嘘「お前、僕とデュエルしろよ」
町を歩いていると、後ろから声が聞こえてきた。舌足らずで甲高い、小学生くらいの子供の声である。これくらいの歳の知り合いは多いが、聞き覚えのない声色だ。自分への言葉ではないと思って、そのまま通りすぎようとする。
「聞こえなかったのか? 僕とデュエルしろよ」
声の主は、続けてデュエルを挑んでいる。またしても、僕の近くから聞こえてきた。休日の昼間だから、相手に声が届かないのだろう。大変そうだとは思いつつ、振り返らずに目的地を目指す。
「おい、無視するなよ。デュエルだ!」
今度は、三度目の声が聞こえてきた。相変わらず、僕の真後ろからである。心当たりは微塵にもないが、この少年のお目当ては僕なのだろうか。無視するのも悪い気がして、恐る恐る後ろを振り返る。
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