手相 お風呂から上がると、ルチアーノが待ち構えていた。ベッドの上に胡座をかき、入口の方を向いたまま雑誌を広げている。部屋に入ってきた僕に気がつくと、にやりとした笑顔で片手を上げた。
「おい、ちょっと来いよ」
呼ばれるがままに、僕はルチアーノの側に歩み寄った。隣に腰を下ろすと、手元の雑誌を眺めながら問いかける。
「どうしたの?」
「手を貸しな。手相を見てやる」
そう言うと、彼は強引に僕の右手首を掴んだ。力一杯引き上げると、手のひらに視線を向ける。よく見ると、さっきまで見ていた雑誌のページは、手相占いに関しての記事だったらしい。雑誌を無造作に投げ捨ててから、僕の手のひらを注視した。
「ふーん。君は、生命線がはっきりしてるんだな。これは、図太くて活発なやつの証だぜ。運命線もはっきりしてるから、猪突猛進って感じなんだろうな。……へえ、感情線は短いのか。君が冷静だなんて、到底信じられないぜ。あと、頭脳線も短いな。お手本のような猪だ」
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