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    fgo_sawara

    @fgo_sawara
    小説あげるマン

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    ケイぐだちゃんワンドロバレンタイン

    Sweet Honey Valentine ふと、ディスプレイから視線を外す。
     眼鏡を外し、ため息を吐きながら目頭を揉んだ。
     家にいながらの業務にはもう慣れたつもりだったが、やはり疲れが溜まると言うか……気が滅入る。
     早くも切らした集中力を補給するべく、ふらりと立ち上がり自室を出た。
     何某かの刺激を求め、リビングへ繰り出す。
     家人は外出中かと思うほどに、静まり返っている。
     テレビの一つでもつけていればいいのに。こちらに遠慮しているのだろうか。
     白いソファに深く腰掛け、膝を折って抱える妻に、背後から忍び寄る。
    「……」
     見れば、雑誌を熟読しているようだった。
     その呼吸まで止めて、一体何を見ているのか。
     普段であれば深く考えたものだが、今は少しばかり疲れていたようで。
    「立香……」
    「っ、きゃあぁ!」
     どことなく癒される後ろ姿を見つめていると堪らなくなり、両腕を広げてぎゅうぅと抱きすくめた。
     驚いた立香は雑誌を床に落とし、大慌てで振り返ろうとする。
     愛らしい子を離したくなくて、腕に少し力を込めた。
    「ど、どうしたの?」
    「いえ、なんとなく……」
     首筋に顔を埋め、すうぅ、と息を吸った。
     恥ずかしいと身じろいだ少女を、数秒経ってから渋々解放する。
    「お仕事は?」
    「……休憩を」
    「嘘、集中できなくなっちゃったんでしょ?」
     全くその通りだ。
     ズバリ言い当てられて片眉を上げれば、立香はクスクスと愛らしく笑った。
    「コーヒーとお菓子持って行ってあげるね。ほんとの休憩の時、またハグして?」
    「はは、ありがとうございます」
     見事に機嫌を取られている。そしてそれが、あまりに心地がいい。
     ご褒美まで用意されては、頑張るしかないではないか。
     来た時とは違った、しゃんとした足取りで自室へと戻る。
     また聞こえてきた可愛らしい笑い声に、思わず頬を緩めていた。
     
     *******
     
    「はい、チョコレート……!」
    「ありがとうございます」
     この日を期待していなかったと言えば嘘だ。
     何故だか少し頬の赤い少女から、紙袋を受け取る。
     例年は手作りのものをくれたけれど、今年は市販品のようだ。
     ……少し寂しいというのはわがままだろうか。
     結婚して何年も経てば、こうして一つ一つのイベント事が変化していくものではあるだろうし。
    「あ、もう食べる……?」
    「ええ、早速いただこうかと」
    「そっか……」
     中身を取り出し、可愛らしいデザインの箱を開けた。
     合計八つの粒チョコレートが顔を覗かせた途端、立香が焦ったように口を開く。
     そして少し考え込み、ストンとソファに腰を下ろした。
    「じゃあ、こっち座って? そしてあっち向いてて?」
    「……? わかりました」
     言われるがままに隣に座り、立香から目を背けて白い壁を見つめた。
     ……衣ずれの音がする。
     一体何を始める気なのかと、ハラハラするようなドキドキするような。
    「……いいよ」
     少し震えた声が聞こえる。
     恐る恐る振り返って、視界に飛び込んだのは肌色だった。
     真ん中に、黒の点が一つ。
    「……こういうの、新鮮でいいって雑誌で読んだの……」
     衣服を脱ぎ落としたのは、大方の予想通りではあった。
     しかしその柔らかな谷間に、丸いチョコレートを挟み込んでいるのは予想外だ。
     思考を完全に放棄してただ見つめていれば、頬を赤らめた立香が泣き出しそうな表情を見せる。
    「こういうの、好きじゃない?」
    「いいえ」
     喜ばない男などいない。
     即座に首を振れば、少女はホッとしたように息を吐いた。
     そして自らの胸で眠るチョコレートを見下ろし、目を見開く。
    「と、溶けてきてる! 早く早く!」
     慌てて肌に唇を寄せる。
     触れる瞬間そっと視線を上げれば、立香が「こっち見ちゃダメ……」とさらに顔を赤くするから堪らない。
     彼女の体温で蕩けたそれは、元々の味よりほんの少し甘くなっていた……ような気がした。
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