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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。TF主くんとルチが流れでヒーローショーを見ることになる話。

    ##TF主ルチ

    ヒーローショー その日のシティ繁華街は、妙にたくさんの人で溢れていた。普段から多くの通行人が集まる大通りの歩道を、隙間なく人々が埋め尽くしている。不思議に思って左右に視線を向けると、周りを囲んでいるのは親子連ればかりだった。それも、小学校に上がる前くらいの、小さな子供を連れた大人ばかりである。
     正面から歩いてきた小さな子供が、僕とルチアーノの間を通り抜けようとする。危うく繋いだ手をほどかれそうになって、僕は急いで腕を上げた。僕の手に引っ張られるようにして、ルチアーノも嫌々万歳のポーズを取る。子供が背後へと消えていくと、彼は不満そうに鼻を鳴らした。
    「なんだよ。この辺の通りは、どこを見ても子供しかいないじゃないか。何か祭りでもやってるのか?」
     彼の言葉に釣られるようにして、僕は周囲に視線を向ける。確かに、遥か遠くまで周囲を眺めてみても、そこにいるのは年端のいかない子供たちばかりだった。親に手を繋がれて歩いている子供がいれば、寄り添って歩いている兄弟もいる、一見大人だけに見えている通行人も、よく見たら腕の中に子供を抱えていた。
    「ほんとだ。小さい子ばっかりだね。確か、夏祭りは来週の日曜日だったはずだけど……」
     キョロキョロと周囲を見渡しながら、僕は小さな声で答える。隣を歩いていたルチアーノが、呆れたように大きく息を吐いた。
    「なんだ、知らなかったのかよ。僕はてっきり、君がこれを目的に僕を誘ったんだと思ってたけどな」
    「違うよ。僕が繁華街に来たかったのは、買いたいものがあったからなんだから。それに、イベントがあるって知ってたら、わざわざこの通りを選んだりしないでしょ」
    「それもそうか。全く、君のせいでいい迷惑だよ」
     取り留めの無い会話を交わしながら、僕たちは通りの奥へと向かっていく。周りは人がすし詰めになっているから、列の進行は亀の歩みだった。横から他の通りへと移ろうにも、この人混みを掻き分けるのは至難の技である。下手に動いても疲れるだけだから、広場まではこの通りを歩くことにしたのだ。
     またしても人の波に飲まれそうになって、僕はルチアーノの身体を引き寄せる。この人混みではぐれてしまっては困るから、僕たちはしっかりと手を繋いでいた。周りの環境も相まって、端から見たら兄弟のようにも見えるだろう。周囲から子供のように思われているのも、彼の不機嫌の原因らしかった。
     喧騒に巻き込まれながら前進していくと、ようやく中央広場が見えてきた。遠目から敷地内に視線を向けて、僕は混雑の理由を理解する。普段はだだっ広いだけの芝生のスペースに、仮設のステージが組み立てられているのだ。ステージの前には大きなレジャーシートが引かれていて、ちらほらと親子連れが座っていた。
     僕たちの周囲を取り囲む人々も、次々と広場に吸い込まれていく。今さら抜け出すこともできないから、僕たちも広場の中へと入っていった。敷地内へと足を踏み込むついでに、入り口付近に立て掛けられた看板に視線を向ける。そこには、子供向け番組の写真と共に、ヒーローショーの文字が踊っていた
    「そっか。今日は夏休みだから、ここでヒーローショーをやるんだね。小さい頃、僕もよく連れていってもらってたな」
     周囲を取り囲む子供たちを眺めながら、僕はしみじみと呟く。よく見ると、周囲に集まった子供たちの中には、ヒーロー番組のグッズらしきものを持っている子もいた。前の方に座っている子供の中には、ヒーローのコスチュームを着ている子もいる。ぐるりと後ろの方を振り返ると、後ろの方にはちらほら大人の姿が見えた。
    「そっかじゃないだろ。こんなとこに入っちまったら、買い物どころじゃないじゃないか。とっとと出るぞ」
     呆れたように吐き捨てると、ルチアーノはステージから背を向ける。力一杯僕の手を引っ張ると、広場の出口へと足を踏み出した。傾いた体勢を整えると、僕は彼へと言葉を返す。
    「待ってよ! せっかくだから、ここでちょっと見て行かない」
    「はあ? 何を言ってるんだよ。今日は買い物に来たんじゃないのか?」
     僕の言葉を聞いて、彼は大きく両目を開けた。すぐに眉を吊り上げると、鋭い視線でこちらを睨み付けてくる。慣れない相手には恐ろしい睨みかもしれないが、普段から食らっている僕には大したことじゃない。反対に彼の手を引っ張ると、僕は言い聞かせるように言った。
    「それはそうだけど、これだけ人が集まってたら、終わるまではなかなか出られないよ。だったら、見ていった方がいいんじゃない?」
    「何を言ってるんだよ。君は、暑さでおかしくなったんじゃないのか?」
     しかし、彼の言葉は、それ以上は続かなかった。彼が進もうとしていた方向から、次々と人が入ってくるのである。入り口に待機していた係員に先導されて、彼らは芝生の上に整列していく。もちろん、僕を含む周辺の人々も、その列の中に加えられてしまった。一切の隙間も無い光景を見て、ルチアーノは苛立たしげに舌打ちをする。
    「ちっ。君のせいで、面倒なことになったじゃないか」
     そうこうしているうちに、ステージの上では機材が整えられていく。後ろに用意された控え室からは、ナレーションらしき女の人が出てきた。慣れた足取りでステージに上がると、子供たちに鑑賞のマナーを約束している。しばらくやり取りを繰り返すと、ようやくショーが始まった。
     女の人が立っているステージの上に、悪の組織の下っ端が飛び出してくる。彼らは女の人を人質に取ると、スタッフを巻き込んで暴れ始めた。ステージの前に集まった子供たちから、ちらほらとヒーローを呼ぶ声が聞こえてくる。女の人が掛け声を促すと、それは全員の合唱になった。
     そこから先は、ヒーローショーでお馴染みの展開である。子供たちの呼び声に応じるように、ステージの下からヒーローが現れたのだ。彼は颯爽とステージに登ると、次々と下っ端たちを倒していく。あっという間に敵を一掃すると、ナレーションの女の人を助け出した。
     ヒーローがステージから降りていくと、女の人が終わりを知らせる口上を告げる。スピーカーから音楽が流れ始めると、子供たちは次々と席を立った。アナウンスから全ての演目が終わるまでは、大体二十分くらいだろう。子供の集中力はそこまで続かないから、これくらいがちょうどいいのだ。
    「結構面白かったね。久しぶりに見たからかな」
     出口へと向かう人々の流れに乗ると、僕はルチアーノに声をかける。隣を歩いている彼は、退屈そうに周りを眺めていた。賑やかに騒ぐ子供たちの姿を見ると、あからさまな態度で顔をしかめる。元から嫌がっていたこともあって、あまり楽しんではいなさそうだった。
    「どこがだよ。こんなもの、ただの茶番だろ」
     隣から飛んでくる辛辣な言葉に、僕は微かに苦笑いを浮かべる。大人と変わらない感性を持つルチアーノにとっては、ヒーローショーは子供騙しにしか見えないようだった。いや、ルチアーノのような機械生命体じゃなくても、小学生になればヒーローショーは卒業するものだろう。しかし、大人になった僕の立場で見れば、また別の感想があったのだ。
    「確かに、大人からしたら茶番なのかもしれないけど、作る方は本気で作ってるんだよ。子供が楽しんでくれるように、見せ方を考えたりしてるんだから」
     さっきのステージの光景を思い出しながら、僕は諭すように言葉を並べる。ショーを彩る数々のキャストたちは、各所に子供たちを退屈させない工夫を凝らしていたのだ。その中でも、メインとなるヒーローを演じていた人物は、隅から隅までステージを駆け回っていた。敵の下っ端の集団だって、ステージを分散するように散らばっていた。
    「いくら考えて作られてたとしても、子供騙しは子供騙しだろ。こんなもので喜んでるなんて、君はまだまだ子供だなぁ」
     簡単に僕の話を聞き流すと、ルチアーノは呆れたように呟く。こうして大人びた態度を取られてしまうと、どっちが子供なのか分からなくなってしまいそうだ。はしゃいでいたことが恥ずかしくなって、僕は黙って口を閉じる。はぐれないようにしっかりと手を繋いだまま、僕たちは広場の外へと歩き始めた。
     しばらく歩いているうちに、僕はあることに思い至った。ルチアーノを始めとするイリアステルの構成メンバーは、全員が人間を元にした機械生命体らしいのだ。彼らがオリジナルの記憶を引き継いでいるなら、ルチアーノにもヒーローショーの記憶があってもおかしくない。再び彼に視線を向けると、僕は改めて問いかけた。
    「でも、ルチアーノが覚えてないだけで、ヒーローショーの記憶はあるんじゃないかな。男の子は、誰もがヒーロー番組を見るものだから」
     僕の言葉を耳にすると、彼はちらりとこちらを見上げる。すぐに正面へと視線を戻すと、人の流れに添って歩き始めた。何も言わなかったということは、これは彼にとって答えづらい問いだったのだろう。そう思って催促せずにいると、彼は不意に口を開いた。
    「そんなもの、とっくの昔に忘れちまったよ」
     感情を抑えたように小さな声が、真っ直ぐに僕の耳に伝わってくる。人混みに紛れそうなほど微かな響きだったのに、それは一言も漏れずに僕へと伝わった。その言葉が持つ重みに気圧されて、僕は言葉を失ってしまう。思わず隣に視線を向けたが、ルチアーノは前を向いたままだった。
     黙ったまま歩き続けるルチアーノを見て、僕はぼんやりと考える。彼にとって子供の頃の思い出とは、どれほど遠くの出来事なのだろう。そもそも、彼の過ごしている人生というものが、僕には想像もできないほど途方もないものなのだ。触れてはいけないものに触れてしまった気がして、僕は小さく息を飲む。
     できるならば、ルチアーノが子供らしい楽しみを経験できたらいい。叶わない願いだと知りながらも、そう願わずにはいられなかった。
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    流菜🍇🐥

    DOODLETF主ルチ。ルチとあたまなでなでチャレンジをしたいTF主くんの話。
    あたまなでなで 手に持っていたカードを机に置くと、僕は携帯端末に手を伸ばした。ボタンを押して電源を入れると、インターネットのブラウザを起動する。画面に検索ウィンドウが表示されると、目的の単語を打ち込んでいった。情報を元にストレージのカードを引っ張り出すと、再びブラウザを立ち上げる。
     ブラウザのロゴが表示されると、意味もなく画面をスクロールする。モニターに表示されているのは、閲覧履歴を基準にしたおすすめ記事だった。過去に見たサイトの関連記事を表示してくれるから、上手く使えば情報収集に役立つのである。中には、普段は見ないような記事がおすすめされることもあって、ついつい読み込んでしまうこともあった。
     そんなこんなで、この日のインターネット検索でも、僕はブラウザのおすすめ記事を見ていた。僕が調べるのはデュエルモンスターズのことばかりだから、記事もデッキ構築や大会に関するものばかりである。タイトルを読み飛ばしながらスクロールしてみるが、あまり心の惹かれるものは見つからない。そんな中で、ある記事のサムネイル画像だけが、唐突に僕の視界に入り込んできた。
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