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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。5/1は恋のはじまりの日だと聞いて。TF主くんはルチへの好意を自覚した日を答えられるけど、ルチは答えられないという話です。

    ##TF主ルチ

    恋のはじまりの日 洗面所を出ると、真っ先にリビングへと向かった。少し肌寒い廊下を通ると、リビングへと青年を呼びに行く。僕にはあまり関係はないが、彼は寒暖差に弱いらしい。ソファの上には座る青年は、膝の上に毛布を被っていた。
    「上がったよ」
     声をかけると、彼は生返事を寄越してきた。チラリとこちらを見ただけで、動く気配は少しもない。僕が隣に座っても、その視線はテレビに向けられたままだった。何を見ているのかと視線を移すと、テレビのバラエティ番組が流れている。
     画面の中では、一組の男女がインタビューを受けていた。どうやらカップルであるらしく、交際に至るまでの過程を根掘り葉掘り聞かれている。告白はどっちからといった定番の質問から、好きになったきっかけまで、内容は多岐に渡った。
     ソファの上で足を組みながら、僕は呆れのため息をつく。人間というものは、どれだけ下賎な生き物なのだろう。他人の恋愛模様を眺めて、青春だなどと騒ぐだなんて。僕には理解のできない文化だった。
     呆れながら隣を見ると、青年はテレビに夢中になっていた。この男も恋愛話が好きなようだから、この手の特集は面白いのだろう。口元はだらしなく緩んでいるし、視線は画面に釘付けになっている。その姿はどこか間抜けで、からかってやりたくなった。
    「君は、こういう番組が好きなのか? 他人の恋愛話なんか聞いても、面白くもなんともないだろ」
     呆れながら言うと、彼は僕の方へと視線を向けた。嬉しそうに口角を上げると、なぜか自慢気な声色で語り始める。
    「これは、ただの恋愛インタビューじゃないんだよ。それぞれのカップルの、恋が始まった日の思い出を聞いてるんだ。五月の一日は、恋が始まる日なんだって」
    「ふーん」
     説明を聞いても、僕には何が面白いのか分からなかった。生返事を返しながら、ぼんやりとテレビ画面を見つめる。インタビューを受けているカップルが、照れながらお互いの好きなところを答えていた。いかにもな幸せオーラに、見ているこっちが恥ずかしくなった。
    「あのさ、ルチアーノに聞きたいことがあるんだけど」
     しばらくの間を置いてから、彼は思い付いたように言う。勿体ぶった前置きから、色恋の話であることはすぐに分かった。
    「なんだよ」
     テレビに視線を向けたまま、僕は淡々と言葉を吐く。声が尖ってしまったのは、嫌な予感がしていたからだ。威嚇に近い返事だったが、彼は怯むことなく言葉を続ける。
    「ルチアーノは、どういう経緯で僕を好きになったの?」
    「はあ?」
     とんでもない質問に、僕は大きく口を上げてしまった。彼は、何を勘違いしているのだろう。僕が彼の要求を受け入れたのは、そんな甘い理由ではないのに。
    「僕は、別に君を好きになったわけじゃないぜ。恋人になってほしいって言われたから、付き合ってやってるだけだ」
     思うままを答えるが、彼は納得しなかった。予想通りというような顔で、やはり自慢げに言葉を続ける。
    「それは、ルチアーノが納得するための口実でしょ。本当は僕のことを好きだし、好意があるからえっちだってさせてくれるんだよね」
    「それは……!」
     行為のことを口に出され、僕は言葉に詰まってしまう。人間の文化においては、性行為とは愛し合う相手と行う愛情表現なのだ。性行為を受け入れていると言えば、愛情を向けているも同義になってしまう。
    「それに、ルチアーノは他の子に嫉妬もするよね。僕のことを好きじゃないと、嫉妬なんてできないんじゃない?」
     畳み掛けるように言われ、僕の言い分はさらに弱くなった。動揺を取り繕うように、無意味とも思える言葉を続ける。
    「嫉妬なんてしてないよ。上司のことを蔑ろにする部下には、罰を与えるのが鉄則だろ」
    「そうかなあ。僕には、嫉妬してるように見えたけど」
     揚げ足を取るような語調で、彼は淡々と言葉を続ける。苛立ちを込めた瞳で睨むと、少しだけ大人しくなった。変なことを言うから、こういう目に合うのだ。小さく鼻を鳴らしてから、僕は視線を他へと移す。
     僕は、この青年のことが好きだ。認めたくはないけれど、僕の中には明確な好意が眠っている。彼を失うことが恐ろしいし、誰かに奪われるなんて許せない。それほど強い感情を持ってしまったのは、彼が僕を愛しているからだ。
     僕の感情は、正しい愛情などではない。心に空いた空白の穴埋めを、彼への執着で満たそうとしているだけだ。こんなものは恋愛とは言えないし、ロマンチックな好意でもない。

    ──ルチアーノに、僕の家族になってほしい

     その言葉を聞いたときに、僕は彼への感情を意識した。彼が発する家族という単語に、言い様の無い魅力を感じてしまった。僕のメモリーに眠る記憶は、家族という存在を求めてしまう。愛してくれる者の存在を、側から離したくないと思ってしまうのだ。
     自分の感情を自覚する度に、僕は言葉に詰まって唇を噛む。彼の純粋な愛に比べたら、僕の執着は何よりも醜いと思った。『好き』や『愛している』なんて、到底口に出せるわけがない。僕の抱える執着は、彼には身に余ることなのだから。
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