Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

    文章や絵を投げます

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💕 🍇 🐥 🍣
    POIPOI 724

    流菜🍇🐥

    ☆quiet follow

    TF主ルチ。2人が近所のお祭りの音を聞きながら会話をするだけの話です。

    ##TF主ルチ

    お祭り 繁華街を抜け、大通りの交差点を左に曲がると、その先は住宅街へと続く通りになっていた。前に進めば進むほどに大きな建物が少なくなり、アパートや一軒家のような住宅が増えていく。さらに十分ほど歩を進めると、辺りは見渡す限りの一軒家に変化した。道路が少しずつ狭くなってくると、その先には僕の家の並ぶ一角が見えてくる。
     いつものように住宅街の角を曲がろうとして、僕は不意に足を止めた。住宅エリアへと足を踏み入れた辺りから、どこからか奇妙な音が聞こえてきたのだ。身体の底に響くような低い音が、一定の間隔で繰り返されている。しばらくその場で耳を澄ませているうちに、それが太鼓の音であることが分かった。
     リズムよく繰り返される重低音を聞きながら、僕は頭の隅で考える。そういえば、夏休みが始まってしばらくしたこの季節は、世間一般ではお祭りシーズンだった。この前にはシティの花火大会があったから、今度は地域の盆踊りがあるのだろう。きっと、今公園の近くを通りかかれば、お祭りのセットが見られるはずだ。
     家へと続く通りから離れると、僕は通りを直進した。この道を交差点まで進んだ突き当たりに、この地区で最も大きな公園があったのだ。僕は一度も参加したことがないが、地域のお祭りはここで行われているらしい。せっかく当日のお昼に外出したのだから、少しお祭り気分を味わうのもいいと思った。
     しばらく歩を進めると、公園を覆うフェンスが見えてくる。普段は飾り気の無い緑のあみあみには、カラフルなガーランドがからめられていた。近づいてみると、公園内に張り巡らされたロープにも、カラフルなガーランドが吊るされている。その中心に主役として陣取っているのは、木材を組み立てて作られた大きな櫓だった。
     聳え立つ櫓の頂上には、大きな太鼓がものものしく鎮座している。人一人が入るのがやっとだろうスペースでは、法被姿の男の人が撥を握っていた。片手を大きく振り上げたかと思うと、撥で太鼓の表面を叩いている。そのすぐ真下では、別の男の人が地面の整備をしていた。
     フェンス越しに大人たちが働く様子を眺めながら、僕は公園の周りを一周する。僕が来たのとは反対側のエリアでは、男性陣が大きなテントを組み立てていた。夜になると、この大きなテントの真下では、簡単な屋台が軒を連ねることになるのだろう。幼い頃に行った盆踊りを思い出しながら、僕は通りの角を曲がる。
     数分かけて公園の周りを散歩すると、僕は再び通りに戻った。真っ直ぐに元来た道を戻ると、角を曲がって自宅へと向かう。世間は夏休み一色に染まっていても、僕たちにとってはいつもの日常なのだ。早く家に帰らないと、ルチアーノの機嫌を損ねてしまうかもしれない。
     幸い、僕が自宅に辿り着いた時には、まだルチアーノは帰っていなかった。荷物を部屋に片付けると、真っ先にエアコンのスイッチを入れる。部屋全体が涼しくなるまでには時間がかかるから、エアコンの真下で冷気を堪能した。ようやく身体の汗が引くと、重い腰を上げてベランダへと向かう。
     扉を開けた瞬間から、真夏の燃えるような熱気が入り込んでくる。太陽の光がよく当たるから、洗濯物はパリパリに乾いていた。帰り道まで響いていた太鼓の音は、いつの間にか聞こえなくなっている。急いで洗濯物を取り込むと、僕は夕方の家事に取り掛かった。

     ルチアーノが僕の家を訪れたのは、それから一時間ほど後のことだった。家事を終え、夕食の準備に取り掛かり始めた頃に、部屋の隅で光が瞬いたのだ。視線を向けると、白い布に身を包んだルチアーノが、時空の隙間から足を引っ張り出している。周囲を取り巻いていた光が消えると、僕は彼に声をかけた。
    「おかえり」
    「……ただいま」
     少し投げ槍な声色ながらも、彼は返事を返してくれる。足音を立てながらリビングを横切ると、ソファの上に腰を下ろした。大きな動きで足を組むと、テレビのリモコンへと手を伸ばす。そんな彼の後ろ姿を眺めながら、僕は用意した食事に手を伸ばした。今日は寄り道をせずに帰ってきたから、夕食は冷凍食品のおかずがメインだった。
     流れているバラエティ番組の音声をBGMに、僕は黙々と食事を進める。夏休みシーズンに入っているから、放送されているのは特番ばかりだった。何度かチャンネルをザッピングすると、ルチアーノは面倒臭そうにリモコンを置く。しばらくそのまま画面を眺めると、彼は不意に口を開いた。
    「なあ、何か聞こえないか?」
    「え? そうかな?」
     何の前触れも無い言葉にびっくりして、僕は間抜けな声を上げてしまう。というのも、人間である僕の耳には、テレビの賑やかな音声しか聞こえてこなかったのだ。箸を止めて耳を澄ませてみるが、やはりテレビの音しか聞こえてこない。僕が首を傾げていると、ルチアーノは尖った声で言った。
    「もっとちゃんと聞けよ。どこかで音楽が鳴ってるだろ」
     彼の言葉を聞いて、僕は再び耳を澄ませる。しかし、いくら集中したとしても、僕の耳には何も聞こえなかった。テレビの音声が大きすぎて、この部屋では掻き消されてしまうのだろう。それでも、彼が口にする音楽の正体については、僕の方にも心当たりがあった。
    「もしかして、盆踊りの音楽のこと?」
     ルチアーノの方に視線を向けると、僕ははっきりした声で答える。僕としてはかなり自信があったのだけれど、彼は納得の表情を見せなかった。怪訝そうに眉をハの字に歪めると、渋い顔のままこちらに視線を向ける。正面から僕と目が合うと、冷めきった声色で言葉を吐いた。
    「はあ? 盆踊りの音楽? これがか?」
     突き放すような声色で言われて、僕は返事に困ってしまった。これが、という言葉を使われても、僕にはその音が聞こえなかったのだ。いったい、彼の超人的な聴力は、どこの何を拾っているのだろう。言葉の勢いに気圧されながらも、僕は箸を置いて席を立った。
    「だから、僕には聞こえないんだよ。そんなに言うなら、音の正体を確かめにいこうよ」
     リビングの扉を開けると、僕は廊下へと足を踏み出す。冷房の効いた空間から出た途端に、蒸すような熱気が迫ってきた。ようやく薄暗くなってきた室内には、微かに音楽が聞こえている。確かに、ルチアーノが口にした通り、それは盆踊りには似つかわしくないテンポだった。
     もっと近くで音を聞こうと、僕はベランダへと足を進める。半ば面倒臭そうな態度だったが、ルチアーノも僕の後を付いてきてくれた。外と中を隔てる扉を開けると、僕は蒸し暑いベランダに足を踏み出す。公園こそ見えなかったものの、音楽ははっきりと聞こえてきた。
    「ほら、どう聞いても盆踊りの音楽じゃないだろ」
     しばらく音楽を聞いた後に、ルチアーノは小さな声で呟く。彼の言う通り、公園から聞こえてくるメロディは、盆踊りには似つかわしくない雰囲気をしていた。明らかにアップテンポなリズムで歌われるのは、現代的で陽気な歌詞である。僕でも聞き覚えがあるくらいだから、街頭で流れるような有名な曲なのだろう。
    「ほんとだ。僕はあんまり詳しくないけど、普通のJ-POPみたいだね。最近の盆踊りは、こういう曲で踊ってるのかな」
     流れてくる音楽を聞きながら、僕は何気なく言葉を返す。この地域は小さな子供も多いから、子供の好きそうな曲を選んでいるのかもしれなかった。そうじゃなくても、最近はJ-POPを流す会場も増えてきていると、少し前にテレビで見たばかりなのだ。しかし、僕の言葉を聞いただけでは、ルチアーノは納得してくれなかった。
    「こんなの、どう考えても盆踊りじゃないだろ。盆踊りを名乗るなら、せめて音頭として作られてる曲を使えよ」
     吐き捨てるような声色で言うと、彼は不満そうに鼻を鳴らす。よく分からないが、この地域の流す盆踊りの曲は、彼の機嫌を損ねたようだった。彼の仲間は命を落としたりもしているようだから、死者の追悼には思うことがあるのだろう。返せる言葉が思い付かなくて、僕は黙ったまま住宅地を眺めた。
     しばらくそうして遠くを見ていると、流れていた陽気な音楽が途切れた。少しの間を空けた後に、別の音楽が響いてくる。今度は盆踊りのテーマソングらしく、ゆったりとした曲調の和風のメロディだった。流れ始めた歌を耳にすると、ルチアーノは満足げに言葉を漏らす。
    「今度は、ちゃんと盆踊りの曲みたいだな」
     一番が流れ終わった辺りで、僕は室内へと足を踏み入れた。外の熱気があまりにも熱くて、長くは立っていられなかったのだ。半分くらいまで扉を閉めると、外にいるルチアーノに視線を向ける。彼もそこまでして見ている気はなかったのか、大人しく室内に上がってきた。
     熱気で生ぬるい廊下を歩くと、僕はリビングの扉を開ける。扉に隙間ができた瞬間から、冷やされた空気が流れ出してきた。軽い足取りで室内に入ると、テーブルの前の椅子に腰を下ろす。僕が箸を手に取っていると、ルチアーノも正面の席に腰を下ろした。
    「それにしても、あの公園で祭りをしてたなんてな。全然知らなかったぜ」
     僕の手元に視線を向けながら、彼は冷静さを装った声で言う。淡々としているようでありながらも、興味を隠せていない声色をしていた。彼の人格は小学生の男の子だから、この手のお祭りは気になるのだろう。箸を止めて彼の顔を見つめると、僕は優しい声で答える。
    「気になるなら、見に行ってもいいんだよ」
    「行くわけないだろ。あんな子供の祭り」
     案の定、彼の口から返ってくる声は、羞恥と怒りによって尖っていた。彼には神の代行者としてのプライドがあるから、簡単には認めたくないのだろう。僕もこれ以上からかう気はないから、大人しく反論を受け止めることにする。再び箸を動かすと、最後に一言だけ口にした。
    「じゃあ、来年は一緒に行こうか」
     視界の端で彼の様子を窺うが、一切の返事は返ってこない。それでも、怒るような言葉を口にしていないから、拒否するつもりはないのだろう。彼は機械の頭を持っているから、一度聞いたことは忘れない。来年の夏に約束を突きつければ、きっとついてきてくれると思った。
     僕にとっても、あのお祭りは初めての経験になる。来年の夏に向けて、楽しみがひとつ増えたのだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🎆💖💞💞😭💞💞🙏🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    流菜🍇🐥

    DOODLETF主ルチ。ルチとあたまなでなでチャレンジをしたいTF主くんの話。
    あたまなでなで 手に持っていたカードを机に置くと、僕は携帯端末に手を伸ばした。ボタンを押して電源を入れると、インターネットのブラウザを起動する。画面に検索ウィンドウが表示されると、目的の単語を打ち込んでいった。情報を元にストレージのカードを引っ張り出すと、再びブラウザを立ち上げる。
     ブラウザのロゴが表示されると、意味もなく画面をスクロールする。モニターに表示されているのは、閲覧履歴を基準にしたおすすめ記事だった。過去に見たサイトの関連記事を表示してくれるから、上手く使えば情報収集に役立つのである。中には、普段は見ないような記事がおすすめされることもあって、ついつい読み込んでしまうこともあった。
     そんなこんなで、この日のインターネット検索でも、僕はブラウザのおすすめ記事を見ていた。僕が調べるのはデュエルモンスターズのことばかりだから、記事もデッキ構築や大会に関するものばかりである。タイトルを読み飛ばしながらスクロールしてみるが、あまり心の惹かれるものは見つからない。そんな中で、ある記事のサムネイル画像だけが、唐突に僕の視界に入り込んできた。
    3555

    recommended works