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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ+牛尾さんの話。TF5の牛尾さんのハート1シナリオめちゃくちゃ良かった+マーサハウスに連れていかれるルチを無限に見たいの融合から生まれました。時系列は一応TFハート4以降くらいのつもりです。

    ##TF主ルチ

    お手伝い 町を歩いていたら、牛尾さんの姿を見かけた。ルチアーノに断りを入れると、彼の元へと歩み寄る。声をかけると、驚いた様子で振り向いた。
    「○○○と、ルチアーノか。声をかけてくるなんて珍しいな。どうしたんだ」
     牛尾さんは僕とルチアーノを交互に見た。確かに、僕がルチアーノを伴って牛尾さんに声をかけることはほとんどない。ルチアーノはシグナー陣営が嫌いだし、シグナーもルチアーノのことを良く思っていないからだ。
    「牛尾さんに、借りてるものがあったから。忘れる前に返そうと思ったんだ」
     そう言うと、僕は鞄の中を探った。中から、軍手と植物用の鋏の入った袋を取り出す。受け取ると、彼は合点が言ったという顔をした。
    「ああ、これか。別に、次の機会で良かったんだぜ」
    「早めに返しておこうと思ったんだよ。一度忘れたら、なかなか思い出せなくなるでしょ」
     言葉を交わす僕たちを、ルチアーノは斜め後ろから眺めていた。眉をぴくりと動かすと、間に割り込むように聞いてくる。
    「君たち、何の話をしているんだい? 密談なら僕も混ぜてくれよ」
     僕は、片手でルチアーノを制した。牛尾さんが困ったように苦笑いを浮かべる。密通を疑われていることは、一目瞭然だった。
    「そういうのじゃないよ。人手がほしいって頼まれて、お手伝いに行ってたんだ。道具を貸してもらったから、忘れないうちに返そうと思ったんだよ」
    「○○○が来てくれて助かったよ。なんせ、あっちは男手が足りないからな」
     僕の返事に、牛尾さんも言葉を足してくれた。ルチアーノは目を細めて僕たちの話を聞いている。納得しているかは分からないが、噛みつくつもりはないようだ。ホッと胸を撫で下ろす。
    「で、次はいつ来てくれるんだ? かわいこちゃんたちが待ってるぜ」
     安心したのも束の間、牛尾さんはとんでもないことを言い出した。ルチアーノの目が吊り上がる。僕は、慌てて牛尾さんに駆け寄った。
    「ちょっと、牛尾さん……!」
     口を挟もうとすると、耳元に口を寄せて囁く。
    「まあ、見てな。上手くいけば、あいつをマーサの家に連れていけるかもしれねぇ」
     その言葉で、僕にも牛尾さんの考えが分かった。彼は、ルチアーノをマーサの元に連れていこうとしているのだ。僕が連れていかれた時も、同じ手口を使っていた。
    「なんだよ。かわいこちゃんって。本当は疚しいことでもあるんじゃないか?」
     思った通りに、ルチアーノは疑いを向けてくる。口角を上げると、牛尾さんは誤魔化すように言った。
    「それは、俺の口からは言えねぇな。守秘義務ってもんがある」
    「ちょっと、牛尾さん」
     慌てたふりをして、僕も口を挟んだ。ルチアーノは眉根に皺を寄せている。不機嫌そうな表情を見て、牛尾さんは僕たちから距離を取った。
    「空いてる日があったら教えてくれよ。じゃ、俺はこれで」
     僕たちに背を向けると、通りの奥に去って行く。その後ろ姿を見送ると、ルチアーノは僕を見上げた。
    「君、何か隠しごとしてるだろ。全部白状してもらうからな」
     ルチアーノが僕に詰め寄る。何も疚しいことは無いのに、雰囲気で緊張してしまった。
    「別に、何もないよ。ただのお手伝いなんだから」
    「何の手伝いなんだよ。かわいこちゃんなんて言うくらいだから、女ばかりの場所なんだろ。そんなものにうつつを抜かして、デュエルに支障が出たら困るじゃないか」
     頬を膨らましながら、彼は不満を口にした。本心なのか建前なのかは分からないが、僕が女の子と会っていることが気に入らないらしい。彼には関係ないことにも思えるが、引っ掛かることがあるのだろう。
    「じゃあ、ルチアーノもついてくる? 」
     思い付いたように言うと、彼は不意を付かれたように顔を上げた。僕を真っ直ぐに見ると、目を真ん丸に見開く。
    「へ?」
    「気になるなら、一緒に行こうよ。噂の女の子たちにも会えるよ」
     さすがに違和感を感じたのか、ルチアーノは顔をしかめた。
    「いいのかよ。あんなに慌ててたから、隠したいことだったんじゃないのか」
    「いいよ。どうせバレるんだろうし、早めに明かしておかないと、後が怖いから」
     ここだけは、偽りの無い本心である。牛尾さんと交流があることも、マーサの家に通っていることも、長くは隠してはいられない。いつかは話さなければいけないと思った。
    「ふーん。随分物わかりがいいじゃないか。まあいいや、連れていけよ」
     少しだけ疑いを残しながらも、ルチアーノはそう言ってくれた。後は、日付を決めるだけだ。大会前日のようなわくわくを感じながら、僕は手帳を開いた。

     待ち合わせに選んだのは、治安維持局の近くだった。人で溢れる大通りのベンチに、ルチアーノと二人で腰をかける。しばらく待っていると、建物の方から牛尾さんがやって来た。
    「よお、○○○。いつもありがとな。……今日は、ルチアーノもいるのか」
     隣のルチアーノに目を留めると、初めて知ったと言う様子で言う。自然な演技だった。治安維持局職員というのは、嘘が必要なのだろうか。
    「今日は、かわいこちゃんとやらのところに行くんだってな。どんな場所か見せてもらうぜ」
     ルチアーノの言葉に、牛尾さんは苦笑いを浮かべる。ここまで執着されるなんて、彼にとっても予想外だったのだろう。
    「分かったよ。そんな怖い顔するなって」
     Dホイールに乗ると、繁華街からハイウェイに乗った。ダイダロスブリッジを抜けて、旧サテライトエリアへと走っていく。僕の後で、ルチアーノが周囲を見渡した。
    「サテライトかよ。いかにもって感じだな」
    「そんなんじゃないよ」
     僕は苦笑いしかできなかった。ルチアーノは盛大に勘違いをしているのだ。僕たちが向かうのは、怪しいお店なんかではないのだから。
     市街地を抜け、住宅街に入ると、僕たちはDホイールを停めた。目の前には、大きな家が立っている。牛尾さんが先頭に立って、家のドアをノックした。
     しばらくすると、家の中から足音が聞こえてきた。ドアが開いて、恰幅のいい女性が姿を現す。後ろからは、たくさんの子供たちが顔を覗かせた。
    「手伝いに来たぜ。今日は、庭の剪定の続きで良かったよな」
     牛尾さんが声をかけると、マーサはにこりと笑顔を浮かべた。僕たちを交互に見て、包み込むような声を発する。
    「また来てくれたんだね。待ってたよ」
    「こんにちは」
     答えながら、僕はルチアーノの背中を押した。よろよろとした足取りで、ルチアーノがマーサの前に歩み出る。その姿を視界に捉えると、気遣うように声をかけた。
    「おや、その子は?」
    「僕の友達なんだ。僕のお手伝いが気になるって言うから、連れてきたんだよ」
     答えると、僕は後ろにいる子供たちに視線を向けた。彼らは、少し離れたところから僕たちの様子を窺っていた。ルチアーノのことが気になるらしい。
    「そうかい。ここには年の近い子がいるから、たくさん遊んでいきな」
     家に上がると、ルチアーノが僕の服の裾を掴んだ。耳元に顔を近づけると、ひそひそ声で言う。
    「なんだよ、ここは」
    「僕のお手伝い先だよ。さっきの女の人は、サテライトに住む親のいない子供たちの面倒を見てるんだ。僕と牛尾さんは、たまにお手伝いに来てるんだよ」
    「かわいこちゃんって、あいつらのことなのか? 君たちは、僕を騙したのかよ」
     ルチアーノの問いに、僕は答えられなかった。駆け寄ってきた子供たちが、僕たちの間に入って来たのだ。あっという間に、僕たちは子供に囲まれてしまった。
    「ねぇ、君はどこに住んでるの?」
    「名前は? なんて呼べばいい?」
    「一緒に遊ぼうよ」
     口々に質問されて、ルチアーノは困ったように子供たちを見る。助け船を出すように、横から口を挟んだ。
    「この子は、ルチアーノだよ。デュエルが得意だから、一緒に遊んであげてね」
    「おい、ちょっと待てよ……!」
     ルチアーノが口を挟むが、僕は聞き入れなかった。ついてきたのはルチアーノなのだ。子供たちと遊ぶことは、彼にとってもいい洗礼になるだろう。
    「じゃあ、僕は牛尾さんのお手伝いをしてくるから、子供たちと遊んで待っててね」
     一方的に告げると、子供たちに背を向けて歩き出す。
    「おい、待てってば!」
     後ろからルチアーノの声が聞こえたが、僕は振り返らなかった。まずはお仕事だ。子供たちと遊ぶのは、その後でいい。

     僕の姿を見ると、牛尾さんは手招きをして呼び寄せた。広い庭は、まだ半分くらいが雑草に覆われている。植えられた植物も伸びていて、手入れが必要だった。
    「あいつの面倒は、見なくてもいいのか?」
     雑草を引っこ抜いていると、不意に牛尾さんが尋ねた。少しだけ顔を上げて、簡潔に返事を返す。
    「大丈夫だよ。ルチアーノは、一応は治安維持局所属の職員だし。予想外なことには慣れてるでしょ」
     言葉を選びながら、僕は返事をする。ルチアーノの本職は、治安維持局長官である。しかし、それは副長官と長官代理しか知らないトップシークレットだ。気軽に話していいことではなかった。
    「そうらしいな」
     そう言うと、牛尾さんは再び手を動かす。しばらく作業を進めると、雑賀さんが帰ってきた。三人で協力しながら、二時間ほどかけて庭を綺麗にする。
    「こんなもんでいいかな」
     そう言うと、雑賀さんは額の汗を拭った。道具を片付けながら家へと入ると、マーサがお茶とお菓子を用意していた。労働の後のおやつは、格別のご褒美だ。ありがたくいただくことにする。
    「いつもありがとうね。助かるよ」
    「礼を言われるようなことじゃねぇよ。これは、俺がやりたくてやってることだから」
     マーサの言葉に、牛尾さんは謙遜するように首を振った。彼は、いつもこんな感じなのだ。かつての自分に、罪の意識を感じているのだろう。
     お茶菓子を食べていると、別の部屋へと部屋からルチアーノが入ってきた。呑気にお茶をする僕たちを見て、不満そうに頬を膨らませる。
    「何してるんだよ。僕を放ったらかしにしてさ」
     そう言う彼は、隣に年下の女の子を連れていた。なつかれてしまったのだろう。彼は、中々にモテるのだ。
    「ごめんね。僕にも、いろいろやることがあったから」
    「あんなことを言って騙してくれてさ。後で覚えてろよ」
    「まさか、騙されるなんて思わなかったから。ごめんね」
     謝ると、彼は僕の手を握った。ぐいぐいと引っ張って、子供たちの輪へと連れていく。
    「ほら、○○○が来たぜ。デュエルをしてくれるってさ」
     ルチアーノが言うと、子供たちが嬉しそうに駆け寄ってくる。あっという間に、二対二のタッグデュエルをすることになった。
     かなり手加減をしながら、子供たちのデュエルの相手をしていく。次から次へと子供たちはやって来るから、へとへとになるまで相手をさせられた。
    「だらしないなぁ。こんなことでへばるなんて」
     肩で息をする僕を見て、ルチアーノはにやにやと笑う。完全に策に嵌められたようだ。ちょっと悔しいが、ここはお互い様だろう。
    「おい、そろそろ帰るぞ」
     隣の部屋から、牛尾さんの呼ぶ声が聞こえた。子供たちに別れの挨拶をして、マーサのいる部屋へと向かう。僕たちの姿を見ると、彼女はにこりと笑った。
    「今日は、ありがとうね。また、いつでもおいでよ」
    「うん。また、お手伝いに来るね」
    「ルチアーノくんも、いつでも来ていいからね」
     マーサの言葉に、ルチアーノは困ったように俯いた。人の愛情に触れるのが初めてなのだろう。戸惑っているのが伝わってくる。
    「また連れてくるから、その時はよろしくね」
     僕が代わりに答えると、ルチアーノは僅かに表情を崩した。勝手に決めるなよ、と、小さな声で呟いている。
     Dホイールに乗ると、僕たちはハイウェイに乗った。海の気配を感じる風を浴びながら、ダイダロスブリッジを駆け抜ける。
     ルチアーノは、子供と遊んだことがあるのだろうか。不慣れな態度を見る限り、きっと無いのだろう。今日の経験が、彼にとっていいものになってくれたらいいと、心の隅で思った。
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