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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    くるっぷに上げてたテキストです。銃弾を素手ではねのけるルチの話。

    ##TF主ルチ

    銃弾 繁華街の片隅には、路地へと続く通りがある。この細道を曲がった先には、古ぼけたビルが並んでいた。大通りには大きなチェーン店が軒を連ねているが、小さな個人店などは通りを外れたビルに入っていることがあるのだ。人々の喧騒から離れると、足音を響かせながら奥の建物を目指す。
     目的地から少し離れたところで、不意にルチアーノが足を止めた。真剣な表情で前を見ると、振り返って僕を突き飛ばす。
    「伏せろ!」
     バランスを崩して、僕の身体は地面へと倒れ込んだ。上着がアスファルトに擦れて、ザリザリと音を立てる。なんとか両手を下に敷き、顔面からの着地だけは免れた。長袖を着ていなかったら、どうなっていたか分からない。
     顔を上げると、ルチアーノに視線を向けた。彼は少し離れたところで、建物の影を睨んでいる。こちらには一切視線を向けずに、威圧するような声で言った。
    「動くなよ」
     その言葉が、誰に向けられたものなのかは分からなかった。僕もルチアーノの協力者になって長いから、今の状況が何なのかは理解できる。僕の予想が正しければ、彼の視線の先には人の姿があるはずだった。
     動こうにも、身体はいうことを聞かなかった。僕の視線の先で、ルチアーノは静かに歩を進める。どこからか、微かに何かが弾ける音が聞こえる。それと同時にルチアーノが片手を上げると、金属がぶつかる甲高い音がした。
    「そんなもの、僕には通用しないよ」
     ルチアーノが低い声で言う。その声色から、彼が笑っていることが分かった。再び破裂音が聞こえて、ルチアーノが片手で振り払う。彼が銃弾を弾いているのだと気づいたのは、相手が弾丸を使いきった後だった。
    「それだけかい? じゃあ、そろそろ反撃させてもらおうかな」
     服を整えると、ルチアーノは淡々と言葉を紡ぐ。彼を付け狙う敵には、それが死の宣告のように聞こえただろう。彼は大きく跳躍すると、建物の前に着地した。尻尾のような髪を揺らしながら、薄暗い路地裏に吸い込まれていく。
     そこで起きていることは、あまり想像したくなかった。微かに響く人体が壊される音と、漏れ出るような低い悲鳴から、大体のことは分かってしまう。地面に座り込んだまま、耳を塞いでルチアーノが戻ってくるのを待った。
     しばらくすると、向こうから足音が聞こえてきた。固い音を響かせながら、彼は僕の真後ろに忍び寄る。顔を上げると、涼しげな表情で口を開いた。
    「全く、僕に敵わないことなんて分かりきってるのに、なんで付け狙ってくるのかね。…………って、何をしてるんだい」
     尋ねられて、ようやく僕は自分が耳を塞いだままだったことに気がついた。両手を離すと、ゆっくりと立ち上がって自分の身体を検分する。摩擦で痛みを感じてはいるが、皮膚が傷ついたりはしていなかった。上着に穴が空いているが、命に比べたら大したことない。
    「何もしてないよ。それよりも、ルチアーノは大丈夫?」
     僕の勘違いでなければ、彼は素手で弾丸を防いでいた。ものすごい音がしていたし、無事ではないだろう。少し心配だったのだ。
    「何のことだよ。これくらいの刺客なら、いつでも倒してるだろ」
     彼はけろっとした顔を見せる。自分がどれだけ恐ろしいことをしていたのか、全く理解できてないようだった。僕からしたら、子供が弾丸を腕で受け止めるのはショッキングな光景なのだ。
    「そうじゃなくて、銃の玉を手で跳ね返してたように見えたから。大丈夫かなって」
     直接伝えると、彼は楽しそうに笑い声を上げた。甲高い声でケラケラと笑うと、呆れ顔で僕を見る。
    「なんだ、そんなことか。僕は痛みを感じないからね。これくらい大したことないよ」
     全く気にしていないのか、ルチアーノはそのまま歩き出そうとする。腕をつかんで引き留めると、真剣さが伝わるように口を開いた。
    「ダメだよ。ちゃんと傷口を見せて」
     諦めたのか、彼は大人しく左腕を差し出した。服を捲り上げると、真っ白な肌が僕の前に晒される。雪のように白くて、もちもちとした美しい肌だ。その皮膚の一部に、いくつかの穴が空いていた。
     傷口は表面装甲を抉り取って、奥の金属まで達していた。反対側を見てみるが、貫通している様子はない。玉は、彼の体内に留まっているようだった。
    「ほら、傷ができてるじゃん。絆創膏を貼らないと」
     僕は鞄を開けると、絆創膏を取り出した。デュエルに怪我は付き物だから、ある程度は鞄の中に入れてあるのだ。大きめのものを選んで、穴の空いた部分を隠すように覆う。
    「別に、そんなもの要らないよ。僕には体液が無いんだから」
     僕の手元を見ながら、ルチアーノは不満そうに言う。子供扱いされて不満なのだろうが、今はそんなことを言っている場合ではなかった。
    「そういう問題じゃないんだよ。子供の腕に穴が空いてたら、見た人はびっくりするでしょ。もしかしたら、機械だってバレちゃうかもしれないよ」
    「僕がそんなへまをすると思うかい? これくらいの傷、いくらでも誤魔化せるよ」
     彼は一歩も譲らない。でも、僕が絆創膏を貼っているのは、それだけが理由なのではなかったのだ。一番の理由は、僕の心理的な負荷なのだ。
    「僕が気になるんだよ。この傷は、ルチアーノが僕を庇おうとして付けたものでしょ。それなのに剥き出しのままで放置してたら、僕は悪いことをしてる気分になるんだよ」
     そう言うと、彼は大きく溜め息をついた。呆れた顔で僕に視線を向けると、放り投げるような声色で呟く。
    「君って、本当にお人好しだよな」
     そういう彼の頬は、ほんのりと赤く染まっていた。気づかない振りをしながら、何ヵ所かある傷口を絆創膏で塞ぐ。服にも小さな穴が空いているが、僕にそこまでは直せない。布を下ろすと、左腕を解放した。
    「じゃあ、行こうか」
     手を取ると、何事もなかったかのように歩を進める。まだ恐怖は残っているとはいえ、僕にとっても敵襲は日常茶飯事になり始めているようだった。こんな生活に慣れてしまうなんて、僕のくらしもちあんが悪くなったものだ。少しの不安を感じながら、僕はビルの扉を潜った。
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