「普通の尺度」「うーん別に美味しくないですね。」
唸りながら食べる手を止めない。
無数の足を出せと急に命じられたかと思ったら目の前で自分足を食べられている様子を何故か見せられている。
変身する際の足は再生するからいいものの。
こいつ…魔王のすることはいつも突飛で奇想天外だ。何がしたいのか、はたまた暇なのか。暇というのが一番的確なのだろうなと納得することにした。
次の人そのまた次の日も魔王の“暇つぶし”は続いた。
ある時は「この中に猛毒が1つ混ざってるんですけど、ロシアンルーレットするの面倒なので、もう全部食べてください。♡」
またある時は「モタにイタズラしかけてみてくださいよ。私がしたら面白くないのでエルスが。」なんて、目茶苦茶な要求ばかり求められ文句を言いながらも結局それに応じている始末である。こんな形であれ、構ってもらって嬉しいなんて微塵も感じ取って欲しいくはないが少し思っているのは認めなくもない。
「さて次は…」
思わずその言葉に勢いよくのけぞり身構える
「私、人間たちが飲んでる媚薬って効くのかな〜って疑問があるんです。」
言っていることが理解できない。
なんだ?媚薬?思わず顔をしかめる
「だ〜か〜ら〜」
俺の反応なんてお構い無しに矢継ぎ早に進める。
「媚薬で!ハイポーションを作ってみたんです〜!そしてそれをエルスに飲んで欲しくて♡」
は?と短い声の後に思わず大声をあげてしまう。
な、、何を考えているんだ一体。
「はあ!?いったいどう言うことだ!?バカじゃねェーの!?!」
「飲んでくれますよね。」
ゾクリとその何故か断れない絶対的な何かを、長いまつ毛の中から鋭くもこちらを真っ直ぐに見つめる視線と彼女と自分だけのこの広い部屋で平坦な声ながらも、しっかり芯の通った声がそうさせるのか。
思わず眉を動かしてしまったが平静を装いその挑発めいた文言に応じる事にした。
あっ、と何かを思い出したかのように短く言うと
「大丈夫です。責任はきちんと取ろうと考えていますから」
そう言うと彼女はいつものように笑ってみせる。
これを今から飲むのか、という絶望とその先がどうなるのかと考えると顔に血流が増加するのを感じる。
くそっ、
──普通の尺度一体どうなってんだよ…、!!