夏の終わりの出来事8月末の大宮はまだまだ暑い。それでも夕方の空気に、少し秋の気配を感じるようになってきた。夏との別れを惜しむように、蝉がそこかしこで鳴いている。
「ものすごい鳴き声ですね」
「打ち上げ花火のフィナーレって感じだな」
研究所でのシミュレーションを終え、ハナビとタイジュは超進化研究所の独身寮へ向かっていた。
「今日、カレー作るから俺の部屋来いよ!」
「わぁ、いいんですか?じゃあ自分、サラダ作って持って行きます。」
部屋は別々だが、よくお互いの部屋で一緒に夕飯を食べる二人は、今日もそんな話をしながら歩いていた。
独身寮の門をくぐり、玄関ホールに入ろうとしたとき。前を歩いていたタイジュがピタリと立ち止まった。危うくぶつかりそうになったハナビが急停止し、「どうした?」とタイジュの顔を覗き込む。
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