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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。ルチにお風呂に誘われて動揺するTF主くんの話。タグのネタです。

    ##TF主ルチ

    入浴 夕食の片付けを終えると、僕はソファに腰を下ろした。背凭れに体重を預けると、見るともなしにテレビに視線を向ける。隣では、豪快な仕草で足を組んだルチアーノが、同じようにテレビに視線を向けていた。重みの変化で斜めになった身体を建て直すと、ちらりとこちらに視線を向ける。
     テレビから流れているのは、クイズ系のレギュラー番組だった。今日は日本史がテーマらしく、教科書を元にしたクイズを出題している。日本史研究の進歩によって、教科書に載っている歴史の数々も、日々変化しているらしい。実際に、最新の教科書の内容として示されている例題は、僕の知っている内容とは大きく異なっていた。
    「ルチアーノって、こういうのに興味があるんだね。実際に歴史を見る立場だから、こんなもの興味ないと思ってた」
     テレビに視線を向けたまま、僕は何気なく呟いた。神の代行者であるルチアーノは、過去や未来を自由に行き来することができるのだ。彼の力を持ってすれば、過去に飛んで正しい歴史を知るなど、赤子の手を捻るほどに簡単なことだろう。そう思っていたのだが、帰ってきた返事は予想と違っていた。
    「僕だって、人間の研究の成果は気になるさ。その時代の人間がどこまで本当の歴史に近づいているかは、人間の技術力を図る一番の手段だろ。それに、時空を越えて過去に飛んだからと言って、必ずしも権力者の味方につけるとは限らないんだ。うっかり敗者に加担することになったりしたら、それこそ歴史の真偽どころじゃないぜ」
    「そっか、それもそうだね」
     彼が話し終えるのを待ってから、僕は曖昧に返事をする。つらつらと並べられた内容が難しくて、半分ほどしか理解できなかったのだ。ルチアーノもそこまでは求めていないようで、再びテレビに視線を向ける。そうこうしているうちに、給湯器から軽快なメロディが聞こえてきた。
    「お風呂、入ったみたいだよ」
     メロディが成り終わると、僕はルチアーノに声をかける。いつの間にか決まったお約束で、一番風呂は彼と決まっていたのだ。ぼんやりとテレビ画面を眺めながら、いつものように彼が移動するのを待つ。しかし、この日のルチアーノは、なかなか席を立たなかった。
     その姿に微かな違和感を感じて、僕は隣へと視線を向ける。そこに腰を下ろしたルチアーノは、黙ったままテレビを見つめていた。普段ならば饒舌に言葉を語るのに、今日は返事すら返さない。強ばった横顔に不安を覚えて、僕はさりげなく声をかけた。
    「ルチアーノ? どうしたの?」
     僕の声を聞くと、彼は驚いたように身体を震わせた。何事も無かったように僕を見上げると、少し震える声で返事をする。
    「ああ、分かってるよ」
     しかし、一度返事をしただけで、彼は動こうとはしなかった。迷うように足を組み直すと、膝の上に手を乗せてもじもじしている。視線はテレビの方に向いているが、その表情は上の空だ。明らかにおかしいその仕草に、余計に心配が募ってしまった。
    「ルチアーノ……?」
     再び声をかけると、僕は彼の顔を覗き込む。真っ直ぐにテレビを見る横顔は、ほんのりと赤く染まっていた。普通の人間で言うと、熱がある時のような姿だった。何かあったのかと思っていると、不意に彼が口を開いた。
    「なあ、一緒に風呂に入らないか?」
     あまりにも突然の誘いに、すぐに言葉を返せなかった。彼の横顔を眺めたまま、頭の中でその意味を噛み砕く。しかし、どれだけ思考を巡らせても、解釈できる意味は一つだけだ。改めてルチアーノの顔を覗き込むと、自分でも呆れるほどの間抜け声を発する。
    「え?」
     案の定、僕の鈍感な反応は、彼の機嫌を損ねたようだった。横目で僕を一瞥すると、見せつけるように小さく鼻を鳴らす。正面に視線を固定したまま、鋭い声色で繰り返した。
    「聞こえなかったのか? 一緒に風呂に入らないかって言ったんだ」
     しかし、再び聞き直しても、彼の口から出る言葉は同じだった。僕の聞き間違いでなければ、入浴の誘いを持ちかけていることになる。一緒にということは、つまり、二人で裸のお付き合いをすると言うことだ。そこまで考えたところで、さらに大きな声が出てしまった。
    「ええっ!?」
     動揺する僕の声を聞いて、ルチアーノがようやくこちらに視線を向ける。鋭い瞳で僕を睨むと、不満そうな声色で言い放った。
    「なんだよ。何か文句でもあるのか?」
    「無いよ。…………無いんだけどっ!」
     しかし、僕の口から出る言葉は、不明瞭なものにしかならなかった。彼の言葉に動揺して、頭が働かなかったのである。だって、普段の彼であれば、このような発言をするなどあり得ない。なぜならば、彼は僕に裸体を見られることを何よりも嫌悪しているのだから。
    「なら、文句は無いな。とっとと行くぞ」
     話はついたと言わんばかりに、彼はソファからから立ち上がった。リモコンでテレビの電源を落とすと、リビングの扉へと足を踏み出す。そんな彼の後を追いかけながら、僕は必死に声をかける。彼は何も気にしていないようだが、僕は納得できていなかったのだ。
    「待ってよ!」
    「なんだよ。しつこいぞ」
     ドアノブに手をかけたルチアーノが、鋭い視線でこちらを睨む。不機嫌の一言では済まないほどの、不満に満ちた声だった。しかし、ここで確認を取っておかないと、後で恐ろしい目に遭うかもしれないのだ。気迫に怯みそうになりながらも、僕はなんとか言葉を返す。
    「ねえ、本当にいいの?」
    「はあ? 何がだよ」
    「その、僕が、一緒にお風呂に入って」
     顔色を窺いながら問いかけると、彼は大きく鼻を鳴らした。当然と言えば当然なのだが、相当機嫌を損ねているみたいだ。その口から零れる声は、さっきまでよりも怒りに満ちていた。
    「今さら、そんな確認なんて要らないだろ。僕が君を誘いたかったから、恥を忍んで声をかけたんだ。それとも、君は僕の羞恥心を無下にするつもりなのか?」
    「違うよ! 違うんだけど……!」
     必死に言葉を重ねながら、僕は思考を巡らせる。いったい、どのような言葉で確かめたら、彼は答えてくれるのだろうか。考えたところで、何も答えは出なかった。
    「じゃあ何なんだよ。とっとと言えよ」
    「だって、ルチアーノは、僕に裸を見られるのが嫌なんでしょう。僕に見られたからって、後から怒ったりしないよね?」
     結局、僕にできることは、正面から問いを投げることだけだった。不器用な僕には、言葉を選ぶという芸当ができないのだ。ルチアーノもそれは分かっているようで、不満そうな顔ながらも答えてくれた。
    「僕が、そんな当たり屋みたいなことすると思うのかよ。もう少しパートナーを信用したらどうだい?」
     するかもしれないと思うから問うているのだが、さすがにそんなことは言えなかった。下手に刺激するようなことを言ったら、痛い目に遭うことは確実なのだ。慎重に言葉を選びながら、僕は次の問いを投げ掛ける。
    「それに、僕が一緒にお風呂に入ったら、ルチアーノの身体を触っちゃうかもしれないよ。明るいところで触られるのは、あんまり好きじゃないんでしょう」
    「そうだな。君の風呂は狭いから、身体をくっつけるしかないよな。それくらい分かってるよ」
    「それに、僕がルチアーノの裸を見たら、そういう気持ちになっちゃうかもしれないんだよ。もしかしたら、我慢できなくなっちゃうかもしれないし……」
     肝心の問いを口にすると、ルチアーノは真っ直ぐに僕を見上げた。頬を赤く上気させると、いっそう鋭い声で言い放つ。
    「分かってるよ。分かってるから、君を風呂に誘ったんだろ。わざわざ言わせるなよ!」
     そんな彼の様子を見て、僕は思わず動きを止める。彼が最後に放った言葉こそが、偽りの無い真意だと思ったのだ。彼は、最初からそうなるつもりで、僕をお風呂に誘ったのだ。僕が変に気を遣ったせいで、余計に辱しめることになってしまった。
    「ごめん…………」
     小さな声で呟くと、僕はそっと視線を逸らした。気まずくて、これ以上視線を合わせていられなかったのである。そんな僕を一瞥すると、ルチアーノは乱暴に扉を開けた。視線で僕を従わせると、ずんずんと廊下へと歩いていく。
     こんなに怒っているのに、彼はまだ一緒にお風呂に入るつもりなのだろうか。大人しくついていったとして、急に怒られたりしないだろうか。機嫌を損ねている時のルチアーノは、この世の何よりも恐ろしいのである。彼の反応が心配で、僕は小さく息をついた。
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