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    cute_camellia

    @cute_camellia

    初老BBAが
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    cute_camellia

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    バスドラ🌹×シェフ🌟
    (結婚してる前提)

    支部では結婚式の話で最終話としましたが、実はハネムーン話も書いてたんですよってことでw

    ハニームーンと甘い星そういえばハネムーンに行ってないな、ということをふと思い出す。
    オレはバス運転手、彼女はレストランのシェフと全く異なる職種のため、休日が重なるのは月に数日あればいい方だ。
    でもそんなことはどうだっていい。
    オレは彼女さえそばにいればそれでいいんだ。
    彼女もきっと同じ気持ちだろうと思うから、オレたちはこれまで一緒に暮らしてきたわけだ。
    けれど、結婚した以上はそういう特別なイベントも楽しみたいのが本音ではある。
    ……だが、その話はまだ彼女にはしていない。
    オレはともかく、彼女は店の主だ。おいそれとまとまった休みなんて取れるはずもないじゃないか。
    だからこれはあくまでオレ個人の願望なんだ。


    そんなある日の夕食の時間。
    リビングで何気なく流していたテレビが、日本を特集する番組を放映していた。
    彼女がそれを興味深げに見ていたので、オレも何気なく画面に目をやった。
    京都という都市がこの回のメインテーマのようで、様々な名所を紹介していた。
    寺社仏閣をはじめ歴史的建造物、古都の街並み、自然景観など、このロンドンとはまた違った様式のトラディショナルさがそこにあった。
    すると向かいに座っていた彼女がそっと言った。
    「……綺麗…」
    うっとりするような目線で、画面の中の見知らぬ土地を眺めていた。
    こんな表情をしている時の彼女の横顔はとても美しい。思わず見惚れてしまうほどに。
    しかしすぐにハッとしたような顔をして、慌てていつもの顔に戻った。
    照れ隠しか、少し早口になりながら彼女は言う。
    「今の番組、とても素敵でしたね」
    急に話題を変えられてしまって戸惑ったが、オレは何も言わずにただ微笑み返した。
    それからしばらく沈黙が流れた後、彼女は意を決したかのように言った。
    「……私たち、新婚旅行に行ってないなと思っていて…」
    彼女もオレとまた同じことを考えていたようだ。
    オーマイガー!オレも同じこと思ってたぜハニー!
    ……と言いたかったが、恥ずかしいので心の中でだけ叫ぶことにした。
    CMが明け、テレビが先程の番組の続きを流し始める。
    『京都には、京野菜という伝統野菜があり、初夏から秋にかけては“賀茂ナス”という名のナスが旬を迎えます』
    ……ナス、だと?オレは画面に釘付けになった。
    オレはナスが大好物なのだ。
    自分で料理をするときにはほぼ食材に使うし、恋人時代に彼女に振る舞う機会があった際に作ったのも、ナス入りのミートパイ。
    彼女がいつも作ってくれるトマトベースのパスタにもナスが入っている。
    少し前に仕事帰りに寄ったマーケットでもたくさん売られていて、つい買い込んでしまった記憶がある。
    …しかしこの“カモナス”とやらは不思議な形をしている。普通のナスはeggplantの名のとおり卵型に近いが、これは殆ど球体だ。どんな料理に使うんだ……?
    などと、オレがテレビに映るナスに夢中になっているうちに、いつの間にか食事を終えたらしく、キッチンへ食器を下げに行った彼女が戻ってきて、はにかみながら言い出した。
    「……京都、行きます?」
    オレは二つ返事でOKした。
    斯くして、オレたちのハネムーンの行き先は、日本の京都に決定した。


    さて、そうとは決まったが、問題はそのための休暇の捻出だ。
    彼女は毎日忙しく働いているため、そう簡単に休みなど取れないだろうと覚悟していたが、思いの外スムーズに取れそうだという。
    バトラーやスタッフ一同が気を利かせてくれたようだ。
    オレの方はといえば、休暇の申請はあっさり通った。
    むしろ同僚や上司からは、
    「どうして今まで連れてかなかった!?」
    「お前の代わりなんかいくらでも居るから休め!」
    「嫁さん孝行してこいよコノヤロー!」
    …などと散々な言われようだった。が、まぁ気にしないことにする。
    というわけで、移動も含めて一週間の旅行期間を得ることが出来たのだった。


    出発当日。
    朝早く家を出て、空港へ向かう。
    オレが運転する車に乗っている間中、彼女はずっと楽しげに窓の外の風景を眺めていた。
    その笑顔を見ているだけで幸せな気分になる。
    飛行機の中では、ガイドブックやトラベルサイトを見ながら何処に行くか話し合って過ごした。
    移動は乗り継ぎや電車も含め15時間。長い道程だが、楽しげな彼女と話しながらなのであっという間に過ぎていく。
    到着したのは日本時間の午後8時だった。
    時差ボケもあり眠気があったので、今夜はそのまま宿に直行することとなった。
    到着した宿は、いかにもな日本家屋といった趣の佇まいだ。
    オレたちを迎えたルームアテンダントはみな着物姿で、日本に来たという事実を実感する。
    とりあえず今日は遅いので休んで、観光は明日からにしよう。
    窓から庭園を眺めながら、いい旅にしようなと願いを込めて彼女にキスをした。


    翌日からはいよいよ観光地を巡る。
    話し合った結果、彼女は建造物などの名所を観たい、オレは賀茂ナスをはじめとしたグルメを楽しみたいということになっていた。
    どうせならどっちも実行しようじゃないか。
    まずは彼女の観たいところへ行くことにしよう。
    今回の旅はオレが彼女をエスコートするつもりだ。
    飛行機の中でガイドブックは読み込んだ。
    観光バスのガイドもやってるオレの本領を発揮する時が来たようだぜ。
    オレたちは京都駅に降り立った。
    改札を出て出口を抜ける。ここは京都駅の正面口に当たる場所だ。
    早速タクシー乗り場へと向かう。事前に予約していたから、既に車が待っているはずだ。
    案の定、運転手がドアの前に立って待っていた。乗り込み、運転手に行先を告げた。
    「ワルイージさんは日本語もできるのですか?」
    と彼女が驚いていた。
    「ああ、英語やフランス語に比べたらだいぶ片言だけどな」
    オレのバスの乗客には稀に日本人もいるからと、少しだけ学んでおいたものだ。
    当時はまさかオレ自身が日本に行く日がやってくるとは思いもしなかったがな。
    だが、たったそれだけのことだったのに、彼女が尊敬の目でオレを見てくれる……当然ながら可愛い。
    そんな可愛い彼女の為にも、今日は頑張らねば。


    最初に着いたのは二条城。
    広大な敷地の中に、本丸御殿をはじめ数多くの建築物が建ち並んでいる。
    ガイドのおすすめという観覧コースをふたりで見て回る。彼女は特に庭園を気に入ったようで、目を輝かせながら見ていた。
    そういえば付き合っていた頃に連れて行った、ウィスタブル城のガーデンにも見とれていたっけ。彼女は城とその庭が好きなのかもしれない。
    次は金閣寺だ。
    こちらも世界遺産だけあって見応えがある。
    池に浮かぶ金色の寺院が美しい。
    この景色を前にして写真を撮らないなんてありえないだろう。
    オレはすかさずスマホを取り出した。
    すると、彼女も同じようにスマホを構えていた。
    暫く写真を撮ったあと、彼女がふたりでセルフィーも撮ろうという。
    これはいい思い出になりそうだ。
    オレがカメラを向けると、彼女が顔を寄せる。
    シャッターを切る直前、唇に柔らかい感触があった。
    オレは驚きつつもシャッターを押した。
    こうしてオレたちの写真フォルダには、記念すべき一枚が加わったのだった。
    その後は銀閣寺へ。金閣寺がゴールドなのに対しこちらはシルバーではないことに驚いたり、清水寺では音羽の滝の水を飲んだりと、一日目はベタな京都観光を楽しんで終えた。
    余談だが、今回とった宿には部屋に専用の露天風呂がついている。
    …まぁそんな部屋だ。やるこたぁ決まってるよな?
    宿に戻ったあとしっぽりと過ごしたのは言うまでもない。


    二日目の目的は、街歩きとグルメだ。
    京都には街の景観を守る条例があるようで、一見すると伝統的な家屋かと思いきや、よく見るとファストフード店だったりなんてことがあったりする。
    そういう意味ではロンドンにも通じるものがあったりして、ちょっと面白い。
    勢いで京都行きを決めてしまったが、何だかんだで楽しんでいる自分がいる。
    勿論、一番は彼女が楽しんでくれることなんだけどな。
    彼女は今、ガイドブック片手にオレの隣を楽しげに歩いている。
    その笑顔が見られるならいくらでも案内してやりたくなってしまう。
    しつこいだろうが何度でも言うぜ。オレの嫁さんが可愛すぎる。
    ……それはさておき昼食だ。
    懐石料理という日本式のコース料理だそうだ。
    メニューの中に、オレの最大の目的である賀茂ナスがあったため迷わずそれを選んだ訳だ。
    結果としては、オレの期待を裏切ることなく、その味に舌鼓を打つ。贅沢言うならナスだけおかわりしたかったくらいだ。
    彼女の方も満足してくれたようで良かった。
    食後のグリーンティーを飲みながら、これからどうするかを話し合う。
    すると、彼女は着物の着付け体験をしてみたいと言う。
    ……そんなの絶対綺麗に決まってるじゃないか!
    オレは二つ返事で了承する。
    幸い近くに体験のできる店が近くに見つかったので、早速向かうことにした。
    長身の彼女だがサイズが合うものはあったようで、無事着付けを済ませることができた。
    ……うん、やっぱりとても似合う。綺麗だ。
    翠色の着物を着た彼女は、普段の彼女とまた違った魅力があり、思わず見惚れてしまう。
    着物もだが、まとめられた髪のうなじが眩しい。
    彼女はオレの視線に気付いたのか、照れたように笑っていた。
    せっかくだからオレもと思ったが、男性用でオレのサイズはなかったらしい。ま、この身長では無理もないか。
    着付け体験のあとはそのまま街を散歩できるとの事だったので、オレたちは再び街へ繰り出した。
    雑貨屋を覗いたり抹茶のスイーツを食べたり。
    そして、伏見稲荷大社を訪れる。
    本殿で参拝をし、奥へと進む。そこにはガイドブックにあった千本鳥居が待っていた。
    何千本と鳥居が並んでいる光景は圧巻で、オレたちはただただ息を飲むばかりだった。
    朱色のトンネルをくぐる度に、異世界に迷い込んだような気分になる。
    彼女がオレの腕にしがみつき、身を寄せてくる。
    そんな彼女が愛おしくて、オレは彼女の肩を抱き寄せた。


    三日目。
    今日も天気に恵まれている。
    オレたちが歩く道すがら、すれ違う人が振り返る。
    オレはともかく、彼女はかなりの…いや超絶美女だ。
    彼女の美しさに惹かれて皆振り向いたに違いない。
    すると、ひとりの若い女性が、オレたちに歩み寄ってきた。
    拙い英語とジェスチャーで『一緒に写真を撮ってほしい』と言っているらしかった。
    オレは快く承諾し、彼女と3人で並んで写ってやった。
    女性は何度も頭を下げながら去っていった。
    ふと隣を見ると、彼女の顔が少し赤くなっている。
    彼女はこんな類稀な美貌を持っているのに、割と人見知りをする質なのだ。
    「私たち、特に有名人ではないのにいいのでしょうか?」
    「それだけロザリーナが綺麗ってことさ」
    オレの言葉に、彼女は顔を真っ赤にする。
    こういう反応を見せてくれるから、つい揶揄いたくなるんだよなぁ。
    気を取り直して観光だ。
    ということで、オレたちは京都タワーにやってきた。
    京都駅を降りるとすぐ見える、地上百メートルを超える巨大な塔だ。
    展望台からの眺めは素晴らしく、オレは景色を指差しながら説明を始める。
    彼女は興味深そうに聞いてくれていた。
    ひと通りの説明を終えたところで、展望スペースの中を見てみると、何やら鳥居のようなものがある。
    奥には祠もあり、中にはマスコットキャラクターと思しきものが祀られていた。
    こんな所にまで神社か、京都らしい。
    傍らの看板には恋愛成就のご利益があると記されている。
    悪いが、そんなものはとうの昔に叶ってんだ。何故ならもう既に結ばれてるんだからな。
    京都タワーを後にし、駅周辺を巡る。
    古都の街並みと都会的な建造物のハイブリッドが面白い。
    世界的なゲームメーカーの本社も外観だけだが見学してきた。ガキの頃遊んだゲームはここで作られていたのかと感慨深く思ったものだ。


    ……それにしても。
    楽しい時間ってのはあっという間に過ぎてしまう。
    移動を除けば、この旅はあと一日しか残っていない。
    明日は土産選びで終わってしまいそうだしな。
    彼女と過ごす時間は、何物にも代え難いほど幸せで、ずっとこの時が続けば良いのにと思う。
    でも、時は止まってくれない。
    ……止まらないからいいんじゃないか。
    永遠なんて退屈でしかない。
    「行くか、ロザリーナ」
    オレたちのハネムーンの最後を締め括るための場所へ。


    最後に訪れたのは、渡月橋。
    あの日見ていた番組で、彼女が一番見とれていた場所だ。
    川面が夕陽に染まり、まるで燃え盛っているかのようだ。その美しい光景に言葉を失う。
    オレの隣に立つ彼女も、同じ気持ちのようで、その瞳に映るのは眼前の光景のみ。
    暫くの間、オレたちは無言のままその光景を見つめ続けた。
    やがて彼女が、オレの方を見て口を開く。
    その声は、微かに震えているようだった。
    「……ありがとう」
    その瞬間、フラッシュバックした。
    初めて彼女とロンドンの街を歩いた日のことを。
    タワーブリッジの前でふたりで夕陽を見たことを。
    あの日、オレは初めて彼女を愛していると気付いた。
    それは今も変わらない。いや、それ以上かもしれない。
    あの日のオレは、彼女の名前さえ呼べなかった。
    でも今は違う。彼女のいちばん近くで、その名を呼ぶことができるのだ。
    「ロザリーナ……」
    噛み締めるように、オレは彼女の名を呼んだ。
    彼女もそれに応えるように微笑みを浮かべる。
    そして、オレの胸に飛び込み、オレの背へと腕を回して抱き着いてきた。
    「ワルイージさん……連れてきてくれて…私の我儘を聞いてくれて、ありがとう」
    何言ってんだ。こんなの我儘のうちに入んねぇよ。
    オレたちは惹かれ合い、結ばれたんだ。
    だから…これからもっとたくさんの思い出を作っていこうぜ?
    オレたちはこれからも一緒なんだからさ。


    宿に帰る頃には空には月が登っていた。
    今夜は満月。だが、その月の色は普段と違って見えた。
    ピンク?オレンジ…ともちょっと違うな。
    「まるで蜂蜜の色みたい」と彼女が言う。
    なるほど、確かにそんな色をしている気がする。
    オレも彼女の意見に賛成だ。
    ハネムーンに見る月が、ハニームーン、か。
    なんだか出来すぎてるような気もするな。
    そんな甘い響きにも負けないくらい、オレたちにとってこの旅行は甘美で幸せなものになった。
    蜜のような日々も明日で終わりだ。名残惜しいが仕方ない。
    露天風呂に浸かりながら、ふたりで月を眺める。
    湯煙越しに見える彼女の肌はほんのりと紅潮し、艶めかしさを醸し出していた。
    彼女の肩を抱き寄せ、唇を重ねる。
    この旅最後の、甘いふたりの夜。
    それは蜂蜜色の月より甘くて……蕩けてしまいそうだった。


    ハネムーン最終日…の朝。
    昨夜は散々求め合ったせいで、ふたりともまだ布団の中だ。
    先に目が覚めたオレは、隣の彼女の寝顔を眺めていた。
    差し込む朝の光が、彼女のブロンドや長い睫毛を照らし出す。天使みたいだな、と思う。
    こんなに綺麗な人がオレの嫁さんだなんて、未だに信じられない。
    そっと髪を撫でると、彼女は身動ぎをした。
    起こしてしまっただろうか?しかし彼女は目を閉じたまま微笑んでいる。
    ……夢の中でも、オレと一緒にいてくれているのか? そう思うと嬉しくなって、彼女をそっと抱きしめた。
    すると彼女はゆっくりと目を開いて、オレの名を呼ぶ。
    「……ワルイージさん…」
    まだ微睡んでいるのか、その声は少し舌足らずだ。
    それが可愛くて、オレは彼女の額にキスをする。
    すると今度は、彼女が頬に触れるだけの口づけをしてきた。
    「…ワルイージさん…すき♡」
    そのまま体を擦り寄せてくる。今朝の彼女は何故だか甘えん坊だ。
    ……そんなに可愛いとまた襲っちまうぜ?
    結局、オレたちは宿での最後の朝食を食べ損ねてしまうことになった。


    チェックアウトを済ませ、旅館を後にする。
    京都駅に着くと、電車の発車時刻まではまだ余裕がある。
    それならばと、土産物屋が立ち並ぶ通りへと向かうことにした。
    オレが同僚たちの土産に頭を悩ませていると、彼女がとある店の前で立ち止まる。
    そこは和菓子を扱う店だった。
    店頭には、星を思わせる形をした色とりどりの大小の粒が、ガラス瓶に詰められて陳列されていた。
    「とても綺麗……」と彼女がため息を漏らす。
    「ああ、金平糖っていう、砂糖菓子だってさ」
    ガイドブックでも見た、人気の土産物だ。
    「お菓子?ということは、食べられるのですか?」
    彼女が興味津々といった様子で尋ねてきた。
    オレは彼女に頷いて、笑いかける。
    「買っていくか?」
    「ええ」
    彼女は笑顔で答えてくれた。
    店内に入ると、年かさの女性店員が応対してくれた。
    オレはそこで職場への手土産用に箱詰めの菓子をいくつか買う。
    彼女は真剣に吟味した結果、店のスタッフ用と友人用に金平糖の瓶を数種類。最後に、自分用にもひとつ購入していた。
    こうして、オレたちのハネムーンは幕を閉じた。


    帰宅しひと息ついた後、彼女は早速金平糖の蓋を開けた。
    そして一粒摘み、口の中に放り込むと、幸せそうに口角が上がる。
    その様子を見て、オレも試食させて貰うことにする。
    彼女の真似をして口に含むと、優しい甘味が広がる。
    なるほど、シンプルだがこれは美味い。
    「沢山食べるとすぐ無くなりそうだから、毎日一粒ずつにしておきますね」と彼女が言う。
    それだけ旅の思い出を大事にしてくれているんだろうな。オレもそれに倣うことにした。
    それから、金平糖の瓶はキッチンカウンターの片隅に置かれ、毎日少しずつその中身を減らしていった。
    最後は紫色と翠色のふた粒が、瓶底に寄り添いあって残っていた。
    まるでオレたちみたいじゃないかと笑って、ふたりで甘い星を噛み締めた。


    《fin》
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