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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    ちょっと不穏なTF主ルチ。一応昨日の話の続きになってます。ルチに嫉妬するネコチャンムーブをしてほしかっただけです。

    ##TF主ルチ

    妨害 この世界には、闇のカードというものがあるらしい。それは普通のカードのような見た目をしているが、使用することで誰でも対戦相手に実際のダメージを与えることができるのだという。
     僕がそのカードの存在を知ったのは、数日前のことだった。謎の男から仕掛けられたデュエルによって、怪我をさせられたのだ。モンスターが迫り、傷をつけてきた時の衝撃は、今でも忘れられない。あんな力を使えるのは、ルチアーノたちだけだと思っていたのだから。
     ルチアーノは、そのカードを『闇のカード』だと言った。秘密裏に出回っている、違法アイテムだと。しかし、どれだけ尋ねても、それ以上のことは教えてくれなかった。
     闇のカードとは、一体なんなのだろう。あの力は、どう見てもイリアステルやサイコデュエリストのものだ。ルチアーノが詳しいことを教えてくれないのには、何か理由があるのだろうか。
     そう思って、僕は調べてみることにした。ルチアーノがお風呂に入っている間に、コンピューターを立ち上げる。検索エンジンを開くと、キーワードを入力した。
     検索ボタンを押すと、表示されたのはデュエルモンスターズのデータベースだった。当たり前と言えば当たり前だ。仕方なく、キーワードを増やして検索する。
     何度検索しても、インターネット上のページには目ぼしい情報が無かった。違法アイテムなのだ。そんな簡単に情報が手に入ったらまずいのだろう。諦めて画面を閉じようとしたとき、別のアイデアを思い付いた。
     SNSを立ち上げると、キーワードを検索する。一般人の発言からなら、何かが掴めるかもしれないと思ったのだ。
     この目論みは当たりだった。表示された書き込みの中に、気になるものを見つけた。投稿者は胡散臭いアカウントだったが、見出しの一文は確証を持てるものだった。
    『闇のカードとイリアステルについての注意喚起』
     イリアステル。それは、ルチアーノの所属する組織の名前だ。その名を知っているのは、イリアステル関係者だけだと言われている。
     もしかしたら……。そう思って、僕はリンクをクリックした。一瞬だけ白いページが映り、画面が更新されていく。
     そこに表示されたのは、ブログ記事のようなものだった。タイトルが表示された下に、無機質な文字列が並んでいる。

    ──諸君は、闇のカードというものを知っているだろうか。闇のカードとは、対戦相手に物理的なダメージを与える違法アイテムである。

     そんな書き出しから始まり、彼が闇のカードを知った経緯と、受けた被害について書き連ねられていた。筆者の友人は、闇のカードによって怪我を負い、Dホイーラーを引退したのだという。
     その後には、筆者の調査内容が記載されていた。僕にとってはどうでもいいことだから、読み飛ばす。しばらくページを送ると、内容は確信にたどり着いた。

    ──私は、闇のカードの裏に、ある組織の存在があることを突き止めた。

     そこに書かれている文章を、息を張り詰めながら読んでいく。

    ──その組織の名は、イリアステルというらしい。

     その文字列を見て、僕は、心臓が止まる思いがした。イリアステルは、闇のカードを生産していた? ルチアーノは、そんなこと一言も言っていなかった。むしろ、闇のカードを回収しようとしていたのだ。
     さらに先を見ようと手を伸ばした時、背後からバタンという音がした。ルチアーノが部屋に入ってきたのだ。
     僕は飛び上がった。ルチアーノはお風呂好きだ。普段なら、こんなに早く戻ってくることはない。完全に油断していた。
     慌てて、開いていたページを閉じる。ルチアーノはつかつかと歩み寄ると、僕の膝の上に乗ってきた。頬を膨らませながら僕を睨む。
    「なんだよ。そんなに慌てて」
     僕はゆっくりと深呼吸した。心臓がドキドキして、口から飛び出しそうだった。なんとか平常心を保とうとする。
    「いつもより早いから、びっくりしたよ。何かあったの?」
    「嫌な予感がしたから、急いで出てきたんだよ。その様子だと、当たりみたいだな」
     咎めるような視線に、背筋がぞくりとした。なんだか、見通されているような気がしたのだ。
    「僕というものがありながら、密談でもしてたのかい? それとも、僕には言えないものでも見てたのかい??」
     問い詰めるように、彼は言葉を続ける。緑色の瞳が真っ直ぐに僕に突き刺さった。
    「そんなことないよ。ちょっと、調べものをしてたんだ」
     弁明するように僕はいう。彼の秘密を探っていたなんて、知られたらどうなるか分からない。
    「どうだか」
     寂しそうに言うと、ルチアーノは視線を落とした。疑われてはいないようで、ほっとする。どうやら、悟られずに済んだようだ。
     膝の上に乗り、拗ねたように俯く姿は、まるで、飼い主に甘える猫のようだった。
     僕は、反射的に彼の頭を撫でていた。撫でずにはいられなかったのだ。そんな寂しそうな顔をされてしまったら。
    「なんだよ」
     拗ねた声で言って、彼は僕を見上げる。上目遣いの瞳は、少しだけ潤んでいた。
    「不安にさせてごめんね」
     僕は言った。コンピューターの電源を落として、ルチアーノを抱き上げる。どういう仕組みなのか、機械でできているとは思えないほどに、彼の身体は軽かった。
     ルチアーノをベッドに運ぶと、隣に寄り添った。気になることはある。不安もある。でも、今はこの寂しがり屋な男の子を温めることが、最優先だと思ったのだ。 

     翌日、僕はコンピューターに向かっていた。昨日のサイトを開いて、闇のカードについて調べるためである。今日はルチアーノはいない。邪魔が入る可能性は皆無に近かった。
     あのページには、イリアステルが闇のカードを生産していると書かれていた。それが本当なら、ルチアーノの行動は矛盾していることになる。分からないことだらけだった。
     同じページを開こうと閲覧履歴を開いて、僕は首を傾げた。コンピューターに残っていたはずの履歴が、綺麗さっぱり消えているのである。あれから、僕はコンピューターを触っていない。消えているのはおかしかった。
     不思議に思いながらも、僕はSNSのページを開いた。前日と同じワードで検索をして、ページを開こうとする。
     しかし、そこに昨日と同じページは無かった。検索結果から、その書き込みだけが消えているのだ。まるで、僕の詮索を拒む何者かが消去したみたいに。
     そこで、僕は思い出した。昨日のルチアーノの行動を。彼は、絶妙なタイミングで部屋に入ってきて、僕の膝の上に乗ってきた。それは、ただの嫉妬によるものだと思っていたけど、本当は違ったのかもしれない。
     もしかしたら、と思ってしまう。
     もしも、ルチアーノが僕の行動を把握していたとしたら。僕の詮索を止めるために、甘えるような行動を取ったのだとしたら。
     ルチアーノはイリアステルの幹部で、アンドロイドだ。コンピューターを遠隔操作し、痕跡を消すくらいどうてことないのだろう。
     彼は、拒んでいるのだ。僕が闇のカードについて調べることを。イリアステルという組織について、これ以上の知識を得ようとすることを。
     彼は、一体何を隠しているのだろうか。僕に知られたくないこととは、一体何なのだろうか。
     無理矢理聞き出そうとは思わない。詮索を拒むくらいなのだから、知らない方がいいことなのかもしれないし、知ったら命を狙われるのかもしれない。ルチアーノが選んだことだから、尊重したいとも思う。
     今まで、僕は自分が彼の一番近くにいるのだと思っていた。彼の一番近くで、弱味や秘密を握っている、特別な存在なのだと。だから、隠し事をされるのは、少しだけ寂しかった。
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