ミモザこの季節になるとふと頭をよぎる。
アパートの軒先に、鍋からブワッと溢れんばかりの大盛スクランブルエッグのような、大量のミモザの花が咲き誇っている。
ミモザの花を見ると、ふとあの人の顔が頭をよぎる。
ふんわりとした質感。
鮮やかな黄色。
近づくとほんのりと香る優しい草木の香り。
一介のサラリーマンはブンブンと頭を振り、式典用の背広を畳んで入れたバッグを片手に持ち、アパートを後にする。
今日はリーグ本部の式典の日。
今朝見たあの花をの小束を手に取る。
感謝の気持ちを込めて、
そして脳裏によぎるあの人のイメージを込めて。
一介のサラリーマンはミモザの花の小束を胸に携え、式典に、自らの仕事に、今日も臨む。
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