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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ+龍可。TFのルチはシグナーの中では龍可ちゃんを連れていった時だけ機嫌が上がるけど、どういう意図で機嫌が良くなるんだろうと思ったので書きました。微妙にルチ龍可要素を含みます。

    ##TF主ルチ

    機嫌の意味「おい、止まれよ」
     町を歩いていると、不意にルチアーノに手を引かれた。服が真後ろに引きずられて、危うく転びそうになってしまう。慌てて足を止めると、僕はルチアーノに視線を向けた。
    「ちょっと、急に何するの? 転んだら危ないでしょ」
     危険な行動を咎めようとすると、彼は顔を近づけてくる。無理矢理僕の口を塞ぐと、耳元で囁くように言った。
    「静かにしろよ。バレちゃうだろ」
     今度は唐突に距離を詰められて、僕は目を白黒させてしまう。ルチアーノが何を求めているのか、僕にはさっぱり分からなかった。綺麗な顔が目の前まで迫ってきて、心臓がドクンと音を立てる。小さく首を振って思考を切り替えると、距離を取りながら問いかける。
    「だから、急にどうしたの? バレちゃうって誰に? 何があったの?」
     ルチアーノの緊迫した雰囲気に釣られて、僕も声が小さくなってしまう。僕に意図が伝わったことで、彼も警戒を解いたようだった。口元に置いていた手を離すと、通りの向こうに指先を向ける。
    「見ろよ。あそこに、双子の妹がいるんだ。兄の姿はないみたいだぜ」
     彼の言葉を聞きながら、僕も同じ方向に視線を向ける。人々が行き交う通りの奥に、見慣れた少女の姿が見えた。緑の髪をツインテールに結んで、普段の洋服に身を包んだ龍可である。ルチアーノが示した通り、隣に龍亞の姿はなかった。
    「本当だ。一人みたいだけど、何してるんだろう」
     龍可の様子を眺めながら、僕は小さな声で答える。別にボリュームを落とす必要はないのだが、ついつい小さくなってしまうのだ。わざわざ声をかけてきたということは、顔を合わせたく無いのだろう。距離はかなり離れているが、用心するに越したことはない。
    「気になるのか? なら、直接聞きに行けばいいじゃないか。龍可一人なら、面倒なことにはならないだろ」
    「えっ?」
     しかし、彼の口から零れたのは、予想もしない言葉だった。真意を理解できなくて、思わず間抜けな声を上げてしまう。ルチアーノはシグナーを毛嫌いしているし、龍亞と龍可の双子には近寄りたがらないのだ。彼らが近くにいるときは、わざわざ遠回りするくらいである。
    「君は、龍可のことが気になるんだろ? 向こうも暇してるみたいだから、ちょっとからかってやろうぜ」
     相変わらず楽しそうな笑みを浮かべながら、ルチアーノは僕に囁いてくる。いかにも何かを企んでる顔だが、僕に断る理由はなかった。こちらから見える龍可の様子は、どう見ても普通ではないのだ。さっきから同じ場所に立っていて、周囲をキョロキョロと見回している。
    「からかうって、変なことはしないでよ。何かあったら、困るのは僕なんだから」
    「安心しなよ。相手がシグナーだからっていって、意味もなく傷つけたりはしないからさ。ちょっとからかうだけだよ」
     その『ちょっと』が心配なのだが、口に出すことはできなかった。ここで機嫌を損ねてしまったら、それこそ何が起きるか分からない。今僕にできることは、彼の機嫌を損ねずに龍可と会わせることだけなのだ。
     大通りの人混みを掻き分けると、僕たちは龍可の元へと向かう。僕を先導して歩くルチアーノは、いつもよりも足取りが軽かった。なぜかは分からないが、今日は妙に機嫌がいいみたいだ。
     龍可に声をかけたのも、当のルチアーノ自身である。彼女の正面に回り込むと、楽しそうな声色で挨拶をした。
    「やあ、龍可。こんなところで何してるんだい?」
     その声を聞いて、龍可は驚いたように目を開いた。目の前の人物を捉えると、少し警戒した様子で返事をする。
    「ルチアーノくん? どうして、ここに……?」
    「今日はこいつとタッグを組んでいてね。練習の途中に通りかかったら、君の姿が見えたんだ。どうしたんだろうと思って、声をかけに来たんだよ」
     妙に大人びた口調で、彼は言葉を並べていく。少し演技じみているのは、優等生を演じているからだろうか。彼の落ち着いた言葉遣いを見て、龍可も少し警戒を解いたようである。ルチアーノに向かい直ると、素直に理由を語ってくれた。
    「わたしは、龍亞を待っていたの。ここで待ち合わせするって言ってたのに、全然来ないのよ。もう待ちくたびれちゃった」
     どうやら、龍可がここに佇んでいたのは、龍亞との待ち合わせが理由らしい。しきりに周囲を気にしていたのは、龍亞の姿を探していたのだろう。二人らしいやり取りだった。
    「そうなんだ。君の兄は、本当に頼りがいがないんだね。妹を待たせるなんて、何を考えてるんだか」
    「ルチアーノ」
     辛辣な言葉を吐くルチアーノを、僕は慌てて引き剥がす。彼は龍亞に対抗意識を持っているから、すぐに喧嘩を売ってしまうのだ。一歩前に出ると、ルチアーノの代わりに龍可に謝る。
    「ごめんね。今日のルチアーノは、ちょっと饒舌になってるんだ。龍可と喋りたいって言ったのも、ルチアーノの方なんだよ」
     軽く事情を説明していると、横から勢いよく手を引かれた。強い力で引っ張られて、僕は龍可の前から離される。隣に視線を向けると、ルチアーノが不機嫌な表情を浮かべていた。
    「余計なことを言うなよ。君は黙ってな」
     辛辣な言葉を告げると、彼は再び龍可の前へと出る。正面から向かい合うと、取り繕った声でこう言った。
    「なあ、龍可。退屈だったら、僕とデュエルしないかい?」
     突然の申し出に、龍可は両目をぱちくりと開いた。不安そうに僕たちの顔を見ると、探るような声色で問う。
    「ルチアーノくんと、デュエルするの? わたしが?」
    「そうだよ。君は暇を潰せるし、僕にはいい経験になるからね。デュエルって言っても、傷つけるようなことはしないから安心して」
     ルチアーノの言葉を聞いて、龍可は迷ったように僕を見上げた。彼には一度騙されているから、不安に思うのも仕方ないのだろう。信じがたい気持ちは分かるが、ルチアーノはメリットの無いことをする子ではないのだ。
    「大丈夫だよ。僕がついてるから」
     僕が声をかけると、ようやく龍可も安心したようだった。ルチアーノと向き直ると、鞄からデッキを取り出す。
    「いいわよ。わたしも、ルチアーノくんとはまた戦いたいと思ってたから」
     大通り横の広場に移動すると、二人はデュエルディスクを構えた。ハンデマッチの意図もあってか、ルチアーノは先攻は龍可に譲った。腕につけたデュエルディスクが作動すると、デュエル開始の合図を送る。龍可が手札に指をかけると、二人のデュエルが始まった。

     デュエルの結果は、ルチアーノの勝利に終わった。いくらシグナーの力を持っているとはいえ、シンクロを主軸とした龍可のデッキでは、ルチアーノの戦略に敵わないのだろう。イリアステルとのデュエルは痛覚を伴うから、完全な力が発揮できないのかもしれない。
    「負けちゃった。今日こそは、勝てると思ったのにな」
     デュエルディスクを片付けると、龍可は悔しそうに呟く。ルチアーノに対しては黒星を重ねているから、悔しさもひとしおなのだろう。静かに重ねられる言葉には、重い響きが混ざっていた。
    「ありがとう。いいデュエルだったよ。じゃあ、僕はもう行くね」
     対するルチアーノはというと、淡々とした態度を取っていた。いつものように煽ることもなく、龍可の前から背を向ける。僕の腕を掴むと、身体を引きずるように歩き出した。
    「もう行っちゃうの? もう少し、ここにいてもいいのに」
     後ろから龍可の声が聞こえて、ルチアーノはその場で足を止める。くるりと後ろを振り向くと、面倒臭そうな声で言った。
    「君の過保護なお兄さんが、すぐそこまで来てるんだよ。見つかったら厄介だから、僕はここでお暇するよ」
     一方的に言葉を投げると、再び前へと歩を進める。よほど顔を合わせたくないのか、少し早足になっていた。龍可には自分からデュエルを仕掛けに行ったのに、龍亞に対しては大違いである。そんなことを考えて、僕はふと疑問を感じた。
    「ねえ、ルチアーノ」
    「なんだよ」
    「ルチアーノって、龍可のことが好きなの?」
    「はあ?」
     僕の問いを受けて、ルチアーノは驚いたように目を開いた。真っ直ぐに僕の顔を見上げると、呆れたような声色で言う。
    「なんでそうなるんだよ。君の思考回路は小学生なのか?」
     心底あり得ないといった態度を見て、今度は僕が苦笑いを浮かべた。言葉選びが悪かったのか、変な方向に勘違いされてしまったようである。少し思案を巡らせると、今度は言葉を選びながら尋ねた。
    「違うよ。そういう好きじゃなくて、龍可の前だと機嫌がいいから。どうしてかなって思って」
     今度は、ルチアーノにも真意が伝わったようである。少し表情を緩めると、彼は楽しそうに答えた。
    「そりゃあ、面白いからに決まってるだろ」
    「面白い? 何が?」
     大雑把な答えが返ってきて、今度は僕が口を開けてしまう。彼が退屈を嫌うことは知っているが、そんな理由でシグナーに干渉することはデメリットでしかないはずだ。わざわざ危険を犯す理由が、本当に『面白い』だけなのだろうか。
    「僕が龍可と話してると、龍亞は必ず嫉妬するだろ。過保護なまでに心配するし、引き剥がそうとして割り込んでくるんだ。勝てもしないデュエルを仕掛けてきて、悔しそうな顔をするんだよ。こんなに面白いものはないさ」
     ケラケラと笑うルチアーノの横顔には、打算のようなものは一切見えない。この男の子は、心の底から龍亞の反応を楽しんでいるみたいだ。彼らしいと言えば彼らしいのだが、褒められたことではない。何よりも、巻き込まれる龍可に申し訳ないなかった。
    「ルチアーノ」
     僕が声をかけると、ルチアーノは不満そうにこちらを見た。眉を元の位置に戻すと、少し尖った声で言う。
    「なんだよ」
    「あんまり、やりすぎないようにね」
     こうして一緒にいると忘れがちだが、彼は神の代行者だ。他人を傷つける能力については、並みの人間では敵わないほどに長けている。本人は遊びのつもりでも、相手に怪我をさせてしまう可能性があるのだ。
    「それくらい分かってるよ。僕を誰だと思ってるんだ」
     わざとらしく鼻を鳴らすと、ルチアーノは不満そうに言葉を返す。彼だからこそ心配なのだけれど、一応伝わってはいるみたいだ。まあ、彼も権力者の一人なわけだし、無駄な揉め事は起こさないだろう。とりあえず、僕が責任を負うことはなさそうだ。
    「ならいいけど……」
     小さな声で呟くと、僕は前に視線を向ける。大通りの外へと歩を進めながらも、頭の中ではルチアーノの言葉を繰り返していた。彼は、龍亞をからかえるからという理由で龍可に近づいているらしい。龍可はそんなルチアーノのことを、どのように捉えているのだろう。
     考えたところで、彼女の真意など分からない。尋ねてみようにも、不器用な僕には難しそうだった。結局、ルチアーノのいたずらの前では、僕という存在は無力なのだ。変な誤解が起きないことを、心の底から祈るしかなかった。
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