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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。犬化したTF主くんがルチに気づいてもらうために奮闘する話です。タグを見て書いたテキストですが元のタグが分からなくなりました。

    ##TF主ルチ

    TF主くんが犬になる話 目が覚めた時、目の前に広がる景色に違和感を感じた。視界に映る全てのものが、いつもより大きいのである。頭を乗せている枕も、隣に置かれた目覚まし時計も、いつもの二倍か三倍の大きさがある。慌てて身体を起こしたが、景色はほとんど変わらなかった。
     これは、何かがおかしい。自分の身体が、何か別のものに変わってしまったみたいだ。寝惚けた頭をブンブンと振り、胴体へと視線を向けたところで、僕は悲鳴を上げそうになった。
     そこにあったのは、黒い毛むくじゃらの物体だったのだ。無数の紐のようなものが纏わりついた棒状の何かが、シーツの上に二つ並んでいる。恐る恐る右手を動かしてみると、シーツの上の物体が動いた。
    ──うわぁっ……!
     今度は、本当に悲鳴を上げてしまった。上げたつもりなのだが、口から零れた言葉は、『わふっ』という低い唸り声だった。どうやら僕の身体は、毛むくじゃらの犬になってしまったようである。突然のことに、すぐには理解ができなかった。
     これは、悪い夢なのだろうか。頬をつねろうと手を伸ばして、自分の指が動かないことに気がついた。仕方なくベッドに頭をぶつけてみるが、感じるのは痛みだけである。毛皮をバサバサと揺らしながら、僕はその場にうずくまった。
     どうしよう。今日は、ルチアーノの任務に協力する約束があるのだ。もうすぐ、僕を起こすために部屋へとやって来るだろう。こんな毛むくじゃらな姿では、僕だと気づいてもらえないかもしれない。
     急いでベッドから這い出すと、床の上をくるくると歩き回った。肉球の生えた足は衝撃を吸収するから、室内で靴を履いた時のような感触だ。身体が小さくなっているから、勉強机も押し入れの扉も小さく見える。しばらく頭を巡らせたが、何も解決策は思い浮かばなかった。
     そのまま、その時は来てしまった。眩い光の粒子が、僕の部屋を包み込んだのだ。それは一点に集中して、ひとつの像を結んでいく。光が消える頃には、ベッドの隣に赤い髪の少年が立っていた。
     ルチアーノは、ベッドの上を覗き込んだ。そこに人影がないことに気がつくと、布団を捲って中を見る。今日はリビングにいると思ったようで、踵を返して部屋を出ようとしている。慌てて彼の足元に歩み寄ると、犬の身体のまま声をかけた。
    ──ルチアーノ
     僕の言葉は、『わん』という鳴き声にしかならなかった。犬の姿に気づいたルチアーノが、怪訝そうな顔で足元を見下ろす。足元に転がる毛玉に気がつくと、彼は足先でつつこうとした。
     迫ってくるインラインスケートが怖くて、僕は慌てて身を引いた。慣れない身体に足が絡まって、頭から地面に倒れ込む。僕の動きにびっくりしたのか、ルチアーノが僅かに動きを止めた。その隙を見計らって、急いで体勢を立て直す。
     僕の姿を眺めようと、ルチアーノはその場にしゃがみこんだ。美しい少年の顔が、真上から僕を見下ろしている。いつもは僕が彼の姿を見下ろしているから、下から見る姿に見惚れてしまった。
    「なんだ、これ?」
     彼の長い腕が、僕の顔をめがけて伸びてくる。手のひらが頭の上に乗せられ、長い毛皮が 掻き分けられる。両の瞳が晒されると、その姿はいっそうはっきりと見えた。
    「犬? なんでこんなところに?」
     きょとんとしたルチアーノの声が、真上から僕の顔へと降り注ぐ。状況を説明したいのだけど、口から出るのは吠える声だけだ。彼は気づいていないようで、すぐに手を離して立ち上がった。
    「あいつが拾ってきたのか? 勝手に犬を飼うなんて、無責任なやつだな」
     リビングに向かおうとするルチアーノを、必死の思いで引き留めようとする。足元に絡み付くように並走すると、彼は面倒くさそうに足で払った。
    「なんだよ。ついてきたりして。僕は忙しいんだ」
    ──違うんだよ。ルチアーノ、気づいて!
     何度伝えようとしても、口から零れる言葉は、わんわんと言う吠え声だけだ。遊びの要求だと思ったのか、ルチアーノが面倒くさそうに睨み付けてくる。リビングに足を踏み入れると、彼は室内を見渡した。
    「ここにもいないな。あいつ、どこに行ったんだ?」
     こうなったら、僕だと分かるような何かを見せるしかない。とはいえ、見ただけで僕だと分かるようなものが、今の身体には何一つないのだ。こういう時、アニメやドラマのキャラクターはどのような行動に出ていただろう。少し頭を巡らして、ひとつの案を思い付いた。
     くるりと踵を返すと、急いで自分の部屋へと向かう。机の隣に立て掛けてあったデュエルディスクを掴むと、駆け足でリビングへと戻ってきた。
    ──ルチアーノ、これを見て。僕だよ
     わんわんと叫びながら、僕はデュエルディスクを地面に落とす。ガシャンと大きな音がして、ルチアーノがこちらを振り返った。デュエルディスクを起動しようと、やみくもにスイッチの近くを連打する。怖い顔をしたルチアーノが、僕の前からデュエルディスクを取り上げた。
    「おい、それはダメだぞ。玩具じゃないんだ」
     ルチアーノの小さな腕が、僕のデュエルディスクを取り上げる。スロットから零れ落ちたデッキが、バサバサと地面に散らばった。ルチアーノが面倒臭そうに息をつく。
    「あーあ。バラバラになっちまった」
     しゃがみこむルチアーノの前で、僕は必死にアピールをする。切り札に前足を乗せると、顔を上げてルチアーノを見つめた。視線に思いを込めながら、祈るような気持ちで見つめる。
    ──ルチアーノ、僕だよ。気づいて
     僕の思いは、彼には伝わらなかった。片手で僕を払うと、散らばったカードを広い集める。再びカードを示そうとすると、今度は鋭い瞳で睨まれた。
    「こら、踏むなって。どけよ」
     最後の手段も、彼には通用しなかった。フィクションの世界では、ゆかりの物を見せれば気づいてもらえるものなのだけど、現実では上手くは行かないらしい。怖い顔をしたルチアーノの姿を見つめたまま、僕は途方にくれるのだった。

     気がついたら、ベッドの上に寝転がっていた。背中は汗びっしょりになっていて、心臓はバクバクと音を立てている。ついさっきまでのことを思い出して、恐る恐る身体を起こした。
     布団の中から手を出すと、両目でまじまじと見つめる。犬になっていたらと思ったけど、視界に入ったのは人間の腕だった。ホッと息をついてから、大きく深呼吸をする。隣に眠っていたルチアーノが、面倒くさそうに身体を起こした。
    「どうしたんだよ。うなされてたぜ」
    「ちょっと、怖い夢を見たんだ」
     小さな声で答えてから、僕はゆっくりとベッドから降りた。当たり前だけれど、下半身も人間の身体だ。ものの縮尺も普段と同じだし、指先も細かい動きができる。人であることのありがたみを、今さらながら再確認した。
     安心したら、身体の震えが止まってきた。恐怖を払拭しようと、ベッドの上にいるルチアーノを見つめる。ふと思い付いた言葉を、小さな声で投げかけた。
    「ねえ、ルチアーノ。ルチアーノは、僕が犬になっても気づいてくれる?」
     僕の問いを聞くと、ルチアーノは呆れたような表情を浮かべた。からかうように口角を上げると、笑みの籠った声色で言う。
    「急にどうしたんだよ。ついに、自分が犬みたいだって認めたのか」
    「夢を見たんだ。僕が犬の姿になって、ルチアーノに気づいてもらえない夢を。僕だって教えようとしたんだけど、わんしか言えなくて、何度も振り払われちゃったんだ」
     軽い言葉で言おうと思ったけど、深刻な響きが籠ってしまった。自分が自分ではなくなるという感覚は、底知れない恐怖を伴うものだったのだ。
    「相変わらず、変な夢を見てるんだな。僕が犬扱いしすぎたからか?」
     甲高い声で笑いながら、ルチアーノは楽しそうに言う。いつもと変わらない声を聞いていたら、得体の知れない恐怖も薄れていった。
    「君が犬になったら、僕が可愛がってやるよ。誰にも渡したりはしないし、殺させはしない。これなら、君も安心だろ」
     にやにやと笑みを浮かべたまま、ルチアーノは言葉を続ける。そこに不穏な響きを感じて、背筋が冷たくなった。気づかれても気づかれなくても、僕は怖い思いをするのかもしれない。そう思ったけど、口に出すことはできなかった。
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