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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチのpkmnレポとおまけの話。ルチってぽにさまに似てない?って話をしてるだけです。おまけの話はルチに袢纏を着せる話。

    TF主ルチとpkmnDLCの話その1

     ゲームデータをセーブすると、僕はそっと電源を落とした。画面を見つめたまま、しばらくの間黙り込む。正直なところ、このシナリオをどう受け取っていいのかが分からなかったのだ。ストーリーやモチーフ自体はよくある話だし、まだ前編だからキャラクターの全容だって分かっていない。むしろ、ここまでが序章という感じすらするくらいなのだ。
     それでも、ひとつだけ言いたいことがあった。僕がこのストーリーに対して、唯一確信を持って言えることだ。せめてもの感想として、それだけは口にしておきたいと思った。
    「ルチアーノ」
     呼びかけると、彼はチラリとこちらを見上げた。意味深に口角を上げると、返事もせずに言葉を告げる。
    「君が考えてることを当ててやろうか」
     自信満々な態度だった。言葉はずしりと重くて、揺るぎない確信に満ちている。お見通しだとでも言いたげな様子だった。
    「分かるの?」
    「分かるさ。君は単純だからね」
     なんだか、馬鹿にされている気分だ。少しムッとするが、自覚はあるから強くは言い返せない。少し強い語調で言葉を続ける。
    「じゃあ、当ててみてよ。僕が言おうとしたこと」
     その言葉を聞いて、彼は待ってましたとばかりに口元を歪めた。身体をこちらに向けると、真っ直ぐに僕を見つめる。
    「いいぜ。今、君はこう言おうとしたんだろ。『オーガポンってルチアーノに似てるよね』って」
    「なんで分かったの!?」
     びっくりして、いつもより大きな声が出てしまった。鼓膜を破りそうなほどの音量に、ルチアーノがあからさまに顔をしかめた。
    「叫ぶなよ。うるさいなぁ」
    「だって、びっくりしたから。どうして分かったの?」
    「分かって当然だろ。オーガポンは、悪者扱いされてるけど本当は寂しがり屋な女の子だったんだろ。伝承ほど怖いものじゃないんだよ……とか、いかにも君の好きそうな設定じゃないか」
    「そうかなぁ」
     答えながらも、僕は本体に保存したスクリーンショットを見ていた。オーガポンに関する悲しい伝説は、全て写真を撮っている。悲しい話ではあるけれど、同時に幸せな話でもあると思った。
    「言いたかったことは合ってるけど、理由はそれだけじゃないよ。オーガポンは、人間の男と一緒に暮らしてたんだ。もしかしたら、夫婦だったかもしれないんだよ。僕たちに似てると思わない?」
    「僕は、君の妻になったつもりは無いよ。それに、君は自分が襲われた時に僕が身を挺して守ると思ってるのかい? 自惚れだとは思わないのかよ」
     からかうような笑顔を浮かべながら、ルチアーノはきひひと笑う。誤魔化すような言葉を選んではいるが、気にしているのがバレバレだった。
    「でも、そうでしょう? 僕が何者かに襲われて、家がもぬけの殻になってたら、ルチアーノは助けに来てくれる。僕は、そう信じてるから」
    「そうだな。君が拐われて、命を奪われるようなことがあったら、僕は相手を消し炭にしちゃうかもしれないな。僕の大事な取引相手に手を出すなんて、とんでもない身の程しらずだぜ」
     しれっと怖いことを言う姿に、背筋が凍る思いがする。子供のような見た目をしているが、彼は秘密結社の産み出した戦闘アンドロイドなのだ。本気を出せば、軍隊だって簡単に滅ぼせるくらいの力を持っている。そんなところも、オーガポンに似ているような気がしなくもない。
    「ほらね。そっくりでしょ」
     笑いかけると、彼は笑みを引っ込めた。眉を少しだけ上げてから、奇妙なものを見るような目で僕を見る。
    「そうか? 僕はそうは思わないけどな」
     あくまでも否定するつもりらしい。彼がその気なら、僕はこれ以上返事を追求しない。それで彼に肯定させても、なんの意味も無いからだ。
     彼は、自分から僕の思っていたことを言い当てた。それは時間の積み重ねによる予測によるものなのだろうけど、僕はそれだけじゃないと思っている。彼自身が、オーガポンに対して親近感を感じたのではないだろうか。自分でも境遇が似てると思ったから、僕の予測を当てたのだ。
     なんてことを考えて、やっぱりあり得ないと思い直す。自身を上位存在として定義する彼が、ポケモンに自分を重ねるだろうか。僕の推測は、あまりにも考え方が人間すぎる。
    「何笑ってるんだよ」
     隣からルチアーノの声が飛んできて、僕の思考は現実に引き戻された。視線を向けると、細められた瞳が向けられている。いかにも変なものを見る目だった。
    「笑ってた?」
    「笑ってたよ。変なやつ」
     そう語るルチアーノは、妙に人間じみて見えた。何だかんだ言って、彼も人間に近づいているのだ。かつてのオーガポンもこのような感じだったのかと思って、僕は再び口角を上げた。





    その2

    「ルチアーノに、渡したいものがあるんだ」
     そう言うと、僕はビニール袋を取り出した。プチプラブランドのロゴが入った、よくある服屋の買い物袋である。サイズはそれなりに大きくて、中身の生地によって丸く膨れていた。
    「また変なものを買ってきたのか? 今度は何だよ」
     チラリと視線を向けてから、ルチアーノは呆れ気味に答える。僕がプレゼントを買って来るのは、今日だけのことではなかったのだ。程度は違えど、毎日のように贈り物をしているから、彼にとっては日常茶飯事になっていることだろう。
    「別に、変なものじゃないよ。確かに見た目は変わってるかもしれないけど、便利でいいものなんだから。とにかく、開けてみて」
     袋を押し付けると、ルチアーノは素直に受け取った。乱雑な仕草で袋を開けると、中の布地を引っ張り出す。両手で広げたそれは、青色の袢纏だった。
    「なんだよ、これ」
     怪訝そうな声が、机の向こう側から飛んでくる。彼は、袢纏と言うものを知らなかったらしい。新しい反応に、新鮮な気持ちになる。
    「これは、袢纏っていう防寒具だよ。着物みたいな形をしてるけど、綿が入ってて温かいんだ。ルチアーノはいつも寒そうにしてるから、部屋着にどうかなって思って」
     両側の袖を開くと、腕を通すように促した。困ったような、面倒臭そうな顔をしながらも、素直に腕を通してくれる。前で紐を縛ると、ルチアーノの身体はもこもこの綿に覆われた。
    「なんか、動きづらい服だな。こんなのを着てたら、デュエルなんかできないだろ」
     両腕を真っ直ぐに伸ばしながら、彼はその場でくるりと回転する。小柄なルチアーノが着ているから、袢纏の裾は膝近くまで届いていた。確かに、動きやすいとは言えない姿だった。
    「言わなくても分かると思うけど、それは部屋着だから、外に行くときはコートに着替えてね」
    「着替えるに決まってるだろ。こんなんで外に出たら、人間たちの笑い者になっちまうぜ」
     ぶつぶつと呟いてから、ルチアーノは椅子に腰を下ろした。綿の詰まった衣服を着てるから、身体が真ん丸でかわいらしい。姿を眺めていると、冷めた声が聞こえてきた。
    「何見てるんだよ。こんなもの見たところで、面白くも何ともないだろ」
    「そんなことないよ。かわいいし、よく似合ってる」
    「そうか? 僕がこんなもの着たところで、まぬけなだけだと思うけどな」
    「そんなことないって。似合ってるよ。井戸のお面みたいで」
     答えると、彼は黙って身を乗り出した。僕の真ん前に顔を近づけると、冷たい声で言う。
    「君には、きつめのお仕置きが必要みたいだな」
     本気で怒っている声だった。凍り付くような冷気に、心臓が止まりそうになる。背筋がぞくりと震えた。
    「ごめんって。冗談だよ」
     慌てて返すが、それ以上の返事は返ってこなかった。綿で真ん丸になった身体を背けると、足の爪先でトントンと机を鳴らす。無言であることが何よりも恐ろしかった。
    「ごめん。僕が悪かったって。機嫌を直してよ」
     懇願する声は、彼の耳には届かなかった。ただのいたずらで言った一言が、こんなに怒りを買ってしまうなんて。自分の軽率な行動に、心の底から後悔した。
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