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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチで例のゲームのネタ。ルチはTF主くんの見てないところでスコアを塗り替えてそうだなって思ったので書きました。

    ##TF主ルチ

    スイカゲーム 世間では、スイカゲームというものが流行っているらしい。ランダムに現れる果物を同じ種類でくっつけて、さらに上の果物に進化させていくゲームだ。操作はシンプルだが攻略方法はなかなかに難解で、予想もしない方向に果物が転がってしまったりするらしい。なんとか最高得点を出そうと、人々は白熱したバトルを繰り広げていた。
     僕がそのゲームに触れたのは、友達に紹介されたことがきっかけだった。面白いからやってみなと言われて始めたら、すっかりはまってしまったのである。スイカを作ろうと試みても、果物は予想外の場所に転がり、間に邪魔物が挟まってしまう。何回か繰り返しても、作れるのはメロンだけだった。
     とは言っても、僕がスイカと格闘できるのは、ルチアーノが来ていないときか、お風呂に入っている間だけだった。僕がゲームをしていると知ったら、彼は絶対にスコアを馬鹿にする。下手くそだから仕方ないのだけど、あまり気分のいいことではないから、彼のいない隙を狙って遊んでいた。
     その日も、ルチアーノがお風呂に向かったことを確認してから、僕はゲーム機の電源を入れた。ソフトを起動すると、果物の並んだメニュー画面が表示される。スタートボタンを選択して、ゲームを開始した。
     次から次へと落ちてくる果物を、箱の中に放り込んでいく。ころころと転がる果物は、思い通りに動いてくれない。反対側に転がり落ちたり、思いもよらない方向に跳ねていく。なんとか制御しようと、唸り声を上げながら果物を積んだ。
     ゲームに熱中していると、部屋の近くで足音が聞こえた。慌てて中断ボタンを押して、本体を枕の下に隠す。少し遅かったようで、部屋に入ってきたルチアーノに見咎められてしまった。
    「今、何を隠したんだよ」
     眉を吊り上げながら、ルチアーノが僕に詰め寄る。枕から手を離すと、何もなかった振りをした。
    「どうしたの? 気のせいだよ」
    「全然隠せてねーぞ。目も泳いでるし、不自然だ」
     ルチアーノの鋭い声が、僕の耳に突き刺さる。仕方なく、下に隠したものを取り出した。ゲーム機の電源を入れて、画面を表示する。
    「なんだ。流行りのゲームじゃないか。君、そういうのに興味があったんだな」
    「興味くらいあるよ。流行ってるだけあって、けっこう楽しいし」
     答えると、ルチアーノは僕にゲーム機を押し付けた。真上から画面を見下ろすと、再開ボタンを押す。
    「ほら、やりかけなんだろ。続きをしろよ」
     果物が落下して、僕は慌ててボタンに指先を伸ばした。今回は、けっこういい感じにできているのだ。台無しになるのは嫌だった。
     必死にボタンを操作する僕を、ルチアーノは真上から観察する。時折「ふーん」や、「あーあ」などと声を漏らすから、やってるこっちは緊張してしまう。ついに手元が狂って、変な方向で進化してしまった。
    「「あっ」」
     僕だけでなく、ルチアーノまで声を漏らす。果物が進化した拍子に、箱の中から飛び出したのだ。画面に浮かぶgame overの文字を見ながら、僕は大きく溜め息をついた。
    「君、下手くそだな」
     ルチアーノが呆れたように言う。
    「ルチアーノが変なこと言うからでしょ。……ていうか、何しに戻ってきたの」
    「そうだった。忘れ物を取りに来たんだ」
     尋ねると、彼は思い出したように言った。ベッドの上から下りると、タンスの方へと向かっていく。何かを取り出すと、小走りに部屋から出ていく。
     ルチアーノが去ると、僕はリトライボタンを押した。まっさらになった画面の上に、果物が降ってくる。今度は失敗しないようにと、慎重に果物を積んでいった。
     今回も、途中で詰まってしまった。メロンの両隣にりんごが引っ掛かって、大きな果物が作れなかったのだ。果物はすぐに箱を溢れ、ゲームオーバーになってしまった。
    「上がったよ」
     三回目のゲームを進めていると、正面から声が聞こえてきた。寝間着に身を包んだルチアーノが、僕の方を見つめている。僕は、ゲームを閉じてベッドから下りた。
    「じゃあ、行ってくるね」
     そう告げてから、寝間着を持って部屋から出ていく。洗面所に向かいながら、僕はふと思った。
     ルチアーノはああいうゲームをやるのだろうか。いつも彼が持ち出すのは、対戦モードのあるものばかりだ。ソロプレイのパズルゲームをやっているところなど、これまでに見たこともなかった。
     ルチアーノなら、スイカくらい簡単に作れるだろう。スイカを作るだけではなく、スイカとスイカをくっつけて消すこともできるのかもしれない。彼が本気を出したら、僕のスコアなど一瞬で抜かされてしまう。
     身体を洗い、湯船の中に身体を沈める。結局、ルチアーノの忘れ物とはなんだったのだろう。彼のことだから、僕の隠し事を暴くための嘘だったのかもしれない。彼のことはよく分からないのだ。
     身体が温まると、湯船から上がって身体を拭いた。寝間着を着込み、髪をタオルで拭いながら、ゆっくりと自分の部屋を目指す。
     予想通り、ルチアーノは例のゲームをやっていた。ゲーム機を両手で握りしめると、忙しそうに指先を動かしている。僕の存在に気がつくと、こっちに視線を向けながら言った。
    「遅かったじゃないか」
    「別に、遅くはないよ。一時間は経ってるんだから」
    「そっか、もうそんな時間なのか。ゲームをしてるとあっという間だな」
     答えながら、彼は画面に視線を戻す。ポチポチとボタンを操作し始めた。ベッドに腰をかけ、首を伸ばして手元の画面を眺める。
     そこにはスイカが転がっていた。隣にあるのは、なんとパイナップルだ。僕には想像もできない絵面に、大きく目を見開いてしまう。唖然としていると、彼はにやりと笑って言った。
    「やっぱり、スイカくらいは簡単に作れるな。さすがに消すとなると難易度は上がるけど、何回かやればできそうだ。君は、こんなものに苦戦してたのかい?」
     僕は大きく息を吐いた。僕の頑張りの記録は、彼に一瞬で抜かされてしまったのだ。僕の六時間を、彼は暇潰し程度の時間で塗り替えてしまった。才能の差とはこういうことなのだろうか。
    「こんなものって、僕には難しかったんだよ。まだスイカもできてないし、スコアも2000点くらいでしょ」
    「君はゲームが下手だからな。果物の間に小さいのが挟まって、くっつかなくなったりしてるんだろ?」
     その通りだった。僕は、場所の調整というのが下手なのだ。的確すぎる言葉に、何も言い返せなかった。
     ルチアーノは、その後も綺麗に果物を積んでいった。あっという間に進化を積み重ねて、二個目のメロンを作っている。しかし、それ以上はできないみたいで、スイカとメロンでゲームオーバーになっていた。
    「僕だって、練習すればできるようになるよ。貸してみて」
     話を反らすように、ルチアーノの手からゲーム機を奪い取る。リトライを押すと、落ちてくる果物を箱の中に並べた。
     そこで、あることに気がついた。画面の隅にあるスコアランキングが、見慣れない数字になっていたのだ。全てが3000点を超えていて、明らかに僕のものではなかった。
    「えっ?」
     僕が言うと、ルチアーノはにやりと笑った。僕の画面を覗き込みながら、からかうような声色で言う。
    「そうそう、君のスコアランキング、全部書き換えておいたからな。頑張って追い付けよ」
     画面を見ながら、僕は呆然と口を閉ざした。これを超える頃には、彼はさらに上のスコアを出しているのだろう。僕の記録は、永遠に記録としては残らなくなったのだ。
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