影日ワンライ 20241102【夕日】【星】定点観測地点冬の日没ははやく、頭上にひらけた夜空のどこにも気配をのこさず姿を消している。
2015年1月某日、目の前を行く集団からやや遅れて地下鉄入り口へ向かう月島蛍は、数メートル先を歩いていた日向翔陽が立ち止まり、遠くを見上げるのを視認して目だけで視線の先を追う。
新年会と称して市内飲食店に集合し、ひとしきり騒いだあとの帰路のことだ。
烏野高校男子バレー部OBメンバーとすこし離れて立ち止まった日向は強い目をして暗い夜空の一点を見つめている。
凍てついた冬の真っ暗な空には、強く光を放つ星がいくつも散らばっている。
その中でもひときわ青白く鋭い光を放つ星、シリウスをたぶん日向は見ているのだろうと月島は思った。日向が天体に興味がないことなどはわかりきっている。おそらくさっきまで星の名称すら知らなかっただろう。
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