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    流菜🍇🐥

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    本編軸。ルチアーノが闇カジノのイカサマを暴く話。カジノの知識が無いまま書いたので設定がおかしいかもしれません。

    ##本編軸

    イカサマ ルチアーノは退屈していた。
     ホセは玉座に座ってシグナーの様子を見ているだけで、何も指示を出してはくれない。プラシドはそんなホセに痺れを切らして、勝手な行動を始めてしまった。ルチアーノも単独行動を取ればいいのだが、ホセからプラシドへの態度を見ていると、とても実行する気にはなれない。下らない我を通したことで、神に使えない部下だと思われるくらいなら、退屈をしていた方がましだ。そうは思うものの、やはり退屈は堪えるもので、任務のついでに町を彷徨うことがあった。
     その話を聞いたのも、そうした任務の帰り道だった。視察の後、思い立って立ち寄った旧サテライトエリアで、興味深い会話をしている男たちを見たのだ。彼らは、旧サテライトエリア奥地を拠点とする不良グループであるらしい。人通りも無いような路地裏に、人の気配があると思って近づいたら、いかにもな風貌の若者三人が屯していたのだ。
    「なあ、闇カジノって知ってるか?」
     男の一人が、仲間たちに対してそう言った。人目を憚る話題なのだろう、相手の様子を窺うような声色だった。
    「闇カジノ? なんだ、それ?」
     別の男の声が、静まり返った路地裏に響き渡る。空気を読まない大音声に、男が慌てた様子で口を塞いだ。
    「おい、声がでかいって」
     ルチアーノは、静かに彼らの側に忍び寄った。聞き耳を立てながら、会話の行方を窺う。口を閉ざされた男は、しばらくもごもごしてから解放された。
    「で、なんだよ。闇カジノって」
    「旧サテライトエリアの奥に、非合法のカジノがあるんだってさ。そこでは、毎晩のように賭けが行われてて、金に困ったサテライト住人が集まってるって噂だ。カジノで大金を手にいれて、会社を起こしたやつもいるって聞いてるぜ」
    「カジノで、大金か…………」
     男の言葉を聞いて、さっきまで口を塞がれていた男が声を発する。どうやら、興味を持ったようだった。身なりから察するに、彼らは金に困っている様子だ。上手い儲け話に食い付くのは当然だった。
    「どうだ? お前たちも、大金が欲しいんじゃないのか。一発逆転のチャンスだぜ」
     煽るような声色で、男は仲間たちに言葉を告げる。その自信ありげな態度を見て、無言を貫いていた男が口を開いた。
    「そんなもの、ただの噂話だろう。賭けに出て金を失うより、堅実に稼いだ方がいいんじゃないか?」
     この男は、それなりに冷静であるらしい。仲間を諭すような言葉に、ルチアーノは僅かに感心する。しかし、刺激に飢えた男たちには、その言葉は伝わらなかった。
    「なんだよ。お前、怖いのか? じゃあ、俺たちだけで行ってくるよ」
    「いや、そういうわけでは……」
     あっという間に、話はカジノへの突入でまとまった。三人の男が、路地裏から表に出てくる。その機会を見計らって、ルチアーノは彼らの前に躍り出た。
    「その、闇カジノってやつ、僕にも教えてくれないかな?」
     男たちの視線が、真っ直ぐにルチアーノへと注がれる。彼も、臆せずにその瞳を見つめ返した。イリアステルの力によって、今の彼は彼らと変わらない歳の若者に見えているだろう。一切疑われることはなかった。
    「誰が、お前なんかに教えるかよ」
     案の定、簡単には教えてくれないようだ。立ち去ろうとする男たちに、後ろから声をかける。
    「もちろん、ただでとは言わないよ。カジノで勝ったら、取り分の半分をお前たちにやる。これでどうだ」
     そう言うと、リーダー格のは足を止めた。くるりと後ろを振り返り、尊大な態度で言う。
    「六割なら、聞いてやってもいいぜ」
     こいつは、なんて欲張りなんだろう。内心で呆れながらも、ルチアーノは淡々と言葉を返した。
    「いいぜ、六割をお前にやる。僕を案内しろ」

     男たちが向かったのは、旧サテライトエリアの末端地区だった。かつてのサテライトにおいて、もっとも治安が悪いと言われていた地区である。住人のいなくなった町には、廃材や古くなったコンテナが並べられ、廃墟の様相を呈している。そんな薄暗い通りに、光の漏れている一角があった。
    「ここだ」
     くるりとと後ろを振り返ると、彼は勿体ぶるような声色でそう言った。妙に演技じみた態度に、ルチアーノは僅かに眉をしかめる。すぐに表情を戻して、男の後に続いた。
     そこにあったは、廃コンテナを改装した建物だった。コンテナハウスを再利用したり、コンテナをいくつか並べて、カジノの拠点として利用しているようである。重そうなドアの上には、賭けの種類を示した小さな看板が並んでいた。
     男は、そのうちのひとつに近づいた。軋んだ音を立てながらドアを開け、室内へと足を踏み入れる。外観とは裏腹に、コンテナの中は照明がギラギラと照りつけていた。いくつか並べられた机では、先客が賭けに興じている。
    「いらっしゃっい」
     不意に、近くから声が聞こえた。いつの間にか忍び寄っていたスーツの男が、入ってきたグループを見つめている。貼り付けられたような笑みからは、嫌な気配が感じられた。
    「闇カジノっていうのは、ここか?」
     気配に気づいていないのか、リーダー格の男は堂々とした態度で尋ねる。相手は笑みを保ったまま、冷静な口調でこう言った。
    「ええ。世間では、そう呼ばれているようですね。なんの変哲もない、ただのカジノですよ」
    「俺たちを、席に案内しろ」
     少し緊張した面持ちで、もう一人の男が言う。黒づくめの男は、相変わらず何も話さなかった。
     スーツの男に導かれ、彼らは一番隅の席に座った。変わった形の机は、ゲームのボードになっているようだ。形式的に、バカラをアレンジしたものだろうと、ルチアーノは思考を巡らせる。
    「では、ルールを説明します」
     男が語ったルールは、このようなものだった。ゲームの進め方は、バカラとほとんど変わらない。トランプのカード二枚を引いて数字を足し、一の位が九に近い方が勝ちというシンプルなルールである。このカジノでは、プレイヤー同士の対戦かディーラーへの挑戦方式を取っているらしい。進行やカードの扱いは全て機械で行われ、ディーラーに操作することはできないと語られた。
     男たちは、意気揚々とゲームに挑んだ。一番手を名乗り出たのは、噂を持ち込んだリーダー格の男である。席に着くと、真剣な表情で相手を見つめた。
     ディーラーの説明通り、ゲームの進行は機械的に行われた。自動的にカードが配られ、一定の数字の場合は追加のカードを引く。機械が吐き出したカードを、男は祈るような手つきで台に置いた。彼の祈りが届くことはなく、勝ったのはディーラーの方だった。男の賭けた金は、ディーラーの懐へと入っていく。
     次に挑んだのは、尖った髪型の男だった。同じように金を賭け、ディーラーへと挑んでいく。この勝負も、ディーラーの勝利で終わった。
    「全然勝てないじゃないか。まさか、装置に仕掛けがあるとかじゃねーよな?」
     リーダー格の男が、鋭い目付きでディーラーへと詰め寄る。威圧感のある態度だったが、彼は少しも動じなかった。
    「まさか。偶然ですよ」
     次に挑んだのは、無口な男だった。彼はカジノに乗り気では無いようで、他の男よりも少ない金を掛けていた。必要最低限の言葉だけで、淡々と勝負を進めていく。今度は、男が勝利を収めた。
    「これで、疑いは晴れましたね」
     ディーラーが堂々とした態度で語る。そう言われたら、男も言葉を引っ込めるしかない。納得いかないといった顔で、彼は一歩後ろに下がった。
    「次はお前だぞ」
     男に促され、今度はルチアーノが台に着く。ディーラーと向かい合うと、すぐに勝負が始まった。
     機械に吐き出された二枚のカードが、ルチアーノとディーラーの前に並ぶ。カードの数字を確認すると、機械は追加のカードを吐き出した。その動きに違和感を感じて、ルチアーノは眉をしかめる。勝負は淡々と進んでいって、ディーラーの勝利に終わった。
     やはり、このゲームは何かがおかしい。勝負を経て、ルチアーノはそう確信した。所詮は闇カジノなのだ。真っ当な賭けなどしていないのだろう。
     男たちは、何の疑いもなく賭けに興じている。何度か勝ってはいるようだが、やはり損失の方が多いようだ。明らかに分が悪かった。
     ルチアーノは、冷めた瞳で彼らの様子を眺めていた。手元を観察しながら、違和感の正体を探る。カードが配られ、数字を確認し、さらにカードを引く。機械の動きを見ているうちに、直感は確信へと変わった。
    「次は、僕にやらせてくれないかい?」
     そう言うと、ルチアーノは率先して前に出た。男たちも戦意を失い始めているようで、誰も異を唱えたりはしなかった。見栄っ張りな彼らのことだ。引くに退けないのだろう。
     台へと上がると、正面からディーラーと向かい合う。このカジノの仕組みは理解した。後は、彼らの不正を暴くだけである。にやりと笑みを浮かべると、彼は賭け金をセットした。
    「始めようか」
     ルチアーノの言葉に応えるように、機械が二枚のカードを配る。並べられた数字は、九に近づいてはいなかった。数字を自動判断した機械が、追加のカードを吐き出す。そのタイミングを見計らって、ルチアーノは僅かな電波を発した。
     カードを手に取ると、ルチアーノはにやりと笑う。それは、彼の勝利を決定付ける数字だった。
     ディーラーの顔から、一気に血の気が引いていく。ルチアーノを見る目付きが、恐怖に怯えていた。それもそのはずだ。ルチアーノが賭けたのは最大レートの大金なのだから。
    「どうしたんだい? 僕が勝ったんだから、とっとと金を寄越せよ」
     にやにやと笑いながら、ルチアーノはディーラーに話しかける。彼の手は、僅かに震えていた。
    「な…………なぜだ…………」
     その姿を見て、男たちも異変に気づいたようだった。ひそひそと話をしながら、ディーラーの姿を眺めている。彼らの方を振り返ると、ルチアーノは堂々とした態度で言った。
    「君たちも気づいていただろ。このカジノは、明らかに勝ちが少ないことに。それは、君たちの技術の問題じゃないんだぜ。始めから、勝てないように設定されていたのさ」
     彼の言葉を聞いて、男たちも顔色を変える。ここまでされて気づいていなかったとは、人間とはなんと鈍いのだろう。呆れながらも、彼は演説を続けた。
    「このカジノは、全てが機械で制御されてると言われただろ。君たちは機械なら安全だと思ったんだろうけど、実は反対なんだ。機械なら、排出されるカードの数字を自由に操作することができるんだよ」
    「なんだと!?」
    「仕組まれていたのか!?」
     男たちの声は、ルチアーノには間抜けなものに聞こえた。騙されていることも知らずに、呑気に賭けに興じていたなんて、呆れるほどに阿呆だ。そんなやつらが多いから、この手のカジノは無くならないのだろう。
    「つまり、どういうことだ? どうやって、お前はゲームに勝ったんだ?」
     男の一人が、真剣な形相でルチアーノに詰め寄る。
    「簡単なことだよ。その機械を、遠隔操作させてもらったんだ。ディーラーに機械の操作ができるなら、僕たちにもできるはずだろう?」
     ルチアーノの気迫に押されたのか、男たちは言葉を引っ込めた。彼らの視線が、真っ直ぐにディーラーの元へと注がれる。その青ざめた顔を見つめると、ルチアーノは威圧するように告げた。
    「ほら、賭けの報酬を寄越せよ。今なら、セキュリティへの通報は許してやるぜ。僕だって鬼じゃないからな」
     ディーラーは、渋々金を差し出した。金額を確認してから、六割を男たちに差し出す。彼らは、驚いたようにルチアーノを見つめた。
    「いいのか……?」
    「そういう約束だっただろ。それに、面白いものを見せてもらったしな」
     にやにやと笑いながら、ルチアーノは室内を眺めた。いつの間にか、場内の視線を集めていたのだ。他の台に座っていた男たちも、不正を疑ってゲームを放棄しているらしい。この調子では、運営の続行など不可能だろう。
    「注目されてるな。面倒事に巻き込まれる前に、とっとと逃げるぞ。君たちも、これに懲りたら闇カジノなんてやめるんだな」
     男たちを引き連れながら、ルチアーノはコンテナから出ていく。こんなに楽しいと思ったのはいつぶりだろうかと、彼は頭の隅で考えるのだった。
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