シャンパン「さあ、行きますよ〜」
ポンっ
爽快な音がしてシャンパンのコルクが弾け飛んだ。黄金のシャワーが天から降ってくる。きっとアルセウスが雨に姿を変えたならこんな感じなのだろう。上品かつ芳醇な香り。唇の上に落ちた水滴を舐めるとシュワシュワと舌の上で踊った。
異国の王が戦勝記念に行ったと伝わるシャンパンシャワー。勝利の証たるアルセウスは、その恵の雨の向こうに佇み、静かにウォロを見つめている。シャンパンのせいなのか、気分は今だかつてない高揚感に包まれていた。
ああ、やはり、世界を作り替えた記念にこの一本は相応しい――。
「ハッッッ!!」
目覚めるとすでに朝日は高く上がっていて、遅刻だ、と一瞬で理解した。ウォロは再び布団を被る。遅刻が確定した以上、急いでも意味がないからだ。もう一度、あの勝利の高揚感を味わいたい。いや、これは大切な予行練習なのだ。なにせあんなに心地よい気分になってしまったら、ワタクシはアルセウスの前で何をしでかすか分からない。脱ぎ出すかもしれない。雪山では良くあることらしいが、ただでさえ薄着のシンオウの衣を脱いでしまったらそれはすなわち死を意味する。やはり神殿でのシャンパンシャワーは考え直した方が良いだろうか――。
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