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    makotonokatsura

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    makotonokatsura

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    いずむつ久しぶりに書いた!
    ワンライお題「ぽんぽん/むにむに」

    #いずむつ
    turnUp

    草木生い茂る夜の里山。
    空に浮かぶ満月の光が闇に紛れ駆ける白い毛並みを輝かせる。
    「あ、あそこです!」
    「今度は見失なわねえかんなー!」
    「う、うさぎさん、待てぇーっ」
    夜目の効く短刀たちがその姿を捕らえると持ち前の機動力を活かし駆け出してゆく。
    「おいお前ら!ここは敵も居るんだ、無闇に踏み込むんじゃねぇぞ!」
    「分かってるって、和泉守…じゃなかった隊長!」
    「道しるべに小石置いていきますので後から来てくださ〜い!」
    「す、すみません、さ、先に行ってますっ!」
    部隊長である和泉守の前を駆ける厚、秋田、五虎退は各々告げると闇の中へと消えていった。
    「疲れ知らずかよ、あいつら…はぁ」
    「ほがなわけないろう、ずっとわしらと一緒にここを探索しゆうがやき、疲れちゅうちや」
    「ちっ、言われなくても分かってんだよ」
    足を止め息を吐いた背後から副隊長である陸奥守の声がかかり、和泉守は苛立ちまじりに返す。
    通常の戦場より穏やかな土地と思いきや刀剣男士の身体への影響は高く、一度の出陣だけでも直ぐに疲労が蓄積される。和泉守率いる第一部隊も課された任務のため幾重とこの地に足を踏み入れ身体にかかる負担を戦闘で気を紛らわしてきたが体は正直なもので先を行く短刀の子達に続いて駆ける事はできず、敵と対峙した時のための力を温存しておくしかなかった。
    「あん子らにはさっきこれをあげたき、元気になったがよ。ほれ、おんしも食べえ」
    むにむに、と口元に柔らかな物があたり、視線を落とすと小さな団子が押しつけられていた。
    「ほれ、ふぇんひひんふぁろふぁ!(これ、戦利品だろうが!)」
    「主が疲れた時には食うてもええ言いよった。ただでさえ疲労がこじゃんと溜まりゆうきの…それにここなら幾らでも獲れゆう、使えるものを使わん手はないぜよ」
    真剣な表情で和泉守を見据える陸奥守の琥珀色の瞳が月明かりを受けて煌めく。
    無理を押して戦っている和泉守への怒りと心配を孕んでいるそれを感じ取れば、観念するしかないのだった。
    きつく閉じていた口を開き、団子を掴む黒い指先ごと咥え、柔らかく弾力のある団子を咀嚼するとともに手袋越しの節くれだった指を舌で舐る。
    口に広がる甘さとともに仄かに感じる硝煙の匂いと味に眉を寄せる。
    「んなっ!?」
    突然の行動に面食らった陸奥守にしてやったりと和泉守はほくそ笑み、名残惜しそうに指先を吸いあげ、ちゅっと音を立てて解放する。
    「やっぱこの団子甘すぎんだよなあ。ま、おかげでなんとか食えたぜ。ありがとよ」
    ぽんぽんと癖毛の跳ねる陸奥守の頭を叩く。耳まで赤く染まった顔に心も満たされ更に団子の効果か先程まで感じていた疲労感が嘘のように消え、力が漲る充足感を得た和泉守は
    「おら、ぼさっとしてねぇであいつら追いかけんぞ!」
    言うが早いか厚たちが駆けた方向へと駆け出して行った。

    「鳴狐、鳴狐!こういう時はなんと言って声を掛けてあげたらよいのでしょう!?………そっとしてあげたほうがいいと思う………」
    一部始終を側で見ていた鳴狐とお供の狐は顔を見合わせ頷きあい、そんな一振りと一匹のやり取りに我に返った陸奥守の怒号が里山に響き渡る。

    「い、和泉守のべこおおおおおおっっっ!!!」
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