熱 ベッドの縁から腰を上げると、僕は窓の方へと向かった。レースのカーテンを捲り上げると、少しだけ開いていた窓を閉じる。鍵を閉めたことを確認すると、今度は布のカーテンに手をかけた。真ん中に隙間ができないように、丁寧な手付きで窓を覆う。
戸締まりの確認を終えると、今度は部屋の入り口へと向かった。よくある形のスイッチを押すと、一気に室内が薄暗くなる。慣れない暗闇に惑わされながらも、記憶を頼りにベッドの上へと戻っていく。ルチアーノが寝ていることを確かめると、ぶつからないように隣に寝転がった。
少しずつ判然としてくる視界の中で、僕は避けていた布団に手を伸ばす。季節は夏へと変化していたから、掛け布団は薄い布一枚だった。ここまで涼しくしているというのに、布の中には熱が籠っている。潜り込んでから数分もしないうちに、布団の中は蒸風呂状態になった。
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