「痛いの痛いの飛んでいけ」深い青のような色をし、肩より伸びた髪を後れ毛もなく後ろでまとめる女性。いつもどこか張り詰めた様子で、上から紐をピンッと引っ張っているかのように佇んでいる。
なんでそこまで気難しい顔をしていつもいるのでしょうか?と、いつも思ってはいたが何故か今日はふと気になった。
言うことには良く聞いてくれるし何一つ文句なんてなかった。むしろ優秀すぎると言ってもいい。
「モタ。」
「は、はい。なんでしょうか。」
急に呼ばれて驚いたのだろう。勢い良くこちらを見る。
座っている席から立ち上がりコツコツと音をあげながらそばにいる彼女に近づく。
目の前で止まると紫髪をした彼女はおもむろにスーツの女性の頬に手を添えると、頭を、コツンと合わせた。彼女は動揺する間もなく、
「痛いの痛いの飛んでいけ」
紫髪をした女性がそう目をつぶりながら呟く
「な、なんですか、?」
理解が出来なく思わず聞き返してしまう。
「いつも難しい顔をしているからです。」
「人間たちはどうやらこの呪文を唱えると痛みから解放されるようですよ?」
「なのでモタにかけちゃいました。」
いつもの変わらない、にこりとした顔でそう続ける。
それってつまり心配されたって事か…?
彼女の顔を見ようと目を向けると至近距離というのもあって思わず硬直してしまう。
彼女にそう言った意図はないと分かっていても頬が熱くなってくるのを感じる。
痛いの痛いの飛んでいけ、か。
眉をひそませ僅かに翳りのある表情をしてしまう。
貴方の傍でお仕えできて幸せな筈なのに、そばに居ると時折胸が痛くなるなんて…貴方には言えない。
目をそっと閉じ、内に秘めた感情に蓋をする。この関係がいつまでも続くことを願って