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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    流菜🍇🐥

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    いつもとは違う設定のTF主ルチ。ルチがTF主くんの前で正体を隠してた場合、龍亞くんの話との印象の違いにびっくりしたりするのかなって思ったという話。

    ##TF主ルチ

    印象「やあ、○○○」
     シティ繁華街を歩いていると、背後から声をかけられた。低いようでいて甲高い、不思議な響きを持つ子供の声である。くるりと後ろを振り返ると、赤い髪を後ろで結った少年が立っていた。前回会った時と全く同じ、白を基調にした洋服に身を包んでいる。
    「あ、ルチアーノ。久しぶりだね」
     少年に向き直ると、僕は弾んだ声で挨拶を返した。この不思議な男の子は、最近よく顔を合わせる常連である。どこからかふらりと現れては、僕をタッグデュエルに誘ってくるのだ。僕としてもデュエルは大歓迎だから、いつも二つ返事で受け入れていた。
    「偶然近くを通りかかったから、君の姿を探してみたんだ。こんなにすぐに見つかるなんて、僕も中々にツイてるな」
     楽しそうな笑みを浮かべながら、ルチアーノは淡々と言葉を返す。甲高い笑い声を上げる姿は、いたずらを企む子供のようだった。実際に、彼が僕を誘いに来るときは、常に子供の遊びのような用事だったのである。彼の様子から察するに、今回も遊びの誘いなのだろう。
    「そうなんだ。僕は、これから次のデュエルコートに向かうところだよ。良かったら、ルチアーノも一緒に行かない?」
     僕の方から誘ってみると、彼は二つ返事で誘いに応じた。僕の隣に歩み寄ると、楽しげな表情のままこちらを見上げる。
    「いいぜ。今日は何して遊ぼうか」
     そんなこんなで、この日はルチアーノと一緒にデュエルをすることになった。彼を隣に引き連れたまま、目的地のデュエルコートを目指していく。繁華街中心部にあるデュエルコートは、プロデュエリストを目指す若者たちの溜まり場なのだ。僕に負けず劣らずの実力を持つルチアーノでも、満足のいくデュエルができると思った。
     建物の中に入ると、エレベーターで目的の階へと足を運ぶ。手早く受付を済ませると、奥のデュエルコートへと足を踏み入れた。平日の午前だというのに、中はそこそこの人で埋まっている。手の空いていそうな相手に目星をつけると、ルチアーノを連れたまま声をかけた。
    「良かったら、僕たちとデュエルしませんか?」
     僕たちの姿を一瞥すると、彼らは驚いたような表情を浮かべた。視線の先が向かうのは、僕の隣に佇むルチアーノだ。プロを目指す彼らからしたら、子供の姿をした彼と戦うのは不安なようだった。
    「この子のことなら、気にしなくていいですよ。こう見えても、僕と同じくらい強いんです」
     相手の困惑をはね除けるように、僕は横から捕捉する。僕が話をつける様子を、ルチアーノは黙って見つめていた。気の強い彼のことだから、何か言い出してもおかしくはないのだ。そう思って身構えていたが、彼は何も言わなかった。
    「そうですか。なら、お願いしようかな」
     僕の話を聞いて安心したのか、相手はあっさりと承諾してくれた。安堵の吐息を吐きながらも、僕はデュエルコートの片隅へと移動する。手早くデュエルディスクを構えると、コートを挟んで向かい合った。
     僕の予想通り、繁華街のコートに集まるデュエリストは、一般市民よりもデュエルのレベルが高かった。プロを目指しているだけあって、戦略がしっかりと練られているのだ。フィールドに並べられたモンスターたちも、一筋縄ではいかない効果を持っている。ルチアーノと二人で挑んでも、突破するのに時間がかかるくらいだった。
     あと少しで負けてしまいそうなギリギリのところで、僕たちはなんとか勝ちを拾った。対戦相手にお礼を告げると、次の相手を探しにいく。何組かの相手と戦っていると、時刻は五時を過ぎてしまった。
    「ルチアーノは、そろそろ帰った方がいいんじゃない? あんまり遅いと、親御さんが心配するでしょう」
     隣のルチアーノに視線を向けると、僕はそんなことを問いかける。しかし、対する彼の方は、不満そうな表情を浮かべるだけだった。デュエルディスクを畳んで僕を見上げると、反抗的な態度で言う。
    「気にするなよ。僕には、帰りを心配するような親はいないんだから。もっと遅くまで遊んだって、誰も何も言わないぜ」
    「そんなことできないよ。ルチアーノは、まだ小学生なんだから。夜遅くまで子供を連れ歩いてたら、僕がセキュリティに捕まるんだよ」
    「なんだよ。どいつもこいつも、僕を子供扱いしちゃってさ。…………まあいいか、今日の遊びももう飽きたしな」
     なんとか説得すると、彼は渋々受け入れてくれた。デュエルコートの外に出ると、建物の外へと歩いていく。季節は初夏に入ったばかりだから、この時間でも空は明るい。こうして太陽の光を浴びていたら、今が何時かすら分からなくなりそうだった。
     ちらほらと灯りがつき始めた大通りを抜けると、商店街の門が見えてきた。ここから続く道を曲がると、僕の家がある住宅街へと辿り着く。しかし、今日はその前に、ひとつだけやるべきことがあった。隣を歩くこの男の子を、きちんと家に送り届けなければならないのだ。
    「遅くなっちゃったから、今日は家の近くまで送っていくよ。ルチアーノの家はどっちなの?」
     僕が尋ねると、彼は不満そうに顔を上げる。両目を細めると、棘のある声で答えた。
    「子供扱いするなよ。わざわざ送ってもらわなくても、家に帰るくらい朝飯前だ。君は子供の頃、毎日送ってもらってたのかい?」
    「それは…………」
     鋭い言葉で言い返されて、僕は一度言葉を切る。僕がルチアーノくらいの歳の頃は、毎日遅くまで遊んでいたのだ。帰りが夕食の時間を過ぎてしまって、母親から怒られたこともある。でも、僕が暮らしていた町の環境は、ネオドミノシティとは大きく違ったのだ。
    「だろ。だから、僕も大丈夫だよ。怪しいやつに目をつけられたら、デュエルで返り討ちにしてやるから」
     しかし、そんな僕の気など知りもせずに、ルチアーノは一人で帰ろうとする。どうやって引き留めようかと、僕は必死に思考を巡らせた。どれだけ真剣に考えても、これといった案は思い付かない。僕が困り果てていると、背後から声が聞こえてきた。
    「あれ? ○○○、こんなところでどうしたの?」
     沈黙を切り裂くような明るい声に、僕は思わず後ろを振り返る。こちらに向かって歩いて来るのは、アカデミアの制服に身を包んだ龍亞だった。僕の前で足を止めると、真っ直ぐにこちらを見上げる。
    「龍亞こそ、こんな時間にどうしたの? 一人でいるなんて珍しいね」
    「今日は、アカデミアで補習があったんだよ。龍可は赤点を取らなかったから、先に帰ったんだ」
     僕が問いを投げかけると、龍亞は淡々と答えてくれる。彼の言葉を聞いて、ルチアーノが一歩前に出た。にやにやと子供らしい笑みを浮かべると、からかうような声色で言う。
    「ふーん。君は、相変わらずの落ちこぼれなんだな。初等部の授業なんて、誰でも分かるような簡単なものばかりじゃないか」
     そんな彼の姿を見て、龍亞は驚いたように眉を上げた。僕たちの前から距離を取ると、いかにも嫌そうな声色で言う。
    「げっ。ルチアーノ」
     その会話を聞いて、今度は僕が驚いてしまった。二人の顔を交互に見比べると、半ば裏返った声で尋ねる。
    「二人とも、知り合いだったの?」
    「知り合いも何も、こいつは僕たちの敵なんだよ。アカデミアに転校してきて、龍可を傷つけようとしたんだ!」
     先に僕の言葉に答えたのは、目の前にいた龍亞の方だった。怒りに眉を吊り上げると、直談判するような声色で言う。
    「ああ、そんなこともあったな。安心しなよ。もう君の妹は狙わないから」
     そんな龍亞とは対称的に、ルチアーノは落ち着いた声色で言葉を返した。穏やかな声色とは裏腹に、内容は相手を煽るようなものである。挑発された龍亞の方も、声を荒らげて言葉を返した。
    「嘘ばっかりつくなよ! 今度オレたちの前に現れたら、今度こそ返り討ちにしてやるからな!」
     今にも喧嘩が始まりそうな会話に、僕は慌てて間に入った。二人の前で両手を広げると、言葉を選びながら仲裁を試みる。
    「二人とも落ち着いてよ。もう時間も遅いし、家に帰るところだったんでしょ」
    「ああ、そうだな。僕は帰らせてもらうぜ」
     そんな僕の言葉に、ルチアーノはにやりと笑みを浮かべた。淡々とした声で言葉を紡ぐと、踵を返して僕たちに背を向ける。素早い動きに、引き留める隙などどこにもなかった。早足で歩を進めると、すぐに繁華街へと消えていってしまう。
    「ルチアーノ! 待ってよ! …………行っちゃった」
     後ろ姿に声をかけるが、聞こえているような素振りはない。仕方なく前に視線を向けると、取り残された龍亞に向き合った。彼は彼で、呆れたようにルチアーノが去った路地を見つめている。その横顔を見ていると、彼が少し大人になったように感じた。
    「あいつ、結構子供っぽいところがあるよな。○○○もそう思うだろ」
     気の抜けたような声で言うと、龍亞はこちらを振り返る。今にもため息をつきそうな彼に視線を向けると、僕も何気なく言葉を返した。
    「そうだね。ルチアーノも、龍亞と同じくらいの年みたいだから」
     そんな僕の言葉を聞くと、龍亞は驚いたように視線を返す。大きく口を開けると、すっ頓狂な声を発した。
    「もしかして、○○○は知らないの? ああ、そっか。誰も知らないんだった」
     問いかけを投げ掛けたかと思うと、すぐに回答の言葉を並べる。事情を知らない僕にも、彼の抱える混乱が伝わってきた。いったい、ルチアーノと龍亞の間に、どのような出来事があったのだろう。疑問に思っていると、龍亞が再び顔を上げた。
    「この話は、オレたちだけの秘密だからな。…………ルチアーノは、秘密結社のメンバーなんだ」
    「え?」
     僕の方に顔を近づけると、彼は小さな声で語る。雑踏に掻き消されそうな音量だったが、その言葉ははっきりと聞こえてきた。しかし、その内容は、僕にはいまいち理解できない。頭に疑問符を浮かべていると、彼はさらに言葉を重ねた。
    「嘘じゃないよ。あいつは、龍可のエンシェントフェアリーを狙って、アカデミアに転校して来たんだ。龍可をつけ回して騙した上に、オレたちをひどい目に遭わせたんだぜ。そんなやつのこと、○○○は信じるなよ」
     彼の語る言葉を聞きながら、僕は動悸が止まらなくなっていた。ルチアーノが秘密結社のメンバーだなんて、僕は聞いたこともなかったのだ。僕の前に現れる彼は、ただの遊びたい盛りの子供である。他人を傷つける姿なんて、想像すらできなかった。
    「それって、本当なの? ルチアーノが、二人をひどい目に遭わせたって」
    「本当だぜ。龍可を機械で縛り付けて、無理矢理デュエルをさせたんだ。あのデュエルディスクは実際のダメージが起きるから、危うく怪我するところだったんだぜ」
     しかし、龍亞の口から吐き出されるのは、ルチアーノの恐ろしい話ばかりだ。どうやら、彼は本当に、龍亞と龍可を傷つけたようである。気になって詳しい話を求めると、彼は次から次へと言葉を重ねる。話を聞けば聞くほど、恐ろしい姿ばかりが浮き彫りになっていった。
    「そうなんだ…………。そんなことがあったんだね…………」
     龍亞の話が終わると、僕は小さな声で呟いた。怒濤のごとく明かされた衝撃の事実に、頭が働かなくなっていたのだ。彼の口から語られるルチアーノの姿は、相手を痛め付けて笑う恐ろしい人物だった。僕がこれまで見てきたルチアーノとは、到底同一人物だとは思えない。相手が龍亞じゃなかったら、嘘を吐かれているんじゃないかと思ったくらいだ。
    「そうだよ。だから、○○○も油断しちゃダメだぜ。あいつのことだから、これも罠かもしれないんだ」
     そんな僕を正面から見つめると、龍亞は言いくるめるように言葉を重ねる。その真剣な顔を見ていると、嘘を吐いているとは思えなかった。やはり、彼の語ったことは、紛れもない真実なのだろう。頭が混乱して、どっちを信じたらいいのかすら分からなかった。
    「うん。分かったよ。…………気を付ける」
     なんとか言葉を返すと、龍亞は安心したように頷いた。僕から顔を離すと、ようやく笑顔を見せてくれる。普段と変わらない表情を見ていると、ようやく動悸が収まってきた。
    「じゃあ、オレは帰るね。今度は、一緒にデュエルしようよ」
     一言だけ告げると、彼はくるりと後ろを向く。駆け足で大通りを進むと、繁華街の奥へと消えていった。誰もいなくなった大通りを眺めながら、僕は呆然と立ち続ける。頭の中で巡っているのは、ルチアーノについての思考だった。
     僕の見てきたルチアーノは、遊びたがりの男の子なのだ。ふらりと僕の前に現れたかと思うと、楽しげな口調で僕を誘う。向かう先もシティのデュエルスポットばかりで、デュエルだってディスクを介した普通の戦い方だ。龍亞の語る恐ろしい少年の姿とは、似ても似つかないほどだった。
     いったい、本当のルチアーノは、どちらの姿なのだろう。二人の去っていった路地を見つめながら、僕はそんなことを考えた。
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