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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    TF主ルチ。寒い日の朝はルチにいたずらされながら起こされたい、という願望の詰まったテキストです。

    ##季節もの
    ##TF主ルチ

    雪の朝 目が覚めると、妙に身体が冷えていた。布団は首まで被っているのに、身体との間にできた隙間から、冷たい風が入り込んで来るのだ。手足が冷たくて、身体を丸めて布団の中に潜り込む。外に出ていた顔も、亀のように中へと引っ込めた。
     そこまでしたら、ようやく寒さはましになった。柔らかな温もりを発する布団の中で、微睡みに身を委ねながら目を閉じる。布団の中でさえこの寒さなのだから、外は凍え死にそうなほどに冷えているだろう。生活費の節約のために、僕の部屋では暖房をつけていないのだ。真冬の朝などは、特に室内が冷えていた。
    「おい、起きろよ」
     布団の外から、甲高い声が聞こえてきた。タッグパートナーのルチアーノが、僕のことを起こしに来たのだ。予定があってもなくても、彼は日課のように僕の元へとやって来る。僕にいたずらをできることが、彼には何よりも楽しいのだろう。
    「おい、聞こえてるのか? 起きろって」
     ルチアーノの手のひららしきものが、僕の身体をポンポンと叩く。かなり力を入れて叩かれているみたいだけど、布団を隔てているからか、そこまでの衝撃はなかった。
    「もうちょっと寝かせて……」
     小さな声で答えてから、僕は布団の中で身動きを取る。外は凍えるように寒いし、今日は用事も入っていない。ゆっくりと眠りたかったのだ。
    「返事くらいしろよ。おい」
     僕の言葉は、彼の耳には届かなかったようだった。僕の身体に手をかけると、ゆさゆさと前後に揺らされる。横になっているから、脳がぐわんぐわんと揺れた。
    「もうちょっと寝かせてよ……」
     今度は、もっとハッキリとした声で言った。ようやく伝わったようで、身体の揺れが止まる。安心したのも束の間で、今度は上にのし掛かられた。
    「どうしても起きないつもりなのか。それなら、こうだぞ」
     きひひ笑いをこぼしながら、ルチアーノが耳元で言う。もこもことした布団を隔てても、その声は妙にハッキリと響いた。彼の体温に蓋をされて、布団の中はさっきよりも温かくなる。それなりに重さは感じるけれど、外に出るよりはましだった。
    「ルチアーノはあったかいね。ずっと乗っててくれてもいいよ」
     うとうとしながら言うと、ルチアーノは不満そうに鼻を鳴らす。一度身体を起こすと、今度は布団に手をかけた。
    「それなら、こうだ!」
     大きな声と共に、かけられていた布団が捲られた。冷たい空気が身体を突き刺して、慌てて布団に手を伸ばす。強引に端を引っ張ると、奪い返したスペースに身体を潜り込ませる。
    「寒いよ! 何するの!」
    「何って、起こしてやってるんだろ。リビングの方が温かいんだから、とっとと起きてこいよ」
     ケラケラと笑い声を上げながら、僕の手を掴む。どうやら、すっかりおもちゃにされているようである。僕のささやかな楽しみをなんだと思っているのだろう。
    「もうちょっと温まっててもいいでしょ。朝寝坊は冬の醍醐味なんだよ」
    「何が『冬の醍醐味』だよ。ただの自堕落だろ」
     呆れたように呟きながら、ルチアーノは僕の身体を拘束する。ここまでされたら、もう二度寝どころじゃない。寝惚けた目を開けながら、身体を起こそうとした。
     その時だった。
     僕の首筋に、ひやりとしたものが触れた。神経まで響くような冷たさに、一瞬で眠気が覚めていく。目を白黒させながら振り返ると、ルチアーノがにやにや笑いを浮かべていた。
    「やっと起きたみたいだな。寝坊助さん」
    「…………今の、何?」
     突然のことに、そんな言葉しか出てこなかった。首筋には冷えが残っていて、じんじんと違和感を伝えている。かなりびっくりしたせいで、心臓は早鐘のように鳴っていた。一瞬のことだったから、何が起きたのかも分からない。
    「君は挨拶もできないのか? 上司に対してそんな態度なんて、身の程を弁えてないようだな」
     呆れたように笑いながら、ルチアーノはそんな言葉を吐く。尊大な態度に、ついこんな言葉を返してしまった。
    「いい上司は、部下をおもちゃにしたりしないと思うけど」
    「僕はいいんだよ。偉いからな」
     お互いに軽口を叩いたら、少し気持ちが落ち着いてきた。大きく深呼吸をすると、布団から這い出す。ルチアーノはベッドの上から降りると、部屋の窓を覆うレースのカーテンを開けた。
    「ほら、外を見てみろよ」
     窓の外には、ちらちらと雪が降っていた。地面に落ちたら溶けてしまうほどの、軽くて小さな雪の結晶が、空から無数に降り注いでいる。その光景は、いかにも冬といった感じだった。
    「雪が降ってるんだ。どうりで寒いはずだよ」
     答えると、ルチアーノは不満そうな顔をした。僕の方を見つめると、子供らしく唇を尖らせる。
    「それだけかよ。君は雪が好きなんだろ。もっと喜んだらどうだい?」
    「え?」
     いつの間にか、変な勘違いをされていた。僕は、そんなことを言っただろうか。首を傾げていると、彼は呆れたように言葉を続ける。
    「去年雪が降ったとき、君ははしゃぎ回ってただろ。雪合戦をするとか言って、僕を連れ出したじゃないか」
    「ああ、あれね」
     そこまで聞いて、ようやく勘違いの原因に気がついた。少しだけ苦笑すると、上着を着ながら答える。
    「それは、積もった雪だからだよ。雪は積もれば遊べるけど、少し降ってるだけだとあんまり意味が無いんだ。寒いし濡れるし地面は凍るし、まあ、大変なんだよ」
     積もった雪も降ってる雪も、雪は雪である。彼の中での認識は、どちらも同じだったのだろう。らしいと言えばらしい反応だった。
    「なんだよ。起こして損したぜ」
     退屈そうに息をつくと、彼はベッドの上に腰かける。マットレスが跳ねて、スプリングがぎしりと音を立てた。
    「今日は、家の中で過ごそうか。暖房のついた部屋で過ごすのも、冬の醍醐味だからね」
     答えてから、僕は部屋から出る。雪が降るほど寒い日は、何もかもが冷えきっていて冷たい。温まりにくい水道のことを思うと、少しだけ憂鬱だった。
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