放送が目的の便が到着したことを告げてから、三十分ほど経った。内戦が終結し他国との交流が活発になりつつあるといっても、ハスマリーへ乗り入れる航空会社はまだ少なく、直行便も近隣の数カ国からのものだけだ。この時刻に着陸した飛行機は数便といったところ、入国審査を含めても、そう大して時間はかからない。
そろそろか。アーロンはソファから腰を上げた。到着ロビーにぱらぱらと乗客が現れる。きっと一番最後によたよたと出てくるんだあいつは、とアーロンは小さく笑って手に持ったコーヒーの紙コップをゴミ箱に放り込んだ。迎えの人間とハグをしたり言葉を交わしたりと再会を喜ぶ様子を横目に、アーロンは足を進めた。目指すはまだ出口でもたついている明るいブラウンの髪だ。
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