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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。映画を見ていてセンシティブなシーンが出てきた時の反応の話。元ネタはタグですが肝心のタグを見失いました。

    ##TF主ルチ

    洋画ホラー 外からは、ザアザアと雨の音が聞こえていた。ごろんと寝返りを打つと、布団の中に潜り込む。窓はしっかりと閉まっているのに、雨音は耳を塞ぎたくなるほどに大きかった。まだ明け方の三時だというのに、自然界とは騒がしいものだ。
     布団の中で耳を塞ぐと、僕は大きく息を吐いた。雨の音が煩くて眠れないのだ。何度か寝返りを打つが、眠りは訪れない。それから一時間ほどの間、僕はベッドの上で転がっていた。
     こうなると、永遠に眠れないんじゃないかと思ってしまうが、そんなことは絶対にないのが人間というものだ。叩きつけるような雨音と格闘し、ごろごろと寝返りを打っているうちに、僕の意識は少しずつ眠りに誘われていった。雨音が小さくなり、思考がぼんやりとし始める。気がついた時には、僕の意識は眠りの中に落ちていた。

     気がつくと、目の前にルチアーノの姿があった。僕の上に馬乗りになって、何度も身体を叩いている。すっかり二度寝してしまったが、今日は用事がある日だっただろうか? そもそも、今は何時なのだろう。そんなことを考えているうちに、僕の頭は明瞭になっていく。慌てて身体を起こすと、頭と頭がぶつかりそうになった。
    「どうしたんだよ。急に起き上がって」
     ルチアーノが慌てて身体を引く。彼の条件反射のおかげで、僕たちはぶつからずに済んだ。キョロキョロと周囲を見渡してから、ルチアーノに問いかける。
    「今日って、何かあったっけ?」
     僕の顔を見て、ルチアーノは呆れ顔になった。小さく溜め息を付くと、手に負えないといった調子で口を開く。
    「何寝ぼけてんだよ。疲れてるから、今日は休ませてって言ったのはお前だろ? 自分の発言すら忘れたのか? それに、出掛けるにしても外は雨だぞ」
     彼に言われて、ようやく僕は外に視線を向けた。窓の外は薄暗くて、昼近くなのに灰色に澱んでいる。絵に描いたような悪天候だった。
    「そうだったね。じゃあ、今日は家で過ごそうか」
     そう言うと、僕はベッドの上から降りた。身支度を整えて、軽く朝食を取る。トーストを持ってキッチンを出ると、ルチアーノが机の上に何かを広げていた。
    「どうしたの、それ?」
     それは、映画のディスクだった。パッケージから察するに、中身はホラー映画なのだろう。おどろおどろしい殺人鬼の画像や、怯える人々の画像が、黒い背景に並べられている。ルチアーノは、ホラー映画以外の映画を見ないのだ。
    「これは、これから見る映画だよ。B級のマイナーなやつばかりだから、内容はどうか分からないけどな。もちろん、君も付き合ってくれるんだろう」
    「僕は、遠慮したいかな……」
     小さな声で言うが、ルチアーノは少しも聞き入れてくれなかった。最初から、僕に拒否権など無いのだ。
    「ダメだよ。君も見るんだ。これは、僕からの命令なんだから」
     そう言うと、彼は再生器機にディスクを押し込んでいく。注意書表示が流れてから、映画の本編が始まった。
     導入は、外国の学生らしき女の子の姿から始まった。女の子が夜の道を歩いていると、誰かにつけられているような気配がするのだ。彼女は何事もなく帰宅するが、翌日に大事件が起きてしまう。彼女の親友が、何者かによって殺されてしまったのだ。
     そこからは、よくあるホラー映画の展開だった。彼女の周辺の人物が、次々と殺されていくのだ。もう一人の親友が殺され、事件解決のために奔走した警察も殺され、ついにはボーイフレンドが危険な目に遭ってしまう。命からがら逃げ出したボーイフレンドは、女の子の家に逃げ込んだ。警察に電話をするが、混線しているのか繋がらない。不安に襲われた二人は、二人きりの部屋で強く抱き締めあった。
     その辺りで、僕は嫌な予感がした。外国の映画で男女が親密にするシーンがあったら、ほぼ確実にあれがくる。そう思っていると、画面の中の男女が行動を始めた。
     ボーイフレンドが、女の子の唇に唇を押し当てた。唇を少しだけ開いて、ねっとりとした口づけを交わしていく。しばらくすると、男が女を引き寄せた。唇を貪ったまま、男が女の身体に指を伸ばす。服をはだけさせると、その中に指を差し込んでいく。男の指が動き、女の肌を這い回る度に、女は艶かしい吐息を漏らした。
     僕は、小さく身じろぎをした。唐突に差し込まれた性描写に、身体が拒否反応を示したのだ。僕は、この手の描写が苦手なのである。今すぐにでも目を逸らして、部屋から出ていきたかった。
     隣では、ルチアーノが平然とテレビ画面を見つめている。退屈そうな顔で、身体を重ねる男女を眺めていた。彼の目的は殺害シーンだから、このシーンは助長に感じるのだろう。そんなことを考えていると、彼がこっちに視線を向けた。
    「何見てるんだよ。エロいシーンを見て、興奮でもしたのか?」
    「違うよ!」
     慌てて否定するが、声が上ずってしまった。ルチアーノが口角を上げる。じりじりと距離を詰めると、楽しそうな声で言った。
    「君も男の子だもんな。エロいものが好きなんだろ? ほら、もっと見なよ」
    「違うって! ルチアーノだって知ってるでしょ。僕は、ああいうのが苦手なの」
    「そんなこと言って、本当は見たいんだろ? ずっとそわそわしてたことくらい知ってるんだからな」
    「それは、そういうことじゃなくて……!」
     必死に否定するが、彼はにやにや笑いで僕を追い詰めていく。どうやら、格好のおもちゃだと思われてしまったらしい。こうなってしまったら、もうどうしようもなかった。
    「いいぜ、なら、あいつらと同じことをしてやるよ」
     そう言うと、ルチアーノは僕に唇を押し当てた。舌先で唇をこじ開けると、口内に侵入する。口の中を蹂躙しながら、指先で僕の身体をなぞる。恋人に愛撫され、僕の身体はじんわりと熱を持った。
     ルチアーノの指が、ズボンの中へと侵入した。下着越しに、僕の下半身に触れていく。しばらくその辺りを検分すると、唇を離してにやりと笑った。
    「なんだよ。興奮してるじゃないか」
    「それは、ルチアーノがえっちなことするからでしょ」
     僕が答えると、画面の中から大きな音が聞こえてきた。びっくりして、テレビ画面に視線を向ける。画面の中では、殺人鬼が二人の邸宅を襲いかかっていた。
    「続きが始まったな。ほら、映画を見るぞ」
     平然とした顔で、ルチアーノは画面に視線を戻す。体勢を戻しながらも、僕は心臓の鼓動を抑えていた。あんなことをされたのだ。居心地が悪くて、全然映画に集中できなかった。
    「なんだよ、そんなにそわそわして。今ので興奮したってのか?」
    「…………そうだよ」
     僕が答えると、ルチアーノはにやにやと笑った。僕の耳に口を近づけると、甘い囁き声で言う。
    「変態」
     完全にからかわれていた。もしかしたら、彼はそのつもりでこの映画を持ち込んだのだろうか。罠に嵌められたことに悔しさを感じて、僕は唇を噛んだ。
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