一体なんなんだ。
最近やたらと、俺の事を知っているという人たちから声をかけられる。だが、その人たちの事を俺は一切知らない。
彼らは皆、俺を見ては口々に「夢藤らしくない」と言う。俺は今までと何も変わらない。俺は俺のまま生きてきただけだというのに、彼らは一体、俺を通して誰を見ているのか。
少し疲れた。公園のベンチに腰掛け、項垂れる。夜の静寂が心地いい。今、自分が一人である事を実感できる。
「……夢藤くん?」
頭上から声がする。顔を上げれば、見知らぬ若い男が立っていた。
「やっぱり!夢藤くんだ!久しぶりだね!」
人当たりの良い明るい笑顔を向けて男は続けた。口ぶりから、俺の事を知っているようだ。嫌な予感が頭の中を駆け巡る。もしかして、こいつも、
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