くのヒーローが去り、傷ついている今、後進の育成は重要だと理解はしてる。だが、それでも、今この瞬間だけの邪魔ぐらいは許されるだろう。
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