無題 その年の夏も茹だるような暑さで、黄色いコンクリートの道路には真昼の日差しが照り付けていた。
とぼとぼと、坂道をのぼる。
滑降する。
また歩いてのぼる。
そして、滑降する。
園長が子供から取り上げたものを保管している物置で、偶然見つけてくすねてきたスケートボードで、この夏、アカギは滑降を繰り返していた。
自分でもどうしてこんなに飽きもせず繰り返しているのかわからなかったが、やめる理由もなかったし、だいいち、ありえないほど退屈で、暇だった。
中学校の夏休みが始まる前、アカギがベッドに隠していたたばこと金を、施設の園長が見つけて取り上げた。およそ中学生には似つかわしく無いほどの金は、ギャンブルで手に入れたものだ。夜毎こっそりと抜け出して深夜徘徊するうち出会った南郷という男が、飲み屋で気まぐれにアカギにポーカーを教えたことがきっかけとなり、その豪運に入れ込んだ大人たちに連れられて、アカギはいまや半分違法な賭場にまで出入りするようになっていた。新しいルール、新しいゲーム。退屈は確かに紛れたから、他のことよりは気に入っていた。けれどアカギにはギャンブルというものが、今ひとつ何が楽しいのか、わからなかった。
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