生徒×先生♀ 放課後、誰もいない廊下を進みその教室の前を通るとき、四組の誰とかがかわいい、という声が聞こえた。実に思春期らしい会話だなとは思うけれど、居残った生徒のそんな話に指の先ほども興味がなかった。そのまま通り過ぎ、階段へ足を向ける。
けれどひとつ、ふと聞こえた続きに驚かされてしまった。
「俺はオーエンですね。顔も体も、良くないですか?」
こういう話には混ざらなさそうな大人びた(あるいは浮いた)生徒の声で、あろうことか自分を名指しされたからだった。
「……」
面白かった。静かに笑いながら階段を降りていく。
そう、そのときはただ面白いと思っただけだった。可愛げのないあんなやつにもそういう子どもらしいところがあるのかと思って面白かったし、そんなやつの思春期の視線をまさか自分が集めていたのかと思って面白かった。
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