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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。冬が近づいても寒そうな格好をしてるルチのために肌着を買ってくるTF主くんの話。

    ##TF主ルチ

    肌着 お風呂から上がると、僕は真っ直ぐに自室へと向かった。タオルで髪の水気を拭いながら、廊下と部屋の境目を踏み越える。冬の気配がすぐ近くまで迫っているようで、室内は少し肌寒かった。早く布団に潜り込もうと、ベッドの縁に足をかける。
     爪先を奥へと押し込むと、指先に固いものが当たった。視線を少し上に向けると、ベッドの上に転がる少年の姿が見える。彼は長い髪を垂らしながら、布団の上にうつ伏せに寝転がっていた。手元で操作しているのは、僕の部屋にあったゲーム機らしい。
    「ねえ、ルチアーノ。布団に入りたいから、そこから降りてもらってもいい?」
     彼の背中に視線を向けると、僕は言葉を選びながら言った。ゲームを操作していたルチアーノが、チラリとこちらに視線を向ける。すぐに視線を戻すと、慣れた手付きでボタンを連打した。どうやら、今は手が離せないらしい。
    「嫌だよ。今はボス戦の最中なんだ。要求なら後にしな」
     尖った声で語るルチアーノを見て、僕は小さくため息をついた。一度断られてしまったら、気が済むまで応じてはくれないだろう。仕方なく布団から足を出すと、彼の隣に腰を下ろす。何気なく身体に視線を向けて、僕はあることに気がついた。
     ルチアーノは、肌着というものを着ていなかったのだ。少し捲れたトレーナーの下からは、真っ白な肌が覗いている。確か、機械の身体を持つ彼は、常日頃から肌着を身につけていないようなのだ。外気が肌寒くなるこの季節でも、彼は平気で肌を露出している。
     そんな姿を見ていると、僕の方が寒さを感じてしまった。彼の背中に視線を向けると、思ったままの言葉を口にする。
    「ねえ。そんな格好じゃ寒くない?」
    「はあ? なんのことだよ」
     再び僕に視線を向けると、ルチアーノは甲高い声で言う。どうやら、当の彼自身は、あまり寒さに意識が向いていないようだ。気にしていないならいいような気もするが、気になるものは気になってしまう。気を取り直すと、僕は言葉を選びながら言った。
    「ルチアーノは、服の下に何も着てないよね。最近は涼しくなってきたし、肌寒くないかなって思って」
     僕の言葉を聞くと、彼は僅かに表情を歪める。距離を置くように僕から離れると、あからさまに冷めた声で言葉を吐いた。
    「なんだよ。君は、そんなところまで見てたのか。人の服の下を気にするなんて、とんでもない変態だな」
     鋭い言葉で問い詰められて、僕は頬を赤く染める。まさか、そんなことを言われるとは思ってもいなかったのだ。慌てて彼から視線を逸らすと、挙動不審になりながらも反論した。
    「違うよ! 偶然目についただけだって!」
     そんな僕の様子を見て、ルチアーノはにやりと口角を上げる。いつの間にか終えていたらしいゲームを放り出すと、からかうような声色で詰め寄ってきた。
    「どうだか。まあ、君の心配は一理あるか。人間の身体の作りは脆いから、冷えただけで風邪を引くんだよな」
     ようやく話が本筋に戻って、僕はほっと息をつく。改めてルチアーノに向き直ると、忠告するように言葉を続けた。
    「そうだよ。だから、ルチアーノも暖かくしておかないと。子供は風の子って言っても、露出には限度があるからね」
    「そんなこと、誰も気にしてないと思うけどな。他人の心配をするくらいなら、自分の心配をするべきだろ」
     ぶつぶつと呟きながら、ルチアーノは布団の上から滑り降りる。何だかんだ言っても、僕からのお願いは聞いていたようだった。軽くなった布団を持ち上げると、その中へと足を押し込む。
    「僕はいいんだよ。ちゃんと肌着を着てるんだから」
     温もりを感じながら答えると、彼は不満そうに頬を膨らます。拗ねたような顔をしながらも、僕の隣に潜り込んだ。
    「それだけじゃ、大した防寒にならないと思うけどな。衣類で防寒したいなら、もっと着込まないと」
     言葉が終わらないうちに、ルチアーノは僕のパジャマの裾を引っ張る。厚い布地が引っ張られて、布団の中でごそごそと音を立てた。そんな彼の手のひらを退かしながら、僕は枕に頭を乗せる。
    「寝るときは布団に入るからいいんだよ。それに、外に出るときはコートを着てるからね」
    「コートなら、僕だって着てるだろ」
     僕の隣に横たわりながら、ルチアーノは不満そうな声で言った。確かに、冬場の彼はコートこそ着てはいるが、その下はいつもの白装束なのだ。冬場に子供が着る服としては、やっぱり物足りないだろう。
    「そうなんだけど、そうじゃないんだよ」
     温もりの中に身体を横たえたまま、僕は小さな声で呟く。隣で聞いていたルチアーノが、呆れたように言葉を吐いた。
    「何が言いたいんだよ。相変わらず、君って変なやつだよな」
     しかし、今の僕には、彼を説き伏せる気力が残っていなかった。布団の暖かさに触れているうちに、眠気がやって来てしまったのだ。ルチアーノの気配を感じながら、僕はそっと目を閉じる。しばらくすると、意識は微睡みの中に落ちていった。

     翌日の午後、僕はショッピングモールを訪れていた。目的はもちろん、ルチアーノの肌着を買うためである。いくら本人が気にしていないとしても、子供を薄着のまま寝かせるのには抵抗があったのだ。万が一機械に異常が起きたら困るし、何よりも、肌が見えると僕がドキドキしてしまう。
     建物の中に足を踏み入れると、真っ先に子供服売り場に向かった。季節の変わり目らしく、通路側に並んでいるのは冬服ばかりだ。一面に並べられたセーターやコートを眺めながら、肌着を探してフロアを彷徨う。ぐるぐると店内を一周して、ようやく目的の一角を見つけた。
     しかし、売り場に辿り着いたはいいものの、僕は伸ばしかけた手を止めてしまった。自分の服しか選んだことのない僕には、子供服の種類が分からないのである。ずらりと並んだ衣類を前に、僕は困りきってしまった。
     僕の目の前に吊るされているのは、長袖の肌着であるようだった。一つ一つパッケージに入った状態で、棚のフックに吊るされている。手にとって確かめてみると、温かい素材でできていると書かれている。布地に模様が印刷されているものもあれば、黒やグレーの無地のものもあった。
     次に僕が手に取ったのは、半袖の肌着である。さっき見たものと同じシリーズで、袖が短く作られているらしい。ベースがさっきのものと同じだから、布地のデザインも全く同じだ。
     一番隅に並んでいるのは、タンクトップタイプの肌着だった。これもさっきまでのものと同じで、暖かい素材で作られているようである。しかし、布地はさっきのものよりも薄く、種類も無地のものしかない。一番無難そうではあるが、即断するには悩む作りだった。
     肌着売り場の前をうろうろしながら、僕は真剣に考え込む。ルチアーノに着てもらえそうな肌着は、いったいどのタイプなのだろう。普段からぴったりした服を着ている彼だから、ラインが出るものは来てくれないかもしれない。だからと言って、タンクトップの肌着を着せるのも、なんだか生々しい気がした。
     しばらく唸り声を発した末に、僕は半袖の肌着を手に取る。シャツのラインに響かないように、一番生地の薄いものにした。これなら、ルチアーノの白装束にも、あまり影響が出なくて済むだろう。裾をズボンに入れてもらえば、露出にドギマギさせられることもない。
     手のひらで隠すように肌着を持つと、いそいそとレジへと向かっていく。別に隠すようなことではないのだが、少し恥ずかしかったのだ。これが恋人に着せるものだという意識が、僕の心を揺さぶるのだろう。端から見た僕は、きっと不審者のように映ったはずだ。
     買い物を済ませ、フロアから離れたときには、僕はすっかり疲れきっていた。高鳴った鼓動を収めるために、カフェの立ち並ぶ一角へと向かう。適当な店舗に入り込むと、紅茶とケーキのセットを注文する。甘味を口にしたことで、ようやく心が落ち着いてくれた。
     いったい、この肌着を見たら、ルチアーノはどんな反応をするだろう。まだ見ぬ彼の言葉を思い描いて、僕は期待に胸を膨らませた。

     その日の夜は、心臓の鼓動が止まらなかった。食事を取っている間も落ち着かなかったし、ソファに座ってお風呂が沸くのを待っている間には、何度も座り直してしまったくらいだ。隠し事が苦手な僕は、ルチアーノに秘密にしていることがあるだけで挙動不審になってしまうのである。特に彼の反応が分からないプレゼントとなれば、僕の心臓は高鳴ってしまう。
     見るともなしにテレビを眺めながら、言葉を発するタイミングを窺う。しかし、彼の平然とした顔を見ていると、どうしても口が動かなかった。僕の方から肌着を渡すなんて、やっぱりセクハラだと思われたりしないだろうか。初めて下着を買ってきた時なんか、彼は顔を真っ赤にして怒ったのだ。
     結局、声をかける決心ができないまま、僕は時間切れを迎えてしまった。キッチンに備えられた給湯器から、お湯張りの終わりを告げるメロディが流れてきたのだ。隣に座っていたルチアーノが、ゆっくりと座面から立ち上がる。くるりと僕の方を振り返ると、彼は淡々とした声で言った。
    「で、用件はなんだよ」
    「え?」
     彼の言葉の意味が分からなくて、僕はぽかんと口を開ける。そんな僕を斜め上から見下ろすと、彼は楽しそうに口角を上げた。
    「君は、ずっと何かを言おうとしてただろ。平静を装ってるつもりかもしれないけど、そんな態度じゃバレバレだぜ」
     にやにやと笑う彼の表情を見て、ようやく彼の意図に気がついた。彼は、僕が口を開こうとしていることを知りながら、わざと知らんぷりをしていたのである。自分ですら分かるほどに緊張しているのだから、ルチアーノが気づかないはずがない。僕が声をかけるタイミングを窺っているのを、横でニヤニヤしながら眺めていたのだ。
    「もう、分かってるなら、知らんぷりしないでよ。こっちは、話しかけていいのか分からなかったんだから」
     頬を赤く染めながら、僕は反論の言葉を並べる。そんな僕の様子を見て、ルチアーノは楽しそうにきひひと笑った。意地悪な笑いを保ったまま、わざとらしく僕との距離を詰めてくる。顔を近づけると、からかうような声色で言った。
    「そんなもの、気が向いたときに切り出せばいいだろ。聞かれないと話もできないなんて、それこそお子様のやることだぜ」
     正面から言葉を封じられて、僕は黙って下を向く。彼の語ることは、大方その通りだったのだ。ルチアーノのこととなると、僕は遠慮して何も言えなくなってしまう。彼を怒らせたり嫌われたりすることに、恐怖の感情を覚えてしまうのだ。
    「ほら、用があるならとっとと言いな。今さら変なことを言い出したくらいじゃ、僕は引いたりしないんだからさ」
     そんな僕の心中を読んだかのように、ルチアーノがそんな言葉を口にする。そこまで言われてしまったら、逃れることなどできそうになかった。どちらにしても肌着は渡すつもりだから、先か後かの違いでしかない。覚悟を決めると、僕はようやく口を開いた。
    「ルチアーノに、渡したいものがあるんだ」
     そう前置きすると、僕はリビングの収納棚へと向かう。一番上の引き出しを開けて、スーパーのレジ袋を引っ張り出した。中に入っているのは、買ったばかりの肌着である。少し透けているその袋を手に、ルチアーノの元へと歩いていく。
    「お風呂から上がったら、パジャマの下にこれを着てほしいんだ。やっぱり、寒そうな格好だと気になるから……」
     小さな声で弁明しながら、僕は袋を差し出した。正面に立っていたルチアーノが、片手を伸ばしてそれを受け取る。テープを切り裂いて口を開けると、中のパッケージを引っ張り出した。
    「なんだ、これ?」
     折り畳まれた布の塊を見て、彼は怪訝そうに眉を寄せる。これまで肌着を着ていなかった彼には、この手の衣類が分からないらしい。乱雑な仕草でパッケージを破ると、両手で中の布地を開いた。
    「これは、服の下に着るための服だよ。身体のラインを隠したり肌を隠したりするのと、寒さ対策のために着るものなんだ」
     僕が説明している横で、ルチアーノは肌着を裏返している。パッケージに視線を落とすと、淡々とした声で言った。
    「ふーん。人間ってのは、面倒臭い生き物なんだな。身体のラインが見えたところで、生活に支障はないだろ」
     彼の言葉を聞きながら、僕は再び言葉を探す。彼が言っている身体のラインというものは、僕が想像しているのと同じものなのだろうか。うっかり変なことを言ってしまったら、今度こそ引かれかねないのだ。
    「そんなこと言わないでよ。シャツの見た目に気を使うのも、人間の社会のマナーだよ。ルチアーノだって人間と同じ服を着るなら、ちゃんとマナーを守らなきゃ」
    「確かに人間の服は着てるけど、好き好んで着てるわけじゃないんだぜ。君が贈り物として貢いでくるから、仕方なく着てやってるんだ」
    「そうだとしても、ちゃんと肌着は着てよね。無防備に素肌を見せてたら、危ない人に目をつけられちゃうかもしれないんだから」
     僕がそう言うと、ルチアーノはにやりと口角を上げた。僕に顔を近づけると、誘惑するような声色で言う。
    「やっと正体を表したな。遠回りな言葉を並べてたけど、本当はそれが目的だったんだろ。君は、僕が他の人間に見初められないか、心配で仕方ないんだよな」
     結局、ルチアーノの前では、僕はいつもこうなのだ。彼の望んだ方へと会話を誘導され、いつの間にか揚げ足を取られてしまう。抵抗をしても仕方がないから、僕は大人しく言葉を返した。
    「そうだよ。ルチアーノが悪い人に目をつけられないか心配なんだ。だから、ちゃんと肌着を着てきてね」
    「ひひっ。君がそこまで言うなら、特別に着ておいてやるよ」
     楽しそうに笑い声を上げながら、ルチアーノはリビングから去っていく。後に取り残された僕は、お腹から大きく息を吐いた。少し話をしただけなのに、身体がずっしりと重かった。
     再びソファに腰を下ろすと、僕はテレビへと視線を向ける。内容は頭に入ってこなかったが、さっきまでのような気の重さはなかった。ルチアーノに服を渡したことで、僕の気持ちも楽になったのである。後は、お風呂から上がってきたルチアーノが、肌着を着ていることを確かめるだけだ。
     一時間ほど時間を潰していると、背後から足音が聞こえてきた。ルチアーノの気配を感じて、思わず後ろを振り返ってしまう。正面から目が合うと、彼は呆れたように口を開いた。
    「なんだよ。今日に限ってすぐに振り向くなんて、僕のことを待ってたのか?」
     正面から図星を突かれて、僕は頬を赤く染めた。僕が何を考えているかも、ルチアーノはお見通しなのである。僕が言葉を探していると、彼はいたずらっぽく口角を上げた。
    「図星なんだな。全部顔に出てるぜ」
     からかうような声で言うと、僕の隣へと歩いてくる。こっそりと姿を確認するが、服の下の様子は分からなかった。それもそのはず、彼の冬の寝間着は、厚手のトレーナーなのである。身体のラインが出ることもなければ、服の裾も見えていないのだ。
    「さっきから、僕のことをじろじろ見すぎだぞ。そんなに服の下が気になるのか?」
     僕の隣に腰を下ろすと、ルチアーノは耳元で囁く。誘惑するような際どい言葉に、心臓が冷たくなる思いがした。冷や汗を流しながらも、そっと彼の前から視線を逸らす。凍りついた喉を動かすと、なんとか言葉を絞り出した。
    「別に、そういうわけじゃないよ。ただ、着てくれたのかなって思っただけで……」
     しかし、そんなごまかしの言葉じゃ、ルチアーノは許してくれないのだ。きひひと甲高い笑い声を上げると、すぐにその場から腰を上げる。僕の前に仁王立ちになると、見せつけるようにトレーナーに手をかけた。
    「嘘なんかつかなくてもいいんだぜ。本当は、こうやって見せてもらいたかったんだろ」
     挑発的な言葉と同時に、彼は裾を持ち上げる。服の下の様子が、僕の目の前に晒し出された。昨日まで素肌だったそこは、真っ白な肌着が覆われていた。つるつるとした生地の表面が、電灯に照らされて光っている。
    「ちゃんと着てくれたんだね。それなら、昨日よりは暖かくなってるかな」
     ルチアーノの様子を眺めながら、僕は安堵の息をつく。服を着てくれたことに安心して、動揺する暇もないくらいだった。そんな僕の反応がつまらなかったのか、ルチアーノは不満そうに唇を尖らせる。簡単に裾を直すと、再び僕の隣に腰を下ろした。
    「なんだよ。もっと慌てろよ」
     拗ねたように言葉を吐く彼を見ながら、僕は苦笑いを浮かべる。とにかく、肌着を着てくれたということは、そこまで嫌ではなかったのだろう。彼に寒さの感覚があるのかは分からないから、僕を安心させようとしてくれているのかもしれない。そうだとしたら、少し嬉しく思えるのだった。
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