ポニーテール 初夏のシティ繁華街は、今日も溶けそうなほどに暑かった。建物の影の間を縫うようにして、僕は中央の広場へと向かう。一応折り畳みの日傘を持ってきているのだが、それだけでは日光を防ぎきれなかったのだ。影に隠れるのは上半身だけで、長ズボンに覆われた僕の足には、容赦なく紫外線が襲いかかっていた。
広場の入り口を見つけると、僕は思いきって影から抜け出す。直射日光の降り注ぐ歩道を横切ると、駆け足で門の中へと足を踏み入れた。ベンチの並ぶエリアへと進んでいくと、傘を傾けて前方を窺う。目的の人物の姿がないと分かると、今度は反対側のベンチへと足を向けた。
「おい」
しばらくその辺りを歩いていると、背後から声が聞こえてくる。予想もしなかった方向にびっくりして、僕は小さく肩を震わせてしまった。傘をずらしながら振り返ると、見慣れたスニーカーが視界に入ってくる。子供に人気なブランドのロゴが縫い付けられたその靴は、僕がルチアーノにプレゼントしたものだった。
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