天使の島「おい瀬尾、喜べ! 天使の島への取材が通ったぞ! 記者はお前指名でな!」
先輩が喜々とした表情で俺のデスクに取材日のメモを置いたとき、俺はきっと、何が何でも、その場で断るべきだったのだ。
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波の音が聞こえる。
海猫の鳴き声が上空から聞こえ、近くを歩く猫は魚を咥えていた。潮風が頬を撫でる。磯の香りが鼻孔を擽り、水平線の彼方に見える空は、どんよりと暗い海と混じっていた。
まるでこれからの取材を憂鬱に思う俺の気持ちを反映しているようだ。けれど、この仕事を断る選択肢などない俺は、そわそわしながら迎えを待つ。
船着き所にはすでにいくつかの船が並んでいるが、俺が乗る船はまだ来ていないようだ。
本当なら先輩が一緒に来てくれるはずだったのに、取材を取り付けた当の本人は、体調不良だというのだからやるせない。
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