Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

    文章や絵を投げます

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💕 🍇 🐥 🍣
    POIPOI 476

    流菜🍇🐥

    ☆quiet follow

    TF主ルチ。TF主くんとルチが宇宙人について話しているだけの話です。未来のシティでは宇宙人の存在は解明していたのだろうか。

    ##TF主ルチ

    宇宙人 ルチアーノがお風呂に向かうと、そこからは僕一人の時間だ。彼が部屋を開けているこの一時間だけは、僕も気兼ねなく好きなことをできるのだ。普段ならからかわれるようなゲームだって、この時間であれば笑われることがない。積んでいたカードの整理を始めても、退屈だと文句を言われることがないのだ。
     とはいえ、僕も忙しいわけではないから、毎日のように目的があるわけではない。何もやることが思いつかない日は、リビングの椅子に座ってテレビを見ていた。一時間という時間は長いようであって、過ぎてしまえば妙に短い。ぼんやりとテレビを見ていれば、すぐに呼ばれる時間になってしまうのだ。
     手早く夕食の片付けをしてから、僕はソファに腰を下ろす。転がっていたリモコンを手に取ると、適当にチャンネルをザッピングした。テレビには番組表という便利機能がついているが、僕はあまり使わない。番組の真の面白さは、実際に見てみないと分からないのだ。
     何度かチャンネルボタンを押していると、おどろおどろしいBGMが流れてきた。画面に映るシーンは走っている人の視点なのか、周囲の景色が手前へと流れている。暗くて緑の多いところを見ると、森かどこかなのだろう。画面の右上に表示されたテロップを見ると、『UFO体験談』と書かれていた。
     僕はリモコンを隣に置くと、食い入るように画面を見つめた。この番組は、宇宙人をテーマにしたオカルト番組らしい。UFOや宇宙人というものは、遥か昔から存在する人類のロマンである。実在するか分からないという不確実性も、人の心を引き付けるのだろう。
     森の中を逃げていた語り手は、不意に眩い光を見た。恐る恐る視線を上げると、そこには巨大な円盤が浮かんでいる。恐怖に動けなくなっている語り手の前で、光はさらに眩しさを増していく。光に包み込まれるように、意識が遠くなっていった。
     気がついた時には、語り手は無機質な部屋に横たわっていた。真上には、人間そっくりな姿をした白衣の男が立っている。語り手は手術台のようなものに乗せられていて、身体を縛り付けられているらしい。左腕に何かが触れている感触がするが、痛みは一切感じなかったという。恐怖に身体を動かそうとすると、目の前の男と目があった。
     その後の記憶は、一切残っていないのだそうだ。気がついたら、語り手は家の前に立っていた。何かされたはずの右腕も、何も違和感を感じたりはしていない。家に帰って家族に話しても、誰も信じてくれなかった。
     転機が訪れたのは、語り手が成人してからだという。検査でレントゲン写真を撮った時に、手元に影が映っていたのだ。不思議に思った医者は、語り手に心当たりがないかと尋ねる。その時に思い出したのが、幼い頃の記憶だったのだという。
     あれは、宇宙人の仕業だったのだと、語り手は信じているらしい。自分は宇宙人に拐われて、手元にチップを埋め込まれたのだと、本人はインタビューで語っていた。今でも手元には、宇宙人に埋め込まれたチップが残っているらしい。証拠のレントゲン写真も、家にしっかりと保管されていた。
     エピソードが終わると、番組は次のコーナーへと移っていく。次に流されたのは、どこかから集められたらしいUFO映像だった。視聴者投稿らしい賑やかな声の入った映像から、外国の軍が撮影したカメラの映像なんかも入っている。どれも光の点がチラチラと舞っていたり、眩い光が横切ったりしている。映像が流れた後には、専門家が内容の解説をしていた。
     光の飛び交う画面を眺めながら、僕は頭の隅で考える。こんなに科学が発達したのに、UFOは一切解析されていないのだ。今の科学でも分からないということは、本当に地球外の物体なのかもしれない。そう考えると、何とも言えないロマンを感じた。
     そんなことを考えていると、背後から足音が聞こえてきた。お風呂から出てきたルチアーノが、僕の隣へと近づいてくる。チラリとテレビに視線を向けると、彼は呆れたように言った。
    「上がったよ。……なんだ。また、変な番組を見てるのか」
    「変な番組じゃないよ。ただのUFO特集なんだから」
     答える僕を横目で眺めながら、彼はその場に腰を下ろす。長い髪がサラサラと揺れて、甘い匂いが漂ってきた。大袈裟な態度で足を組んでから、ルチアーノはテレビへと視線を向ける。
    「変な番組だろ。ただの見間違いや作り話を寄せ集めて、特集まで組んでるんだから。UFOや宇宙人なんてものは、この世には存在しないのにな」
     淡々と言うルチアーノを見ていたら、僕は対抗意識が沸いてきてしまった。何を隠そう、僕は宇宙人の存在を信じているのである。宇宙にはたくさんの惑星が存在するのだから、どこかに生命体が住んでいてもおかしくない。未来人のルチアーノが存在しているのだから、絶対にいるはずだと思っていた。
    「ルチアーノは、宇宙人のことを信じてないの? 宇宙は星で溢れてるんだから、どこかにはいると思わない?」
     僕が尋ねると、ルチアーノは呆れたようにため息をつく。全く信じていない様子で、僕の顔へと視線を向けた。
    「信じるわけないだろ。宇宙に高度な知性を持った生命体が存在するなんて、あまりにも非科学的だ。それがしょっちゅう宇宙を渡ってくるなんて、絶対にあり得ないね」
     僕の言葉を封じ込めるように、ルチアーノは力強く言葉を吐く。絶対にと断言しているところに、なんだか不思議な感じがしてしまった。僕にとっては未来人でロボットのルチアーノも、宇宙人と同じくらい非科学的なのだ。非科学的な存在が非科学的な存在を否定しているのは、不思議を通り越して滑稽でもある。
    「僕にとっては、ルチアーノも非科学的なんだけどな。きっと、違うものなんだろうね」
     思ったままを語ると、彼は不満そうに口を尖らせた。毎度のことだが、彼を非科学的なものとして扱うのは、無礼な行為になるらしい。機嫌を損ねたように顔を背けると、トゲを隠さない声で言う。
    「当たり前だろ。僕は科学的技術を元に作られた、高性能のロボットだ。観測も証明もされていない宇宙人なんかと同じにしないでくれ」
     彼の言葉を聞きながら、僕は別のことを考えていた。彼の生きていた世界でも、宇宙人は謎の存在だったようだ。未来の科学技術でも分析できないなんて、すごく不思議な現象である。
    「未来でも、宇宙人の謎は解明されてないんだね。ロマンがあるなぁ」
     小さな声で呟くと、ルチアーノは呆れたように息をついた。それ以上の反論が面倒だったのか、黙ったままテレビに視線を向けている。これ以上機嫌を損ねるのも嫌だから、僕も黙ってテレビを見ていた。
    「それにしても、デュエルモンスターズの精霊の力っていうのも、非科学的な存在だよな」
     しばらくの沈黙の後に、ルチアーノはそんなことを語る。彼が示しているのは、龍可が従えるカードの精霊たちのことだろう。ルチアーノが彼女にデュエルを挑んだ時に、精霊たちの妨害を受けたと言うのだ。僕もその存在を感じたことはあっても、実際に目にしたことは一度もない。僕たち一般人にとっては、それは非科学的としか言い様のないものだった。
    「世の中には、不思議なものが溢れてるんだよ。ルチアーノの知らないことも、まだまだあるかもしれないよ」
     彼の発言に答えるように、僕もぽつりと言葉を漏らす。隣からは、何も言葉が返って来なかった。UFOの番組は終わりに近づいていて、スタジオの出演者たちが思うままをしゃべっている。最後の映像を見届けてから、僕は入浴の準備に取りかかった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🌌🚀🌟💞💞💞
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works