MY BLUE SUGAR!キョウが「あっ」と声をあげた時にはすでに指先に鋭い痛みが走っていた。皮膚の上に熱い液体が滴るのを感じてすぐもう片方の手で切った指先を止血のために強く握りしめた。
キョウがこんなに明瞭な痛みを感じたのは久しぶりの事だった。この月に来る前は、脆弱な体を心配されるあまりマトモに学校に通うことはおろか同年代の学友たちと遊ぶことも喧嘩することも出来なかった。その時と比べれば今の生活は少し、いやかなり風変わりな事に目をつぶれば随分と健康的だ。
この学校に残る数少ない貴重な紙の書籍を自分の血で汚してはいけないと、図書室の椅子から立ち上がろうとして両手が塞がったままな事を思い出した。ガタリと大きな音を立てて木製の椅子が後ろに倒れて、それに続くように本棚の向こうから低音の声がこちらを心配するように響いてきた。
2070