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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    TF主ルチ。TF主くんが夕方に寝落ちして夜に眠れなくなる話です。

    ##TF主ルチ

    寝落ち リビングに足を踏み入れると、僕は真っ直ぐにソファへと向かった。乱雑に下げていた荷物を置くと、ソファの座面にダイブする。ぼすんと大きな音を立てて、骨組みが軋む音が響いた。シートに顔を押し付けると、僕は大きく息をつく。
    「疲れた。一日中歩き回ったから、足が棒みたいだよ」
     うつ伏せに寝転がったまま、僕は喉から言葉を吐き出す。遅れて部屋に入ってきたルチアーノが、呆れた調子でため息をついた。荷物を置いて僕の隣に歩み寄ると、足音を止めて呟く。
    「歩いたって言っても、隣の町に行ってデュエルをしただけじゃないか。人間っていうのは、本当にだらしないなぁ」
     そう語る彼の声は、僕とは比べ物にならないほど余裕に満ちていた。彼にとって、日帰りで済む程度の遠征は、大した負担ではないらしい。僕はここまで疲れているのに、なんだか理不尽な気持ちになる。
    「だらしなくないよ。今日は朝の五時に起きて、隣の町まで行ったんだから。帰りも遅くなったし、人間にとってはハードスケジュールだよ」
     ソファに突っ伏したまま答えると、ルチアーノは楽しそうに笑い声を上げた。ソファの背凭れに腰を下ろすと、笑みを含んだ声で言う。
    「君は帰り道の電車でもぐっすり眠ってたもんな。僕が起こしてやらなかったら、寝過ごして隣町まで行ってたぜ」
    「しょうがないでしょう。疲れてたんだから。それに、大会に出たいって言ったのはルチアーノでしょ」
     横暴な言葉に反論ながら、僕は唇を尖らせる。そもそも、今日の遠征の予定を立てたのは、僕ではなくてルチアーノなのだ。隣町で開かれる大会に参加したいと、彼の方から申し出があったのである。しかも、任務としての側面を含んでいるから、わざわざ電車に乗って出かけると言い出したのだ。
     そんなこんなで、僕は五時起きを余儀なくされた。寝惚け眼のまま支度を済ませ、ルチアーノに誘導されるままに電車に揺られたのだ。移動には片道二時間かかったが、そのうちの半分は眠っていたくらいだ。しかも、そうまでして連れていかれた隣町の大会は、シティでは月一ペースで開催されているような小規模なものだったのである。
    「仕方ないだろ。僕たちのことを嗅ぎ回ってる人間に、後をつけられてたんだから。僕がただのデュエリストだってことを証明するには、大会に出てる姿を見せるしかなかったのさ」
    「だからって、わざわざ隣町まで行くことないでしょ。ルチアーノは横暴だなぁ」
     小声で文句を垂らしながらも、僕は半ば諦めていた。彼が気まぐれで僕を連れ回すのは、今に始まったことではないのだ。それが彼の性格なのだから、大人しく受け入れるしかない。そもそも、彼の立場を考えると、付き合ってもらえるだけ幸せなのだ。
     返事が返って来なかったから、僕はゆっくりと目を閉じる。疲労で身体が重くなって、目を開けていることすら億劫だったのだ。目蓋を閉じたまま寝転がっていると、意識が微睡みに溶けていく。うとうとと船を漕いでいると、頭上から声が飛んできた。
    「おい。起きろよ」
     ルチアーノの甲高い声によって、僕の意識は現実へと引き戻される。再び微睡みに身を任せると、僕は小さな声で答えた。
    「もうちょっと休ませて……」
     しかし、ルチアーノは、僕を休ませてなどくれないようだった。今度は身を乗り出すと、とんとんと背中を叩いてくる。無視してソファに突っ伏していると、再び声が聞こえてきた。
    「おい、起きろって」
     再び声が聞こえてきて、僕は思わず顔をしかめる。丸一日ルチアーノの付き添いをしたのだから、少しくらい休ませてくれてもいいだろう。沸き上がる腹立ちを抑えると、なんとか冷静に言葉を返した。
    「もう少し……」
     ソファの上にうつ伏せになったまま、僕は眠気に身を任せる。ルチアーノが身体を小突いてきたが、目を開けたりはしなかった。しばらく声をかけた後に、彼は呆れたようにソファから降りる。足音を立てながら遠ざかると、彼は突き放すような声で言った。
    「もう起こさないからな。どうなっても知らないぞ」
     その言葉を最後に、ルチアーノは部屋を後にする。足音が聞こえなくなると、僕はゆっくり体勢を崩した。寝返りを打って横向きになると、眠気に導かれるままに目を閉じる。しばらくすると、意識は眠りの世界に落ちていった。

     次に目を開いた時、自分がどこにいるのか分からなかった。大きく目を見開くと、身体を起こして周囲を眺める。僕はソファの上に横たわっていて、お腹の上には毛布が敷かれている。時計に視線を向けると、夜の九時を示していた。
     頭をフル回転させると、直前の記憶を呼び起こす。確か、大会を終えて家に帰って、そのままソファで眠ってしまったのだ。ルチアーノが起こそうとしてくれたけど、僕の意識は眠気に勝てなかった。恐らく、お腹の上に乗っていた毛布は、彼が風邪を引かないようにかけてくれたのだろう。
     ゆっくりと身体を起こすと、僕はキッチンの方へと向かう。夜ご飯も食べずに眠ったせいで、お腹が空いて仕方がなかった。冷凍庫から冷凍食品を取り出すと、電子レンジに放り込む。喉もカラカラに渇いていたから、冷えた麦茶を流し込んだ。
     電子レンジの音が聞こえると、中から食べ物を引っ張り出す。舌を焼く熱さと格闘しながら、ペロリと夕食を平らげた。空腹が収まると、今度は入浴の準備に移っていく。
     新しい寝間着を取り出そうと、僕は自室へと足を運んだ。ついでに片付けようと、ソファの上の毛布を手に取る。僕の部屋のベッドの上では、ルチアーノがゲーム機を手に寝転がっていた。僕の足音に気がつくと、ちらりとこちらに視線を向けた。
    「ようやく起きたのか。ぐっすり眠ってたもんな」
     タンスを開ける僕を横目に、ルチアーノが呆れたように言う。畳んだ毛布を見せると、僕は彼に尋ねた。
    「この毛布は、ルチアーノがかけてくれたの?」
    「そうだよ。あんなところで眠って、風邪を引いたら大変だからな。僕に感謝してくれよ」
     小さく鼻を鳴らしながら、ルチアーノは自信満々な声で言う。わざとらしく胸を張る姿を眺めながら、僕は素直にお礼を言った。
    「ありがとう。ルチアーノは優しいね」
    「君が身体を壊したりしたら、困るのは僕だからね。人間という生き物は弱いんだ。もっと健康に気を使えよ」
     鋭い言葉が返ってきて、僕は僅かに顔をしかめる。今、このタイミングの僕にとって、それは耳が痛い言葉だったのだ。さっきまでソファの上で眠っていたから、身体は強ばってしまっている。毎日のようにこんなことを続けていたら、身体を壊してしまうだろう。
    「そうだね、気を付けるよ」
     苦笑いを浮かべながら答えると、僕は踵を返して部屋を出る。身体が汗で汚れていたから、早めに身体を流したかったのだ。それに、入浴を済ませた後の方が、身体を休めながら話ができる。真っ直ぐに浴室に向かうと、身体を洗って湯船に浸かった。
     お風呂から上がる頃には、時刻は十一時を過ぎていた。手早く身支度を済ませると、ルチアーノの待つ自室へと向かう。廊下に光が漏れていないところを見ると、電気が消されているみたいだ。音を立てないように部屋に入ると、彼の隣に潜り込む。
     ルチアーノは、既に眠っているみたいだった。隣に横たわる小さな身体からは、微かに寝息が聞こえてくる。肉体的な疲労は感じなくても、エネルギーは尽きるのだろう。彼にも休息は必要だから、スキンシップは遠慮することにする。
     しかし、大人しく眠ろうとしても、僕には眠気が訪れなかった。夕方に寝落ちしてしまったから、脳が満たされてしまったのである。仕方ないから布団に横たわったまま、ごろごろと無意味な時間を過ごす。痺れを切らして布団から出ようとした時、隣から声が聞こえてきた。
    「眠れないのか?」
     小さな声で言葉を発すると、彼はこちらに視線を向ける。暗闇の中に光る緑の瞳が、真っ直ぐに僕を見上げていた。さっきまで眠っていたはずなのに、その目はパッチリと開いている。なんだか申し訳なくなって、僕は謝罪の言葉を告げた。
    「ごめん。起こしちゃった?」
    「エネルギーの充電はしてたけど、眠ってたわけじゃないよ。君がガサガサうるさいから、どうしたのかと思っただけだ」
     淡々とした声で答えると、ルチアーノは僕から視線を逸らす。いつもと変わらない姿を見て、一先ず安心したのだろう。僕は眠れなくなっていただけで、体調を崩していたわけではないのだ。
    「なかなか寝付けなくて、ちょっとごろごろしてたんだ」
     僕が言うと、ルチアーノは呆れたようにため息をつく。くすくすと笑い声を漏らすと、からかうような口調で言った。
    「そんなことだと思ったぜ。君は、子供のように寝落ちしてたからな。いくら起こしても寝続けるなんて、小学生のやることだぜ」
    「そうかもしれないけど、それくらい眠かったんだよ。ルチアーノだって、寝落ちすることはあるでしょ」
    「僕の強制スリープは、君たち人間の寝落ちとは違うんだ。一緒にしないでほしいな」
     僕が反論の言葉を返すと、ルチアーノは不満そうに言葉を返す。口調はトゲトゲしていたものの、機嫌を損ねたわけではないようだ。少しの間を開けると、僕の方へと腕を伸ばしてきた。
    「部下が眠るまで見守るのも、上司の仕事のひとつだよな。僕が側にいてやるから、君は安心して眠りな」
     からかうような声色で言いながら、とんとんと僕の背中を叩く。まるで、親が幼い子供にしてあげる『寝かし付け』のようだった。いや、彼のことだから、そのつもりで声をかけてきたのだろう。自分より一回りも小さい相手に宥められるのは、なんだか少し気恥ずかしい。
     そんな内心とは対照的に、僕の身体は蕩けていった。さっきまでの覚醒が嘘のように、自然と目蓋が落ちてくる。布団の中に顔を沈めると、僕はゆっくりと目を閉じる。それほど時間のかからないうちに、僕の意識は眠りの世界へと溶けていった。
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